ナレーション 「時に宇宙世紀256年。支配層と被支配層の争いは熾烈を極めた。この争いが持つパワーバランスの要の一つであるアリスタリウス。神の雷は、放たれるのか、それとも、阻止できるのか」

ケネス 「本丸近し・・・、粋な計らいじゃねえか、オルダス・・・」

アベル 「アリスタリウス!」

バーナバス 「やらせるかッ!」

キャロライン 「アリスタリウスが落ちれば負け戦は確定。敗残兵も補給を受けられないわ。そうでしょう?」

指令 「やれと・・・言うのか・・・、敵味方を問わず・・・」

パーチ 「・・・アリスタリウスが動いた?」

アベル 「と、止めないと! 撃たせるわけには・・・!」



タイトル

「流星の日(後編)」

− the day of shooting star II  −



戦闘宙域から少し離れた場所にいるヴァグラント。

イブレイ 「面白いな。実に、面白い。傑作じゃないか。くっくっ」

兵士 「は、はあ・・・」

イブレイ 「女神様はその雷をもって、この争いを止めると言うのだよ。敵も味方もなく、な」

兵士 「そ、それで、我々は、その、参戦しなくて、その、宜しいのでしょうか?」

イブレイ 「慌てるな。まァだ出番じゃない。それまで我々は、高見の見物とさせて貰おうじゃァないか」


戦闘宙域。

バーナバス 「諸共撃つってのか!? どうする!? パーチ!」

パーチ 「巻き添えを食うのはご免だが、アベルを逃すのも・・・」

バーナバス 「ギリギリまでやるか!?」

パーチ 「・・・いや、撤退だ。攻撃範囲から極力離れる」

バーナバス 「パーチ!? お前・・・ッ」

パーチ 「どっちに転んでも、痛み分けは確実だ。レーザーが全部を焼き払うと言うなら、俺達が出る必要はない」

バーナバス 「ちッ! だが・・・」

パーチ 「俺は逃げる。逃げ足に自信がないんでね。お前は好きにしろ」

バーナバス 「くそっ! わかったよッ」


テリー 「雲行き・・・、ちょっと怪しいんでないかい?」

イヴリン 「まさか!? この状況で撃つっての!?」

テリー 「は。悪いが、ちんたらやってる余裕はないな。お先に失礼するぜ!」

ヴォーテックス、踵を返す。イヴリンも迷いながらも撤退する。

イヴリン 「撤退!? ええぃ! 追ってく訳には・・・」


マトリックス、ブリッヂ。

クルー 「例のデカブツに動きがあります!」

ボッシュ 「ぉぃぉぃ・・・、撃つ気か?」

クルー 「連中も必死・・・って事ですかね。・・・っと、ヴォーテックスです」

撤退してきたヴォーテックスが艦橋の前に出る。

テリー(モニタ) 「奴さん、撃つ気だぜ? どうする?」

ボッシュ 「この期に及んでハッタリだなんて事ァなさそうだな。・・・やむを得ん。離脱する」

テリー(モニタ) 「了解。進路のゴミ掃除は引き受ける」

ボッシュ 「出来る限りでいい。・・・周囲にも、区域の離脱を促せ」

クルー 「りょ、了解です」

ボッシュ 「すぐに攻撃範囲を予測しろ。なるべくヤツに近付く進路でな」


アリスタリウス内。動力炉付近。

ケネス 「くっ、さすがに動力炉の壁は厚いってか!」

壁を破壊して侵入しようとするサイファーに、敵マシンが襲いかかる。

敵兵 「生きて帰さんぞ! テロリストぉッ!」

ケネス 「ちっ! もう来たか!」

敵兵 「させるかァッ!」

ケネス 「邪魔すんのは結構だがね。今さらコイツを撃たせたら、お前らだってどうなるか・・・!」

敵兵 「うああっ」

ケネス 「わからねえほど低脳じゃねえだろうがッ!」


アリスタリウスに接近するアベルのギルティ。

アベル 「アリスタリウス! 間に合えッ! ギルティ!」

アベル 「どうして! 道をあけてよ! 通してよ!」

アベル 「ッ!? ここ、誰かが侵入した!? ケネスさん!?」

ケネスとオルダスの侵入した経路を発見、後を追う。

アベル 「とにかく今は信じるしかッ!」


オデッセイア・ブリッヂ。

キャロライン 「まだなの・・・?」

ダニエル 「・・・大砲ですからね。簡単には撃てませんよ」

キャロライン 「いざという時に抜けない刀は、なまくらって言うのよ」

ダニエル 「そうは言いますけど、出力・・・、来ます!」


アリスタリウス内部。

ケネス 「ヘパイストスみたいに簡単じゃねえってか・・・!」

敵マシンを捕捉、炉壁にぶつけてから撃ち、誘爆させて壁を破壊するケネス。

ケネス 「こいつらの誘爆を利用すれば・・・!」

敵兵 「くっ! ヤツに近付くなッ! 倒せなくていい! とにかく発射までの足留めを最優先しろ!」

ケネス 「ちッ! 作戦を切り替えられたかッ!?」


マトリックス艦内。

ボッシュ 「発射までの予測時間!」

クルー 「40秒切ってます!」

ボッシュ 「当艦の位置は?」

クルー 「攻撃予想範囲からは外れてます」

ボッシュ 「よし。・・・後は、アベル、ケネス・・・。間に合ってくれよ」


アリスタリウス内部。アベルのギルティが、ケネスのいる場所まで到達する。

アベル 「くああっ!」

ケネス 「アベルか!?」

アベル 「ケネスさんっ! 退避してくださいッ!」

アベル 「突き破れッ! ギルティッ!」

ギルティ、炉壁を突き破る。


アリスタリウス司令室。

指令 「・・・準備はいいな」

兵士 「は。・・・指令の、号令待ちです」

指令 「賊が侵入している以上、躊躇っている暇はないな」

兵士 「・・・」(唾を飲む)

指令 「撃てッ!」

ガラスが叩き割られ、ボタンが押される。


アベル 「間に合ええええェェッ!」

ギルティ、エネルギーを貯め込んだ炉心に巻き付くようにして攻撃する。


そして、激しい閃光と、とてつもない爆発

サイファーは炉壁を盾にするが、それでも光に呑み込まれる。


光に包まれるマトリックスのブリッヂ。

クルー 「アリスタリウスっ!」

ボッシュ 「どうなったッ!?」

テリー 「・・・これは・・・」



アイキャッチ
アイキャッチ「G−GUILTY」


爆発を見つめるイヴリンのクロスボウ。

イヴリン 「・・・アリスタリウス・・・」


パーチ 「墜つ、か・・・」

バーナバス 「いや・・・、コイツは・・・」

爆煙の中から、ふたつに折れたアリスタリウスが現れる。


オデッセイア、ブリッヂ。

キャロライン 「ふ、ふふ」

ダニエル 「アリスタリウス・・・ッ!」

キャロライン 「ふふふ。あは、あははははは」


ヴァグラント艦内。

イブレイ 「アリスタリウスが、割れた、か」

そして、折れたアリスタリウスの片方は誘爆して炎に包まれるが、もう一方は大きく動き出す。


オデッセイア、ブリッヂ。

キャロライン 「ふふ、勝ったわ。私たちの勝ちよ」

ダニエル 「か、勝ちって、この状況は・・・」

キャロライン 「わからない? アリスタリウスは攻撃用のエネルギーを貯めたまま爆発。大きく割れて動いたわ」

ダニエル 「潜入していたGを巻き添えにって事ですか? だとしたら犠牲はあまりにも・・・」

キャロライン 「Gを巻き添え? あは。ふふ。そうね。そうなってたら渡りに船だわ。でも・・・」

ダニエル 「ッ!? それじゃ・・・」


マトリックス艦内。

ボッシュ 「まずいッ! クルーガー! 全速力でアリスタリウスに近付け! 心配するなッ! 奴さんが墜ちたおかげで停戦状態になってるッ!」

クルー 「えっ!? はっ、はい!」

ボッシュ 「まずいぞ、このままじゃ・・・、アリスタリウスは・・・」


オデッセイア艦内から、折れたアリスタリウスが地球に引き寄せられるのが見える。

ダニエル 「地球に・・・、落ちる」

キャロライン 「そう。分断されたアリスタリウスの片割れは、このまま地球の重力に引っぱられ、災厄となって地上へと降りかかるわ」

ダニエル 「でも、それじゃ、被害は・・・」

キャロライン 「あっは! 何を言ってるのかしら。被害よりも、戦果じゃなくて? 隕石落としなんて、核と同じ抑止力。政治的な武器でしかないわ。それをもしホントに落としたりなんかしたら・・・。あっはは」


オデッセイア。

ボッシュ 「俺達は、無関係な市民を虐殺し、地球を敵に回す事になる・・・!」


爆煙から逃れたケネスとアベル。

ケネス 「くっそッ! やっと視界が戻ったと思やあ! 何てこった! アベル! 無事か!?」

アベル 「僕は無事です! けど! アリスタリウスの半身が!」

ケネス 「わかってる! だが、この規模のバケモノをマシンの一機や二機で・・・ッ! おい! アベルっ!?」

アベル 「止めますッ!」

アベル、アリスタリウスを追う。


イブレイ 「くっくっ、面白いことになったなァ・・・。おやおや、思わぬ所で出会うな」

ようやく宙域に近付いたヴァグラントが、逃げてきたパーチとバーナバスを発見する。

バーナバス 「ヴァグラントッ?」

パーチ 「やれやれ、だ」

イブレイ 「戦況は把握している。アレがどう転ぶにせよ、どうせ貴様らも海賊も、地球へと降下するのだろう? 乗りたまえよ」

バーナバス 「少々きな臭いが・・・、敵って事はねえ、か」

パーチ 「ま。安全とも思わないが、このままよりはマシだな」

バーナバス 「味方だってのなら、せっかくだ。イヴリンとオルダスも探してやってくれ」

イブレイ 「いいとも。私の大事な戦力だからな」


アリスタリウスを追いつつ、攻撃を掛けるアベル。

アベル 「いくらギルティの攻撃力があったって・・・!」

ケネス 「よせ! アベル! 地球の重力圏に入るぞ! くっ!」

アベル 「それなら! 先回りして!」

ケネス 「アベルッ!」

ギルティ、アリスタリウスの前に回るが、ケネスはそれを止められない。


オデッセイア。

ダニエル 「艦長ッ! 海賊艦、来ますッ」

キャロライン 「テキトーに迎撃だけして。どうせアリスタリウスの落下をふせぎに来たんでしょ」

ダニエル 「え? は? か、艦長?」

キャロライン 「ふふ。私たちは、海賊艦の後を追うのよ。連中の砲撃は全て前方。安全でしょ?」

ダニエル 「りょ、了解です」


ケネス 「アベル・・・! くそっ、この機体とダメージじゃ大気圏突入は無理かッ。サイファー! 帰艦する!」

ケネス、後退して、追ってきたマトリックスに着艦する。

ケネス 「アベルの機体だって、大気圏突入は・・・。いや、理論値ならDRESSで行けるか・・・?」


ボッシュ 「撃てッ! 何としてもアレを破壊しろッ! あんなモノを地球に落とす訳には・・・!」

後方からオデッセイアの攻撃を受けるマトリックス。

クルー 「艦長ッ! 後方から攻撃ですッ! これじゃ狙い撃ちですよ!」

ボッシュ 「やってくれる・・・ッ!」

クルー 「アリスタリウス! 完全に地球の重力に捕らえられました! 本艦はこのまま大気圏に突入します! いいですね!? 艦長!」

ボッシュ 「くっそお! 大気圏突入体制に入れ! ビーム兵器は全部前だ! 実弾で弾幕張って後ろの攻撃に備えろ! いいな! とにかくアリスタリウスを少しでも削るんだッ!」

クルー 「はいッ!」


キャロライン 「あらあら献身的ね。涙が出るわ。・・・さあ、大気圏突入よ。無防備な背中を撃たせて貰うわ。・・・ッ!?」

攻撃を続けるオデッセイアが、激しく揺れる。その背後から、フォートレス化したヴォーテックスが攻撃を仕掛けていた。


テリー 「は。なら、コッチもそうさせて貰うぜ」


キャロライン 「ヴォーテックスッ!? くっ、そう言えばあの機体、単独大気圏突入能力があったかしら・・・」


容赦なく背後から攻撃を浴びせるヴォーテックス。抵抗できない状態のためか、損傷は激しい。

テリー 「無抵抗な敵を撃つってのは趣味じゃねーけどよォ。ま。そこはお互い様って事で」


着艦したサイファー。

ケネス 「九死に一生、ってトコだな。後はアリスタリウスの破壊か・・・」


アリスタリウスの前方。ひたすら撃ち続けるアベル。

アベル 「駄目だッ! いくら何でも! こんな武器ぐらいじゃ・・・!」


オデッセイア。艦の損傷は激しく、艦内にはエマージェンシー・コールが鳴り響く。

ダニエル 「艦長、艦の推進力部ダメージが深刻です。爆発の可能性も高い。総員・・・退艦させます。いいですね?」

キャロライン 「・・・くっ」

ダニエル 「総員退艦! 急げ!」


オデッセイアから小型ポッドが4機、射出される。

テリー 「ち。脱出ポッドが出ちまったら、さすがに撃てねえな。ち。ココからじゃアリスタリウスには遠すぎるッ!」


アリスタリウス前方のアベル。

アベル 「駄目だッ・・・! もう少し! もう少しなんだ!」


マトリックス。

ボッシュ 「どうした!? もって撃て! あと少しだ!」

クルー 「駄目です・・・。弾が、尽きました・・・」

ボッシュ 「なんて、こった・・・!」


アベル 「砕けてよ! 砕けろ! こいつ!」


オデッセイア。

ダニエル 「退艦、ほぼ終了しました」

キャロライン 「・・・ブラントン中尉。まだ艦に余力はありますか?」

ダニエル 「ない、とは言いませんが、時間はありません」

キャロライン 「その時間で海賊艦、撃てる?」

ダニエル 「・・・正気、ですか?」

キャロライン 「狂気かも知れないわ」


撃ちまくるアベル。だが、アリスタリウスは砕けない。

アベル 「砕けろ! 砕けろ! 砕けるんだ!」


オデッセイア。キャロラインが叫ぶ。

キャロライン 「撃って!」

ダニエル 「クソったれぇッ!」

ダニエルの声と共に、オデッセイアの主砲が放たれる。が、その主砲が貫いたのはマトリックスではなく、アリスタリウスだった。

キャロライン 「・・・!?」

ダニエル 「目標・・・破壊」


アベル 「キャロラインさん!? ・・・良かった! やっぱり、キャロラインさんは・・・」

大きく砕けたアリスタリウスを前に、気を失いそうになるアベル。


オデッセイア。

キャロライン 「どう言うこと!?」

ダニエル 「死ぬ時ぐらい、格好良くしたいじゃないですか」

キャロライン 「死・・・」

ダニエル 「こう言っちゃアレなんですけどね。俺みたいな皮肉屋でも、アベルみたいな純情さは持ってるんですよ」

キャロライン 「ブ・・・ブラントン中尉・・・」

ダニエル 「アリスタリウスが降下したら、何万もの命が失われる。それを救ったヒーローが俺っての、悪くないでしょ?」


アリスタリウスが砕けた安心感からか、意識が途絶えかけながらも、アリスタリウスの破片に取り付くアベル。

アベル 「DRESSが保たない・・・! 後は・・・この・・・」

DRESS消失。

アベル 「この破片が、バリュートの代わりになってくれれば・・・」

アベル 「くっ・・・、どうにか・・・、機体が・・・保って・・・」

アベル 「どうか・・・、無事で・・・、みんなも・・・、オデッセイアも・・・」


赤く染まるオデッセイア艦内。

キャロライン 「あなたは・・・ッ」

ダニエル 「処罰なら受けます。・・・もっとも、艦が保てばの話ですけどね」

キャロライン 「・・・保たないのね」

ダニエル 「ぶっちゃけ、そう言う事ですね。この状況じゃ退艦も無理っぽいですし」

キャロライン 「ふぅ。・・・あなたみたいな副官を持った私は不幸ね」

ダニエル 「そりゃお互い様です。ま。死ぬ間際に、美女が傍にいるって夢は叶いましたけどねぇ」

キャロライン 「私の死に際に良い男がいないのは残念だわ」

ダニエル 「いますよ。ここに。何万もの命を救ったヒーローが」

キャロライン 「何万の命より、私を助けてくれるヒーローなら良かったんだけど・・・」

ダニエル 「そりゃ・・・、申し訳ない・・・。これでも・・・ダグラ・・官よ・・・は」

キャロライン 「・ふふ・・うね・・うかも・・・わ」


地球。夜空に無数の流れ星が降り注ぐ。
豪邸の窓から、それをみてはしゃぐ少女。

アリーシャ 「キース! 見て!」

キース 「アリーシャワリー様、まだお休みではなかったのですか?」

アリーシャ 「キース! その呼び方は止めてっ」

キース 「アリーシャ様、これでよろしいですか?」

アリーシャ 「もう! アリスでしょ」

キース 「はい。アリス。・・・それで・・・」

アリーシャ 「ほら! 見て! 流れ星!」

キース (アリスタリウスが・・・、墜ちたか・・・)

アリーシャ 「ね!」

キース 「ええ。綺麗ですね」


真っ青な空。わずかな雲。光り輝く太陽。そして、カモメの声がする。
コックピットで目覚めるアベル。

アベル 「・・・う・・・」

アベル 「・・・空?」

アベルがギルティから出る。ギルティは、砂浜に打ち上げられていた。

アベル 「・・・海・・・、これが・・・、地球・・・」



次回予告

ナレーション 「目的地である地球に落ちたアベル。だが、マトリックスとははぐれ、武器のエネルギーも底をついている。そして、そんなアベルにも容赦なく敵は襲い掛かってくるのだった。次回、『海上の死闘』 Gの鼓動が、今目覚める」

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