ナレーション 「時に宇宙世紀256年。支配層と被支配層の争いは熾烈を極めた。その戦いの中で、多くの戦士達が死に、そして生き残った者たちは、新たなる戦いの舞台となる地球へと降り立った」


 ボッシュ 「ケネス。すまんが、次の作戦での採決を取りたい」

 ケネス 「あン? 珍しいな。俺に意見を求めるなんてよ」

 ボッシュ 「アベルの事だ。次の攻撃地点は、お前も・・・」

 シャヒーナ 「ッ」

 ボッシュ 「なにしろアベルだからな。正直なところ、どういう行動に出るかわからん」

 ケネス 「はン。なるほどね。俺は騙しちゃっていいんじゃないかと思うけど?」

 ボッシュ 「テリーと同じ意見か。ふん。説得票を上回ったな。仕方ない。そうしよう。しかし、どうせバレるぞ?」

 ケネス 「だからだよ。先に行かせちまって、見せた方が正解だと、俺ァ思うがね。現場は俺らだ。どうにかするさ」

 ボッシュ 「わかった。任せるよ」

 ケネス 「あいよ」

 シャヒーナ 「今の話・・・」

 ボッシュ 「シャヒーナ。聞いてたのか」

 シャヒーナ 「艦長、少し、お願いがあるんですけど」

 ボッシュ 「ん?」

 シャヒーナ 「今の話だと、次の作戦が困難って訳じゃないんですよね」

 ボッシュ 「戦闘って意味じゃな」

 シャヒーナ 「それなら、お願いしたいんです」



タイトル

「任務と正義と」

− To be, or not to be −



 イブレイ 「畏まりました。それでは、Gチームはトラヴィス基地の防衛に当たらせます」

 兵士 「奴ら、来ますかね」

 イブレイ 「連中の出現地点から考えれば、十中八九、次の目標はトラヴィスだろう」

 兵士 「何か?」

 イブレイ 「阿呆か。そんな警戒態勢のエリアに、わざわざ飛び込んでくると思うか? 現に網にも掛かってない」

 兵士 「あ、いや、それは、まあ・・・。でも、そのためのGでしょう?」

 イブレイ 「しかし、こちらもGで対抗する事は明白だ。正面切ってくるかどうか・・・」

 兵士 「でも、他に何処を狙うんです?」

 イブレイ 「気になるポイントが、ない訳じゃない」

 兵士 「はあ・・・、でも、他に重要な軍事拠点は・・・」

 イブレイ 「まあいい。それよりも、Dr.ケーラーとはまだ連絡が付かんのか」

 兵士 「はい。カーロ長官自身さえコンタクトが取れない状態にあると・・・」

 イブレイ 「タイラントも受け取った。足取りはハッキリしてる。この、バルバロイ狩り・・・、間違いなく奴らの仕業だ。早く接触して合流させろ。長官の許可は出てる」

 兵士 「は、はい」

 イブレイ 「それと、セグメントのシャイロン・チェイにも協力を打診しろ。奴もG狩りの対策委員で地球にいるはずだ」


 シャイロン 「おや、セイン将軍。直通でご連絡とは珍しい」

 セイン 「シャイロン宙将。説明しろ、この体たらくを」

 シャイロン 「何の話でしょうか」

 セイン 「例の救世主だ。貴様は何をしに地球に来たと思っている」

 シャイロン 「そうはおっしゃいますが、ここは議会軍のお膝元ですからね。大きな顔をして闊歩できる場所では」

 セイン 「何のための対策委員か!」

 シャイロン 「ご心配なさらずとも、つい先ほどグレイゾンの方から協力の要請が届きました。大手を振って出撃できます」

 セイン 「いいだろう。これ以上、私の手を煩わせるな」

 シャイロン 「承知しています」

 シャイロン 「煩わせるな、か。私が言いたい所だが、いささか政治に色を出し過ぎたな。いずれにしろGが邪魔であることには違いない」

 シャイロン 「部隊の整備を完璧にしておけ。アーリキュラーとリリィ・パッドの準備もだ」

 兵士 「了解しました」

 シャイロン 「しかし、問題はGよりも、奴らのスポンサーだ」

 ルクレール 「はい。彼らの出資者が最大の障壁です」

 シャイロン 「この期に及んで尻尾もつかませないとはな・・・」


 ボッシュ 「・・・という訳だ。各人の健闘を祈る」

 ケネス 「アベル、どうした。ちゃっちゃっと出撃準備しな」

 アベル 「あ、はい。あの、今回の作戦、いつもに比べて、随分と説明が短かった気がするんですけど」

 ケネス 「そりゃま、な。・・・俺らの戦いは、ほぼ勝ちに傾いてるからねぇ」

 アベル 「え? そんなっ」

 ケネス 「議会軍もユニオンもまだまだいる。だがな、俺達は連中を滅ぼしたい訳じゃない。体制を崩す事が目的だ」

 アベル 「それは理解してるつもりです」

 ケネス 「ハッキリ言やァ、俺達が地球に降下した時点で、勝ちが半分以上決まったのさ。俺達の勝ち敗けなんて、大事の中の小事でしかない。目的はあくまで、ハワードのおっさんが政治的に勝つ事」

 アベル 「そう、ですよね」

 ケネス 「わかったら準備しな」


 ケネス 「ケネス、サイファー出るぜ」

 アベル 「ギルティ行きます!」

 テリー 「ヴォーテックス、出る」


 アベル 「そろそろ、戦闘区域ですよね?」

 ケネス 「ああ、油断すんな」

 アベル 「変、ですよ。敵の気配がまったくない」

 テリー 「は。待ち伏せかも知れねェしな。気ィ締めてけ」

 アベル 「はい。でも・・・、・・・ッ!? こ、これってッ!?」


 シャイロン 「さて。これで奴らの足取りは途絶えたか・・・。末端の組織員風情が、捕縛と同時に服毒自殺。君に接触しようとした組織は、なかなか手ごわいな」

 ルクレール 「申し訳ありません」

 シャイロン 「まあいい。餌は蒔いた。食いついて来た時は、君が手筈通りにやってくれれば、それで、な」

 ルクレール 「畏まりました」

 シャイロン 「入れ」

 補佐代理 「失礼しま・・・、ミロ副官!?」

 ルクレール 「はい。この度はご迷惑をお掛けしました。今日から複務しました」

 補佐代理 「いえ、その、お元気そうで。ええ・・・」

 シャイロン 「用件は?」

 補佐代理 「あっ、はい。シャイロン宙将に依頼されていた件と・・・」

 シャイロン 「うむ。ミロ副官、今日の所はこれでいい。動きがあれば、逐一連絡を」

 ルクレール 「畏まりました。必ず成果としてご報告できるようにします」

 シャイロン 「結構」

 補佐代理 「ミロ副官・・・、やっぱりまだ生気がありませんね」

 シャイロン 「”心の病”というのは一週間の療養程度で良くなりはしないだろう。もっとも、君は代理としては良くやってくれているがね。彼と比べるのはいささか酷というものだろう。・・・彼が優秀すぎた。酷使し続けた私の責任だろうな」

 補佐代理 「いえ、その、すみません」

 シャイロン 「ふむ。それで?」

 補佐代理 「あの、シャイロン宙将に面会を、という男が来ておりまして・・・」

 シャイロン 「面会? 随分と声の掛かる日だ」

 補佐代理 「その、アポイントがなければ無理だと言ったんですが、これを・・・」

 シャイロン 「ほう。・・・ちょうど昼休みだ。職務には差し障りない。通せ」



アイキャッチ
アイキャッチ「G−GUILTY」


 アベル 「ぐ、軍事工場じゃない!? これって・・・!?」

 テリー 「へ。豪邸に見せ掛けたカモフラージュかもよ」

 アベル 「違いますっ。これッ、ただのお屋敷じゃないですか!」

 ケネス 「そうでもないぜ。ほ〜ら、来なさった」

 アベル 「あの時のッ! でもッ!」

 テリー 「手の前の敵に集中しな」

 アベル 「二人ともッ! 知ってたんですね!? 僕らが民家を襲撃するって事!」

 ケネス 「民家じゃねぇよ。ユニオン最大手出資者のひとつ、アーディシュ家だ」

 アベル 「でもッ! 無抵抗な民家じゃないですかッ」

 テリー 「ぉぃぉぃ、何処が無抵抗だってぇ?」

 アベル 「それは僕らが襲撃してるからッ! こんなのってないですよ!」

 ケネス 「さっきも言ったがな。体制を崩す事が目的だ。こいつらを叩かなきゃ、戦争は続く。問題なのは、こいつらの持ってる権力と財産だ。これを崩せば、地球の特権階級も、セツルメントの圧政もなくなる」

 アベル 「でもっ」

 シャヒーナ 「アベル!」

 アベル 「シャヒーナ!?」

 シャヒーナ 「罠よ! 今、マトリックスが襲撃を受けてるの! 急いで戻って!」

 アベル 「ケネスさん!」

 ケネス 「聞こえてるよ」

 シャヒーナ 「アベル!」

 テリー 「へ。敵さんも馬鹿じゃねえってか? アベルよぅ、これでもこいつらが無抵抗だって?」

 アベル 「くっ、こっちは任せてもいいですか!? 僕が戻ります!」

 ケネス 「ま。こっちは二人でどうにかなりそうだな。お前さんもこっちにゃ乗り気じゃないんだろ。いいぜ、戻ンな」

 アベル 「はい! 行きます!」

 テリー 「あーらら。行っちまいやがんの」

 ケネス 「どうにも引っ掛かるが、とっとと片付けるぜ」

 テリー 「了〜解、と。で、何が引っ掛かるって?」

 ケネス 「おっと! 粉だよ。あっちもこっちも戦闘濃度なら、通信が届くと思う?」

 テリー 「ああ。それは俺も思ったね。って、雑談してる場合じゃねぇか」

 ケネス 「そこっ!」


 兵士 「つ、通信です、長官」

 イブレイ 「繋げ・・・、なんですって!? いえ、無理です。ええ。兵を向かわせることは可能ですが、どうせ今からでは間に合いませんよ。無駄です。ええ。・・・そうです。遂に始まりましたか・・・。ええ。了解いたしました。それでは」

 兵士 「・・・連中、別のポイントに?」

 イブレイ 「ああ。アーディシュ邸を直接襲撃したそうだ」

 兵士 「アー・・・ディシュ?」

 イブレイ 「ユニオンの母体である、七家系の大金持ちだ。スポンサーの名前ぐらい知っておけ」

 兵士 「は、はあ。すみません・・・」

 イブレイ 「A・J・ダグラス・・・!」


 テリー 「は。制圧完了、と」

 ケネス 「さァて。聞こえてるかい、アーディシュ家当主のマルク・アーディシュさんよ。守備の連中は全滅した」

 当主 「む・・・」

 ケネス 「こっちとしちゃ、これ以上の破壊行為を望まない。とっとと白旗を揚げてくれる事を望む」

 ケネス 「ただし、白旗を出す条件がある。コイツが何だかわかるだろ」

 当主 「我々の財産か・・・。私でさえ把握していないのに、よくもまあ、ここまで調べ上げた・・・」

 ケネス 「あんたらの預金総額3629兆。こいつを全部吐き出してもらう」

 当主 「な、なんだと」

 ケネス 「俺らが知る、あんたの現金総資産だ。それ以上の財産も命も奪わない。悪い条件じゃないはずだがな。返事を急いでくれ。でないと」

 ケネス 「こう。屋敷も、屋敷の中にある骨董品や美術品なんかも失われちまう。ま。俺も芸術に造詣が深いんでね。こんな真似はしたくない。資産が残ってるウチに決断した方がいい。もう一度言うぜ。返事を急いでくれ。でないと・・・」

 ケネス 「お利口さん」

 テリー 「さっすが、宇宙海賊は強盗も恐喝もお手の物」


 シャヒーナ 「どういうつもり? 何故戻ってきたの?」

 アベル 「敵の襲撃・・・、嘘だったんだね」

 シャヒーナ 「ええ。あなたがこの先を戦えるのか、試したのよ。なぜ作戦遂行を最優先しなかったの?」

 アベル 「シャヒーナが、危ないと思ったから」

 シャヒーナ 「私一人の命よりも、目的の達成が先よ! それをのこのこと!」

 アベル 「違うよ」

 シャヒーナ 「なっ」

 アベル 「確かに、僕は戦争のない世界を望んでる。だけど、そこにシャヒーナがいないなら、何の意味もない」

 シャヒーナ 「そんな話をしてない! あたしはっ」

 アベル 「そんな話だよ。シャヒーナがいるから、僕は戦える。それが利己的でもいい。シャヒーナがいるから」

 シャヒーナ 「このっ」

 ケネス 「こりゃ完全に負けだぜ、シャヒーナ。素直に、騙した事を謝った方がいいんじゃないかい」

 アベル 「ケネスさんも、僕を騙したんですよ」

 ケネス 「すまなかったな。この通りだ。許してくれ」

 アベル 「戦いは、モニタで見ました。ちゃんと結末まで知らせてくれてたら、僕だって同意しましたよッ」

 テリー 「は。恐喝行為は認めンのかよ」

 アベル 「そういう訳じゃ・・・っ」

 ボッシュ 「やれやれ。どうなる事かと思ったが・・・」

 クルー 「どうやら、取り越し苦労だったみたいですね」


 シャイロン 「どうぞ」

 ギルバート 「お久し振りです。昼食の時間を邪魔して申し訳ない」

 シャイロン 「戦死したと報告を受けてはいたが、エナとミアまで揃って死ぬのは妙だと思っていたよ」

 ギルバート 「エナは戦死しました」

 シャイロン 「そうか。それで、今日は何のご用かな」

 ギルバート 「クブラカンの名を引き継ぐに当たって、先代の許可を頂きに・・・」

 シャイロン 「君だったのか。ふむ。それで、もう一人のゲストは何故、君といる?」

 ルオ 「パーティー以来だな。君の真意を尋ねたくてね」

 シャイロン 「真意?」

 ルオ 「こちらでもう、ある程度の調べは済んでいる。単刀直入に聞きたい。ユニオンに潜り込み、軍隊を乗っ取り、その先に君は何を望んでいる?」

 シャイロン 「乗っ取りなどと、・・・大袈裟な」

 ルオ 「我々一族への・・、復讐かな?」

 ギルバート 「一族!?」

 ルオ 「彼の本当の名は、ルオ・シャイロン。R商会第2正統後継者だ」

 シャイロン 「元、だがね」

 ルオ 「さて。もう一度聞く。君の狙いはなんだ?」

 シャイロン 「持ってさえいなければ、奪われる事もなく、奪われなければ、取り替えそうなどと思わなかった。私さえ諦めれば、その愚かな連鎖は終わるが・・・、生憎と、それほどお人好しじゃない」

 シャイロン 「望むのは、混沌だ。貴様たち一族を、この抗争に巻き込んでのな・・・!」



次回予告

ナレーション 「セツルメントへの侵入を果たしたアベルを待ち受けていたのは、正規軍と絶望的な状況で戦うゲリラだった。ゲリラに残された希望は、予言の告げる救世主しかない。アベルはその救世主と成り得るのか。次回、『Gの再来』 Gの鼓動が、今目覚める」

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