ボッシュ 「ま。色々と手違いはあったが、物語は順調に進んでる」

アーサー 「まだ、連中が俺達を驚異と思っていない。今なら、勝機もある・・・か」

ボッシュ 「ああ。やれるさ」


アーサー 「アンセスターと名乗る海賊どもは、本気でユニオン・Jを潰すつもりだ」

アーサー 「もし、勝利の可能性があるとするならば、R商会が鍵になる事は間違いない」

アーサー 「唯一、ユニオン・Jに対抗しうるネットワーク。だが・・・」


ボッシュ 「R商会と組むつもりはない」

アーサー 「ユニオン・Jに対抗するには、奴らと組む他ないだろう!」

ボッシュ 「ユニオン・Jの位置にR商会が君臨しても、か?」

アーサー 「一度でも、この支配構造を破壊することに意味がある」

ボッシュ 「破壊すると思うか?」

アーサー 「なに?」

ボッシュ 「俺達はただの海賊だ。R商会が俺達と組んでくれるのは、ユニオン・Jの利権を奪えるうちだけだ。ユニオン・Jが連中の軍門に下った瞬間、俺達の方が不要になる」

アーサー 「・・・はは。だからって、何の後ろ盾もなく、奴らが潰せるとでも?」

ボッシュ 「スポンサーのアテがない訳じゃない。どうにかなるさ」

アーサー 「相変わらずだよ、あんた」

ボッシュ 「俺はアンタと違って頭が悪いからな。数字でものを考えられないんだ」

アーサー 「もういいよ。俺はあんたたちに協力すると決めたんだ。・・・文句は言うがな」



タイトル

「ハイド・アンド・シーク」

− Hide-and-seek −



アーサー 「ジャーナリズムは、真実を伝えない」

アーサー 「青二才だった俺は、その事を痛感していた」

アーサー 「親父は、戦場カメラマンだった。戦場での真実とやらを追い求めるため、各地で紛争を繰り返すエクレシアとセグメントを撮り続けた」

アーサー 「戦争が悲惨だと言う事を、ファインダを通して伝えようとした親父は、フィルムの力がいかに無力かを思い知らされる」

アーサー 「親父も馬鹿だ。戦争が悪い事だ、なんてのは、子供でも知ってる。・・・そんな事は、旧世紀時代から明白なのだ」

アーサー 「なのに、何故戦争がなくならないか」

アーサー 「人類の躍進を求められた、新人類の登場をも戦争の道具にした人類」

アーサー 「答は簡単だ。人類にとって、戦争は必要悪なのだ」

アーサー 「俺は、親父の死から、それだけを学んだ」


アーサー 「親父は、旧世紀の偉大な戦場カメラマンとして讃えられるキャパのようには死ねなかった」

アーサー 「反戦を訴えるあまり、ファインダ以外の手段で、大物政治家に楯突いたのがまずかった」

アーサー 「あきらかに、不自然な事故。だが、誰もそれを追求しない。事故に不自然さを残した理由は明白だ。要するに、余計な詮索は身を滅ぼすという見せしめに過ぎない」

アーサー 「正直なところ、俺は反戦とやらに興味がない。しかし、妻と息子を捨て置いてまで親父が見たかったものが何だったのかを知りたいとは思う」

アーサー 「そう思って飛び込んだ報道の世界は、嘘で塗り固められていた」


アーサー 「例えば、地球に住むブルジョワにインタヴューしてみよう」

女 「宇宙の人の事はよくわからないけれど、地球から弾圧を受けているというなら、やはり解放されるべきだと思うわ。でも、だからと言って地球への攻撃やテロ行為が許されてはいけないと思いますね」

アーサー 「彼女は、至極まともな答えを返す。俺達はこれを編集する」

女 「宇宙の人の事はよくわからないけれど、地球への攻撃やテロ行為が許されてはいけないと思いますね」

アーサー 「自分の保身しか考えない、馬鹿な金持ちの出来上がりだ。極右の地球人は大喜び、極左の貧民は怒り沸騰。視聴率は跳ね上がる」

アーサー 「しかも、スポンサーまで喜ぶんだから、報道は歪む一方だ」


アーサー 「報道が、企業の金でやりくりしてる以上、企業に支配されているも同然だ。企業は企業で、政府とよろしくやってる」

アーサー 「とどのつまり、報道は真実など伝える必要はなく、巧妙なシビリアン・コントロールのための道具に過ぎない」

アーサー 「強い者には逆らわないし、逆らえない。・・・人は、いつの時代から、こうして来たのだろう?」

アーサー 「旧世紀の戦乱の時代には、善政か悪政か、絶対的な王のいた時代もあった」

アーサー 「だが、それらは全て、戦争や革命によって成り代わっていく」

アーサー 「だが、この宇宙世紀は、地球議会という絶対的な権力で支えられ、幾度となく繰り返された争いにも崩される事はなかった・・・」

アーサー 「悪政を行い、富を貪り、貧困を強いる議会が倒れない理由は何か?」

アーサー 「無論、議会が絶対的な存在であるが故に、付和雷同するものが多いのも事実だ」

アーサー 「だが、そうじゃない。政治家たちは所詮、傀儡に過ぎず、議会は隠れ蓑に過ぎない」

アーサー 「本当の意味での、絶対権力者。決して矢面に立たず、ひっそりと、そして、確実に世界を牛耳っている」

アーサー 「政治家たちは彼らにへつらうことで飯の種をもらい、マスコミは決して彼らの正体を暴こうとしない」

アーサー 「そいつらは、一部の人間に【ユニオン・J】と呼ばれている」


アーサー 「まさか、ヒーロー・コミックじゃあるまいし、影に潜む悪党なんてものが存在するのか? その疑問も当然だ」

アーサー 「ユニオン・Jに関する発言は全てスルーされる。タコのような姿をした火星人が地球を狙っているのと同じ扱いか、あるいは危ない思想の持ち主だと思われる」

アーサー 「だが、ユニオン・Jは実在する」

アーサー 「それは明確な組織などではなく、それは鉄の戒律を持つ訳でもない。だが、それは確実に存在する」

アーサー 「奴らは、兵器という巨大な産業を保ち続けるため、戦争という種火を消さないように管理している」

アーサー 「そのために、議会は悪政を正さない。そのために、マスコミは真実を伝えない。そのために、民衆は懐柔される」

アーサー 「そのために人は生かされ、そのために、人は殺されもする」

アーサー 「我々は、ユニオン・Jに生殺与奪の権利を握られていると言っても過言ではない。現に、親父はそうやって殺された」

アーサー 「その仇を取ろうなんて気はサラサラない」

アーサー 「ただ、俺はその実態を知りたかった」


ボッシュ 「あんた、これ以上深入りすると、確実に死ぬぜ」

アーサー 「ご忠告感謝する。親切な海賊さん」

ボッシュ 「あんたが知りたいのは、俺達の事か? それとも、スポンサーの事か?」

アーサー 「海賊には必ず、企業がスポンサーに付いてるって話だが、あんたらの背後にはユニオン・Jがいる訳か」

ボッシュ 「ああ。連中が絡んでると、金払いはイイな」

アーサー 「海賊ってのは皆、名ばっかりで、金持ち企業から非合法な妨害工作を請け負ってるだけの飼い犬だ」

ボッシュ 「戦うには、金が要る。弾を買う金がな。奴らは、その弾で自分が討たれるとは考えずに、金を寄越す」

アーサー 「はは。まるで、スポンサーより偉いみたいじゃないか」

ボッシュ 「偉くなりたい訳じゃない。強くなりたいだけさ」

アーサー 「何の・・・ために?」

ボッシュ 「ユニオン・Jを潰す」

アーサー 「なに!?」

ボッシュ 「出来ないと思うか? アーサー・ビーン」

アーサー 「無理だ」

ボッシュ 「じゃあ、アンタは何をしようとしてる?」

アーサー 「俺は・・・」

ボッシュ 「決して歴史の表舞台には現れず、裏で全てを操っている、ユニオン・Jの存在を世に知らしめたい・・・。違うか?」

アーサー 「俺は・・・」

ボッシュ 「マスコミの力がいる。ユニオン・Jに毒されていないマスコミの力が」

アーサー 「そんなモノは・・・」

ボッシュ 「エクレシアも、セグメントも、議会も、全ては奴らの手中にある。だがそれでも、俺達は存在してる。・・・あんたもな」

アーサー 「本気なのか?」

ボッシュ 「ユニオン・Jが、遊び半分で倒せる相手なら苦労しないな」

アーサー 「クレイジーだ。連中に勝てる訳がない」

ボッシュ 「何故そう思う?」

アーサー 「はは。連中の事を知らないんだな! 連中は・・・」

ボッシュ 「なら、教えてくれ。情報は武器になる」

アーサー 「・・・はっ、はは。クレイジーだよ。あんた」

ボッシュ 「世の中を変えるには、クレイジーなぐらいでちょうどイイ」

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