タイトル
「Gの輪郭」 − The silhouette of G −
ホセ 「報告いたします」
影 「簡潔に、手短にな」
ホセ 「は。まずはスクリーンをご覧下さい」
影 「例のGシリーズかね」
ホセ 「A-GX 204C クロスボウ。遠距離攻撃型のGです。索敵機能に優れ、敵に察知されない位置からの攻撃が可能。主砲の破壊力は並の戦艦以上」
ホセ 「また、中距離では実弾兵器にJACを実装する事により、M粒子下での追尾兵器を使用可能とします」
影 「随分と金を食うミサイルだ」
ホセ 「ただ、マスコミに対するアピールとして姿を見せなければならないため、駆逐艦並の機動力も持たせました」
影 「欠点は」
ホセ 「近距離の格闘戦における設計の脆さ・・・。そして、何と言っても稼働時間です」
影 「実戦での戦績は? 使用に耐えうるのかね」
ホセ 「お手元の資料を。・・・まぁ、相手が相手ですから、燃料を使い切る程ではありません。現在の所、問題はないでしょう。・・・次に行きます」
ホセ 「A-GX 206B ビハインド。隠密・潜入行動を主体としたGです。最軽量の小型ですから、単純な戦闘力ではその他のGシリーズには一歩劣ると言わざるを得ませんが・・・」
影 「ヴィジョネイト装甲」
ホセ 「このヴィジョネイト装甲と立体ホログラムを使用する事により、姿を消し、ダミーを作り出します。有視界における攪乱としては、マシンの性能そのものを凌駕する機能だと言えます」
影 「稼働時間は」
ホセ 「フル稼働した場合、ロスが最も少ない状況下で25分。戦闘時間としては、まず充分だと言えます。・・・加えて、この機体は姿を隠せる事から、テロ行為に適している他、敵味方の判別や正体を隠したまま、どちらの勢力の味方も出来る点が挙げておきます」
影 「次は」
ホセ 「A-GX 209S スレッジ。この機体は完全な強襲型です。まあ、マシンそのものが動き続ける爆弾のようなものだと思っていただければ結構です。事実上、兵器としての威力は第一期シリーズGの中では最強です」
影 「問題点は」
ホセ 「いささか巨体にはなりましたが、稼働時間、エネルギー料の点はクリアです」
影 「すると、スピードかね」
ホセ 「スピードの点も半分はクリアしています」
影 「半分?」
ホセ 「ええ。強襲型ですから、迅速な目的地到達のためにスピードを必要とします。瞬発力という点での直線速度は問題ありません」
影 「まさに弾丸だな」
ホセ 「細かい指示やコース変更、移動しながらの戦闘という点でのスピードは第二期シリーズへの課題となりました」
ホセ 「念のため、海賊に奪われたG三体の解説を」
影 「この損害は痛いぞ。わかっているな」
ホセ 「は。必ず奪取し返します」
ホセ 「AF-GMX 179V ヴォーテックス。これは援護機で、直接のGシリーズではなく、副産物です」
影 「副産物に使う金額じゃないな」
ホセ 「は。本来はフォートレスとしてのサポートと、ブースとしての移動支援を主目的として作られました。ご覧の通りの巨体です。破壊力、装甲、スピード、稼働時間、ともに申し分ありません。近距離格闘ではマシンへの変形で対応」
影 「それを敵に奪われた、と」
ホセ 「問題ありません。欠点はあります。あらゆる点に特化しない支援型と言う事は、各々のGには能力で遙かに劣ります」
影 「奪われたのはそれだけではない!」
ホセ 「A-GX0 199K サイファー。汎用対応型Gです。後に説明するソードケインのプロトタイプです」
影 「Gシリーズの目的そのものだな」
ホセ 「その通りです。Gは、結論として、半ば伝説化しつつある『たった一機のマシンで戦局を変える』という目的の基に制作されました。サイファーは、そのシンボルとも言える機体です。遠距離・中距離・近距離格闘・潜入・強襲、その全てに対応するべく、あらゆる能力が詰め込まれました」
影 「結果として、それは失敗した」
ホセ 「失敗とは言いませんが、オールマイティーと言う事は、同時に、どの能力にも特化できなかったという事です。ヴォーテックスがそうであったように」
影 「その結果が第一期Gシリーズとして、各戦闘に適した機体と・・・」
ホセ 「ソードケインを生み出す事となりました。A-GX 199SK ソードケインは、基本能力をサイファーから受け継ぎ、局地戦で特化するための別装備を搭載する事により対応。実戦投入時点では、装備変更に時間が掛かるという欠点がありましたが、これにJACを応用したアタッチメントを付ける事により、問題点もクリア」
ホセ 「また、ソードケインは実験的にピアシング・レーザーを搭載したビーム・ライフルを実装しています。ビームシールドを中和して攻撃を掛けられる武器ですが、欠点はビームとレーザーのスピードが合わないため、接触する瞬間のタイミングを読むという特殊な技能が、パイロットに要求されます」
影 「厄介な3体を奪われた事になるな」
ホセ 「そうでもありません。奪われたのは脱走時に着装していた宇宙用のものだけですから」
影 「君のポジティヴ・シンキングには感心するよ」
ホセ 「恐れ入ります」
影 「皮肉だよ」
ホセ 「存じております」
影 「ふン、いいだろう。第二期Gシリーズが本題だ」
ホセ 「は・・・。A-GX204AA アーバレスト。これはクロスボウの後継機です。基本的な開発コンセプトは変わりません。大きく違う点は、ナノ反応物質を応用したビーム兵器と、エネルギー調節機能です」
影 「説明を」
ホセ 「はい。・・・前者のビーム兵器ですが、精神感応粒子をメガ粒子に混入させる事により、放ったビーム兵器の軌道を、わずかながら変える事が出来ます」
影 「偏向領域のようなものかね」
ホセ 「概ね、そうだと思っていただいて問題ありません。瞬間的なものですから、あれほど大きくは曲げられませんが」
影 「エネルギー調節機能については」
ホセ 「クロスボウ最大の欠点は稼働時間です。この中で問題となるのは、弾幕を張る、燻り出すなどの直接攻撃ではない攻撃に浪費されるエネルギーを抑え、ここ一番に出力を上げる機能です。これにもJACの機能を応用しています」
影 「次は」
ホセ 「AF-GBX 211B ブレイズ。これはヴォーテックスの後継機に当たりますから、直接のGシリーズではありません。結論から言うと、原型であるヴォーテックスに、変形機構と格闘能力は不要でした。完全な支援機・フォートレスとしての役割に徹するため、マシンとしての機能を撤廃。その他の能力を大幅に伸ばしました」
影 「人型をしていないG・・・か」
ホセ 「この点は、当初の目的を外れますが、Gが海賊の手に落ちた事と、マスコミに対する広告としては、他の機体がその役割を果たすと判断しての機体となります」
影 「それでは、JMと大した差異はないな」
ホセ 「おっしゃる通りですが、JMは量産化が前提とされる機体です。また、この機体のパイロットには、オルダス・ダーレスを起用しています」
影 「Dr.ケーラーのスーパーソルジャー計画の一環かね」
ホセ 「いえ、オルダス・ダーレスはクレイドル機関の兵士ではなく、マシンの一部として扱っています」
影 「ふむ。続けたまえ」
ホセ 「A-GX FA 209S フルアーマー・スレッジ。これはスレッジの追加装備です。スレッジの欠点である移動能力ですが、機体の大きさからヴォーテックスやブレイズでの搬送が不可能でした。かと言って、スレッジに要求されるスピードと機動性を満たすことは難しいため、外装としてのブースターを追加。その瞬発力はロケット並です」
影 「機動性は?」
ホセ 「装備している間は、フォートレス並ですが、外すまではマシンとして機能しません。一度外したら、再装備までに時間を要します。一種のBPWS(バック・パック・ウェポン・システム)だと思っていただければよろしいかと」
影 「また、使い捨てになるのではあるまいな」
ホセ 「回収さえ出来れば再利用できます。・・・そして、最後がA-GX 220F アサルト。・・・おそらく、現在実存するマシンの中で最強の機体です」
影 「最強とは、また、大きく出たね」
ホセ 「アサルトは、基本性能こそサイファーから継承していますが、コンセプトはスレッジに似ます」
影 「強襲型と言う事かね」
ホセ 「はい。まあ、どちらかと言うと、パイロットの意志で動かせるミサイルという点ですが・・・、これは、FAスレッジの制作過程で出たアイデアを別の形で開発・完成させたものです」
ホセ 「damage reflex energy shield system・・・即ち、損害反射エネルギー保護物システムを搭載しています」
影 「回りくどいな」
ホセ 「このシステムが稼働している限り、実弾もビーム兵器も、アサルトを傷付ける事はありません。ゲーム的な言葉を使うなら・・・、いわば、無敵状態という所ですね」
影 「無敵・・・? 現実的にそんなことが可能なのかね」
ホセ 「勿論、幾らかの制限はあります。例えば、パイロットの耐久力や・・・最大の問題は、やはり稼働時間でしょう」
影 「実用に耐えるのかね」
ホセ 「残念ながら、地球上において稼働させれば、5分も持てば万々歳でしょう。宇宙空間では、最大で25分という数字を叩き出しましたが」
影 「初実装にしては充分だな。無敵と言う事だが、そろそろ前線に出るだろうABCBでも、同じ事が言えるのかね」
ホセ 「無論です。アサルトはまさにシリーズ最強の機体ですよ」
影 「君が湯水のように使った金の回収まで、まだまだ働いてもらわねば困る。くれぐれも転ばんでくれよ」
ホセ 「恐縮です。第二期Gの性能を余すところなく発揮し、ユニオンのために貢献したいと思っております」
影 「いいだろう。下がれ」
ホセ 「・・・は。失礼いたします」
ホセ (安楽椅子の亡者どもが。・・・いずれその椅子は俺が頂く)
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