ナレーション 「時に宇宙世紀256年。支配層と被支配層の争いは熾烈を極めた。その戦いの中で、多くの戦士達が死に、そして生き残った者たちは、新たなる戦いの舞台となる地球へと降り立った」


 キース 「アーディシュ家が賊の襲撃を受け、現金資産が奪われました。事実上の衰退です」

 ベネディクト 「キース、お前は何が言いたい」

 キース 「と、申されますと」

 ベネディクト 「お前は、儂に何をさせたい」

 キース 「賊が直接、我々を狙ってきました。屋敷の警護を」

 ベネディクト 「のう。前にも言うたな。人に使われている内は三流以下。人を使えてようやく三流。人がおのずと動くようになって二流」

 キース 「はい」

 ベネディクト 「玉座に座るのも仕事のうち。仕事をしなくなってこそ一流。儂に仕事をさせるな」

 キース 「申し訳ありません。過ぎた事を」

 ベネディクト 「アリーシャはお前になついておる。器もある。いずれこの椅子はくれてやろう。・・・生きるのには飽いたが、死ぬのも面白くない。わかるな」

 キース 「はい。ベネディクト様」



タイトル

「残された道」

− Straight road −



 テリー 「へ。ついに大金が手に入るってかァ」

 シャヒーナ 「金持ちになれば、傭兵生活とはお別れかしら」

 テリー 「まぁねぇ」

 クルー 「悪いが、それはまだチョット先の話だな」

 テリー 「あァ? 何でだよ」

 クルー 「先日の作戦で3000兆もの大金が手に入った事は事実だ。けど、今はそれを手を付けられない。何しろ額が額だからな」

 シャヒーナ 「想像もつかないわ」

 アベル 「でも、どういう事です?」

 クルー 「アーディシュ家が持っていた現金資産は特殊な口座に移動した。でも、そんな大金が動いたら、あっという間に足が付いて口座を凍結される。だから細工をしておいた」

 アベル 「なるほど。でも、細工って?」

 クルー 「その口座は、自動的に預金を架空口座に分割するんだ」

 テリー 「たァ言え、3000兆だぜ。バレるだろ」

 クルー 「だから、3000の銀行に、3000ずつ。約一千万の架空口座。それも、その口座内で移動し続ける。凍結は至難の業だ」

 アベル 「なるほど」

 シャヒーナ 「それでも、とんでもない金額よ」

 テリー 「ま。何だかわからんが、要するに大金持ちはおあずけって事だな。へ」

 クルー 「楽しみは後の方がいいだろ。ユニオンのスポンサーはあと6つだ」

 テリー 「俺ァ今すぐでもイイんだけどね」


 イブレイ 「やってくれたな。軍はもうバラバラだ」

 兵士 「ええ。命令系統は、かつてない程に混乱してます」

 イブレイ 「守らねばならん拠点が一気に増えた。スポンサー様は我先に自分を守れと言い出し、互いに足を引っ張り合ってる。兵もマシンも、金だけで買えるものではないという事を、金持ちの馬鹿どもはわかっていない・・・! これでは、連中の思う壺だ」

 兵士 「我々は、何処に・・・」

 イブレイ 「今、いくら金を積まれても戦力は分散させられん。位置的に、連中が次を狙うとすればシュヴァルツシルト家か、このトラヴィス基地だ・・・」

 兵士 「50%の賭け・・・ですね」

 イブレイ 「やつらの潜伏場所は判明していない。移動中に居留守を狙われたら最期。」

 兵士 「では、停留でよろしいですね」

 イブレイ 「ああ。だが、手をこまねいて見ている訳にもいかんな」

 兵士 「何か、策でも・・・」

 イブレイ 「幸いな事に、ここは地球だ。打つ手は打たせてもらう。足留めぐらいにはなる・・・」


 クルー 「休憩終わりました、艦長。っと、そろそろ目標地点ですか」

 ボッシュ 「ああ、ケネス達に用意させろ」

 クルー 「あっ、これっ!?」

 ボッシュ 「どうした?」

 クルー 「割り込み放送です。受信、しますよ」

 ボッシュ 「なんだ? 誰の仕業・・・」

 クルー 「なッ!? これって・・・」


 シャヒーナ 「騒がしいわね」

 アベル 「うん。何だろ」  アベル 「何事です?」

 ケネス 「アベル。お前は見ない方がいいぜ」

 アベル 「嫌です。また僕だけ知らされないのは」

 シャヒーナ 「アベル」

 ケネス 「親切心で言ってンだがな。ま。見たいのなら見ればいいが、俺ァ止めたぜ?」

 アベル 「見ます」


 兵士 「繰り返す。我々エクレシアは議会に対し、宇宙民解放を望むものである。さしあたっては、評議会幹部アレックス・ジェイソン・ダグラスの身柄を要求する。これが聞き入れられない場合は・・・」

 アベル 「あれってッ・・・!?」

 AJ 「妻と子供だよ」

 アベル 「なんで!? エクレシアが!?」

 AJ 「エクレシアの振りをした軍人だよ。おそらくはイブレイの差し金だろうな」

 アベル 「AJ!」

 AJ 「アベル。君の言いたい事はわかるが、却下だ。私には成すべき事がある」

 アベル 「あなたはッ! あなたって人はッ!」

 シャヒーナ 「やめなさい、アベル」

 AJ 「むしろコレはチャンスだ。連中も、アーディシュ家の襲撃に慌てたんだろうな」

 アベル 「なにがっ」

 アーサー 「慌てんなよ。アベル」

 アベル 「アーサーさん!?」

 アーサー 「この放送は全世界に向けて発信されてる。視聴率は前代未聞だ。そこで連中はヘマをやらかしてる。いいか」

 アーサー 「連中の装備、こいつは議会軍のもの。それに、放送の発信地。これが議会軍のお膝元。つまり、エクレシアじゃない事は明白だ。俺達の足留めついでに、反エクレシア感情を煽ろうって魂胆らしいな。そいつを逆手に取らせてもらう」

 アベル 「それで、どうするんですかっ?」

 アーサー 「慌てんな。今、電波ジャックを急がせてる。この事実を世界に発信する・・・ッ」

 シャヒーナ 「この放送を、乗っ取る・・・?」

 アベル 「間に、合うんですか?」

 アーサー 「いざって時のために準備はしてある。予定通りに行けば、15:25、45分後だ」

 アベル 「45分・・・」



アイキャッチ
アイキャッチ「G−GUILTY」


 ボッシュ 「取り込み中に悪いが、パイロット三名は出撃準備を急げ。次のターゲット、シュヴァルツシルト家を襲撃する」

 アベル 「あの人たちの救出はっ」

 ボッシュ 「残念だが、場所が遠過ぎる。アーサーの作戦が間に合う事を信じるしかない」

 アベル 「そんなッ」

 ケネス 「ボッシュ、今襲撃して、人質が殺される可能性は?」

 ボッシュ 「む・・・」

 AJ 「人質の意味をなくす可能性もある。どちらにせよ50% 襲撃の有無で可能性は変わらんよ。むしろ今、躊躇する方が敵に時間を与える。・・・戦闘区域までは?」

 クルー 「約30分ですが、相手の索敵がどのレベルかにも依ります」

 ケネス 「ギリギリ、どっちが早いとも言えねぇ時間か・・・。わかった。行くぞ」

 アベル 「わかってます。行きます」

 ケネス 「怖い顔すんなよ」

 アベル 「でも僕はッ 大事の前の小事なんて考え方は出来ませんッ」

 ケネス 「知ってる。お前まで、俺らみたいに考える事ァねえよ」

 AJ 「もはや選択している余地はない。一本道だよ。その先に待つのが成功か失敗かはわからんがね」


 アベル 「邪魔しないでよッ!」

 テリー 「は。すげーのなんの。この期に及んでコックピットは外すってか」

 ケネス 「幸い、まだ敵さんの増援はないみたいだな。一気に片付けるぜ」

 テリー 「なるほど。連中が足留めをしたがる訳か」

 アベル 「急がなきゃ・・・ッ」


 兵士 「裏が出ました・・・。シュヴァルツシルト家襲撃です」

 イブレイ 「ふん。ならば次が大決戦という訳だな」

 兵士 「その、人質の方は・・・」

 イブレイ 「足枷にならなかった以上、かまう事はない。予定を早める用に通達」

 兵士 「ですがっ、さすがに・・・」

 イブレイ 「世界中が注目の事件だ。せいぜい利用させてもらう」

 兵士 「は、はい・・・」


 ボッシュ 「良かったのか?」

 AJ 「何が」

 ボッシュ 「妻子なんだろ、あんたの」

 AJ 「胸が痛むと言えば、同情してくれるのかな」

 ボッシュ 「いや、すまない」

 AJ 「かまわんさ」


 アーサー 「時間だ。・・・まだか。くそっ」

 アーサー 「間に合えよ。・・・間に合ってくれ」


 ボッシュ 「予定時刻を過ぎたぞ」

 クルー 「まだ、です」


 兵士 「残念ながら、要求は聞き届けられなかったようだ。我々もこんな真似はしたくなかったが・・・」


 ボッシュ 「まだかっ!? 早くしろッ」


 アーサー 「間に合えッ! 間に合えッ!」


 アベル 「間に合ってッ!」


 兵士 「子供は後だ。まずは、女からだ」


 アーサー 「クソっ!」

 アーサー 「頼むッ!」


銃声。

 兵士 「・・・次は子供だ」


 アーサー 「ぐっ」


 兵士 「なに!?」

 兵士 「どういう事だッ!?」


 アーサー 「少し・・・少し遅かった・・・」


 ボッシュ 「なんて、事だ・・・」

 AJ 「いい画が撮れたじゃないか。暴徒を装った軍が無抵抗な女を射殺。寸での所で子供は救われた。これ以上ないプロパガンダだろう」

 ボッシュ 「あんた・・・」

 AJ 「どうせ、妻とは冷え切ってた。子供が助かっただけでも幸運だ。万々歳じゃないか。・・・戦闘の方は?」

 ボッシュ 「問題・・・ない」

 AJ 「少し、休ませてもらう」

 ボッシュ 「・・・ああ」

 AJ 「通してくれ、シャヒーナ」

 シャヒーナ 「ええ」


 シャヒーナ 「・・・残念だけど」

 アベル 「・・・そう、うん。わかった・・・」

 テリー 「は。どうにも寝覚めが悪いね」

 ケネス 「俺らは全力を尽くした上で、子供を救った。それでいいじゃねえか」

 テリー 「へ。悪いね。それ、俺が言うべきなんじゃねえの? 役回り的によ」

 アベル 「ごめんなさい・・・」


 クブラカン 「全世界に告げます。議会軍は、我々に扮して無抵抗な市民を手に掛けました。許されざる行為です。我々はもう、気付くべきではないでしょうか。いかに情報が統制され、いかに我々が利用されているか。いえ、あなた方は気付いているはずです。気付かない振りをしている。自分には関係がない、と。もう、見て見ぬ振りを止めていただきたい。世界は、変えられるのです。もう、その時が来ている。明日からではない。たった今、たった今あなたが行動する事で、愚かしい蛮行を止められるのです」


 アベル (事件の後に流された、この放送を期に、市民の感情は反体制側に大きく傾いた。議会軍の兵士にも、出撃のボイコットが出始めたらしい。多分、作戦と言う意味ではこれ以上の成功はないんだろう。だけど・・・)


 ルオ 「演説、お見事です。さすがは2代目クブラカン」

 クブラカン 「茶化さないでくれ。それより、シャイロンは・・・」

 ルオ 「問題ありません。勾留中の身で、打つ手もない。彼の野望はついえました」

 クブラカン 「ならばいいのですが、どうにもあの男は底が知れなくて・・・」


回想。

 シャイロン 「この世界のあらゆる駒を使って、貴様ら一族を根絶やしにしてやる」

 ルオ 「君との付き合いは長いが、ようやく本心を聞けた気がするよ。では、早速で悪いが、その目的は達成されない」

 ギルバート 「入れ」

 シャイロン 「何の真似だ」

 ギルバート 「シャイロン・チェイ宙将、あなたを拘束します」

 シャイロン 「何の権限があって? ・・・銃をおろせ」

 ルオ 「確かに、我々は部外者。しかし、権限のある人もいる」

 リカード 「少し、功を急いたな。軍とて、やすやすと私物化されるほど愚昧な組織ではない」

 シャイロン 「パウル・リカード・・・ッ!」

 ギルバート 「我々の手にはクブラカンの名前と、フォルビシュ、ナディア・・・」

 リカード 「そして私、リカードとパーノッドと言う駒が揃っている」

 ルオ 「これで手詰まりだ、シャイロン。リザインしたまえ」

 シャイロン 「ふふ。ははは。面白い。いいだろう。投降しよう」

 ギルバート 「何が、面白い」

 シャイロン 「だが、覚えておけ。これで投了などと思うな。戦略的敗北だ」

 ギルバート 「負け・・・惜しみをっ」

 シャイロン 「くっく」

 リカード 「拘束しろ」


 ルオ 「あの言葉を気にしているのですか」

 クブラカン 「いや、そうだな。気にしていないといえば嘘になるが・・・」

 ルオ 「リカード氏は復権と引き換えに、我々への協力を承知しました。副官のルクレール・ミロ氏も、こちら側です。もはや用意された道を歩くだけですよ」

 クブラカン 「ああ、そうだ。そうだな・・・」


 キース 「さて。ドワイト・フォード卿。君が情報漏洩者である事は判明した。念のために聞こう。黒幕は誰だ?」

 ドワイト 「喋ると思いますか? 自決用の薬は仕込んであります」

 キース 「いい覚悟だ。裏切るに値する主を見つけたのだろう。ならば、乗りたまえ。心配しなくても、自白を強要したりはしない」

 ドワイト 「何のつもりです」

 キース 「君も戦って死にたいだろう。無論、逃げてもいい。インターフェースは一番易しいものにしてある。パイロットではない君でも、扱いに困る事はないよう配慮したつもりだ」

 ドワイト 「お優しい事です・・・。この体制には疑問を感じていましたが、キース・フリーセン、あなたの事は嫌いじゃありません」

 キース 「有難う。では、始めまたえ」

 ドワイト 「ならばッ!」

 キース 「残念だが、」

 ドワイト 「・・・さすがっ!」

 キース 「君は逃げない。それぐらいはわかる。しかし、フォード卿が寝返ったとなると、この叛乱は根深いな」

 キース 「戦いが、近いか・・・。必ず、お守り致します。ベネディクト様、アリーシャワリー様」



次回予告

ナレーション 「セツルメントへの侵入を果たしたアベルを待ち受けていたのは、正規軍と絶望的な状況で戦うゲリラだった。ゲリラに残された希望は、予言の告げる救世主しかない。アベルはその救世主と成り得るのか。次回、『Gの再来』 Gの鼓動が、今目覚める」

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