アベル 「ヘパイストスとアリスタリウス・・・。セツルメント降下・・・ですか」

ケネス 「ホントにセツルメントを落っことそうとするなら、今度は俺達がエクレシアやハワードのおっさんと戦う羽目になるかもな」

アベル 「敵でも! ザカリアは僕の友達なんだ!」

ザカリア 「教えろよ、オッサン! 俺は弱いのかよッ!?」

エドガー 「生き死にを支配され、生かされて喜んだ。・・・お前には2つの道がある。生を支配する側に立つか、支配される側に立つか」

ハワード 「リカードが逮捕だと?」

ルーシアス 「モレストンがセインの子飼いだとなると、セインの権力は・・・。それに、リカード大将の牽制を失えば、戦火はますます・・・」

シャイロン 「ちょっとした反動だよ。与えられなければ、奪われなかった。奪われなければ、奪い返そうなどと思わなかった・・・。それだけの事だ」


ナレーション 「独立自治権を勝ち取った宇宙移民者群セツルメントは、ようやく得た平和の中に麻痺し、やがては特権主義社会を生み出し、結局は自らが小セツルメントへの圧政を強いるようになる。時に宇宙世紀255年。各地で起きたセツルメント内紛争は、体制側と、反体制側に別れてその共同戦線を張り、大戦へと突入した」

ナレーション 「だがそれは、その陰に潜むユニオンの仕組んだ戦争に他ならない。アベルは、組織に利用されていた真実を知り離反、ユニオンと戦う決意をする。そしてアベル達は、地球最大の守護神の片割れ、ヘパイストス攻略に挑もうとしていた」



タイトル

「ぬぐえぬ犠牲」

− Collateral Damage −



オデッセイア艦内

ダニエル 「・・・ほッ、本気ですか? ヘパイストスを捨てる・・・って」

キャロライン 「本気よ」

ダニエル 「下手な艦隊を全滅させるより・・・、高くつきますよ」

キャロライン 「仕方ないじゃない? セグメントはこの衛星兵器に堕ちて欲しいし、議会軍はセグメントのスレイヴ化に必死で、海賊やエクレシアをそこまでの脅威とは思ってないわ。過信の対価よ」

ダニエル 「そりゃ、ヘパイストスが破壊されれば、議会も本腰を上げるでしょうけど・・・」

キャロライン 「予定より、動かせる兵が少ない以上、戦力を集めての一点防御しかないわ。・・・いつぞやの教訓を活かしてね」

ダニエル 「確かに、連中はアリスタリウスとヘパイストスの両方を破壊しに来るでしょうよ。対抗するにはGが全機あった方がイイ。・・・けど、足並みの揃わない今、アリスタリウスから攻めてきたらどうするんです?」

キャロライン 「コースから考えて、連中が先に狙うのはヘパイストス。予定変更でこちらに来たとしても戦力増強には間に合うわ」

ダニエル 「と、なると、・・・このアリスタリウスが決戦場所か」


ヴァグラント艦内

イブレイ 「そ・・・っ、そんな無茶苦茶な命令があるかッ!?」

パーチ 「昔っから言うからな。人の恋路を邪魔するヤツはってね」

バーナバス 「女の怨みは怖いねぇ。特に美人のはな」

パーチ 「なら、バーナバスは気を付けなくていい訳だ」

バーナバス 「・・・何でだ?」

イブレイ 「き、貴様らっ」

バーナバス 「悪いけど、オレ達、所属を移されちまったんでね。アンタの部下じゃあねえよ」

パーチ 「こういう時、人望がないってのは痛いね」

イブレイ 「貴様ら・・・」

バーナバス 「俺達はアリスタリウス行きなんでね。長官はヘパイストスの防衛を頑張ってください」

パーチ 「ご武運を」

イブレイ 「く・・・、くそ。なんて事だ・・・」


シュルツ邸

ルーシアス 「先生のそんな緊張した顔は、初めて見ますよ」

ハワード 「お前はまだ、シュルツ元議長を知らんからな。・・・お前は席を外すか?」

ルーシアス 「知らない今だから、こんな軽口を叩けるんです。先生を緊張させるほどの人を見ない訳にはいかないでしょう?」

ハワード 「ふン」

秘書 「お待たせいたしました。どうぞ、ご案内させていただきます」

ルーシアス 「はい。お願いいたします」


マトリックス・ドック。

ハインツ 「冗談じゃねえよ」

テリー 「まあ、そうカッカしなさんなって。実力で言えば、お前サンが一番格下なのは自覚できてンだろ?」

ハインツ 「うるせえよ。金で雇われてる身分なんだから大人しくしてろ」

テリー 「金で雇われてるから、任務を遂行したいのさ。それに、オレも生き残りたいしな」

ハインツ 「だったら、余計に渡せないね。ヴォーテックスを持ち逃げされちゃかなわない」

テリー 「ま。オレなら成功率の高い方に賭けるがね」


アン 「どしたの?」

ハインツ 「アイツ、ヴォーテックスのパイロットを替われッて言ってきた」

アン 「ふうん」

ハインツ 「ふ、ふうんって、スナン! ソレだけかよっ!?」

アン 「だってアンタ、自称エースパイロットなんでしょ?」

ハインツ 「あ、当ッたり前だッ」

アン 「マシンの性能じゃないんなら、替わってあげたら?」

ハインツ 「そ・・・っ、いや、だけどよっ! ヴォーテックスは最高機密なんだぜっ、何処の馬の骨ともわからない傭兵に・・・」

アン 「それもそうね」


マトリックス作戦室

ボッシュ 「それでは、よろしく頼みます」

ベッペ 「こちらこそ、よろしく頼みますよ。救世主どの。あんたがたがいなけりゃ、俺達はこの場にいられなかった」

ボッシュ 「ですが、正直、分の良い賭けだとは言えません。極力、被害は少なくして下さい」

ベッペ 「次のアリスタリウスもあります。ここで討ち死にするわけにはいきませんよ」


同室、作戦を聞いている2人。

ケネス 「どうした? アベル」

アベル 「エクレシアの人たちって・・・、要はオトリですよね」

ケネス 「ああ。俺らがヘパイストスを破壊するための撒き餌だな」

アベル 「それが・・・作戦・・・なんですね」

ケネス 「そうだ。敵を全滅し、100人が100人とも助かる方法を考えるのが作戦じゃない。100人のうち、1人を犠牲にして99人が助かるなら、それを決断するのが作戦だ」

アベル 「・・・わかってます」

ケネス 「敵味方、どっちもの犠牲を減らしたいなら頑張ンな。早く決着を付けるに越した事はない」

アベル 「そ・・・、そう、ですね」


ボッシュ 「よォし! 作戦決行は3時間後! 各員! 準備に入れ!」


シュルツ邸

ルーシアス (いよいよ・・・)

秘書 「失礼いたします」

ハワード 「ご無沙汰しております、シュルツ先生」

ルーシアス (この人が・・・、シュルツ元議長・・・)

シュルツ 「ああ。実に久方ぶりだが、今日は挨拶よりも大事な用で来たんだろう?」

ハワード 「はい」

シュルツ 「・・・やるのかね」

ハワード 「はい。・・・先生の議長時代に成し得なかった大儀を、不肖のわたくしめが継ごうと思います」

シュルツ 「君は、私にとって最高の生徒だった。後にも先にも、君以上の生徒には出会っていない」

ハワード 「いえ、今の私がありますのは、先生が各所、各ポストに人材を配置していてくれたお陰です」

シュルツ 「とうとう、この日が来たか」

ハワード 「はい。・・・最後に、先生の許可を頂きたく、参りました」

シュルツ 「うん。君が決めたことなら、私の許可など要らない。どうせ、君のことだ。反対しても決行するだろう」

ハワード 「はい。この時刻ですと、NOと言われても間に合わない時間になっています」

シュルツ 「ふむ。それでいい。・・・だが、世界は荒れ、多くの人が死ぬだろう。あるいは君が、人類史上最大の災厄を招いた男になるかも知れない。・・・私には力よりも、その覚悟がなかったのかも知れない」

ハワード 「覚悟は、出来ています」

シュルツ 「そうだな。愚問だった」

ハワード 「政治・経済・治安、その全てを崩壊させてでも、・・・ユニオンを解体します」

シュルツ 「・・・しばらく見ないうちに、怖い顔になったね。実に人相が悪い」

ハワード 「色々と・・・、悪い事をしてきましたから」

シュルツ 「君、名前は?」

ルーシアス 「ルーシアス・・・、ダルジェントです」

シュルツ 「いい顔をしている」

ルーシアス 「ありがとうございます」

シュルツ 「このハワードもね、35年前は君のように若々しく、真っ直ぐで純粋な青年だった。もちろん、こんな悪人面でもなかった」

ハワード 「勘弁してください」

シュルツ 「ルーシアス君。・・・35年後の君が、こんな人相にならないで済む世界を、ハワードは作ってくれる」

ルーシアス 「はい」

シュルツ 「学べよ」

ルーシアス 「は、はい」


マトリックス

ボッシュ 「いいかッ、てめえら! エクレシアの連中がドンパチやって攪乱している間に、ヘパイストスを破壊するんだ! 確実にだ!」

ケネス 「何度も言わなくても分かってるって・・・。サイファー、行くぜ」

テリー 「何度も言わなきゃならない内容でもあるまいに。・・・テリー・カティアール、出るぞ!」

アベル 「アベル、ギルティ! 出ます!」

ハインツ 「ハインツ、アイヒマン! 行くぜ!」



アイキャッチ
アイキャッチ「G−GUILTY」


ヴァグラント・ブリッヂ

イブレイ 「手許に一機のGもなく、連中を相手にヘパイストスを死守しろだと!? あの女! くそっ! ディベラ特使の娘というだけで! ふざけやがって!」

兵士 「ちょ、長官・・・、どうしますか?」

イブレイ 「何だ!?」

兵士 「エクレシアの艦隊と思われる影を、キャッチ、しました」

イブレイ 「は・・・、とうとう来たか」

兵士 「そ、それで、その・・・」

イブレイ 「ふン。・・・ゲリラが大手を振って攻めて来てるって事は、海賊どもはもう、このすぐ傍にいるって事だ。ヘパイストス司令部に連絡してやれ。・・・”手遅れだ”とな」

兵士 「は。しッ・・・しかし・・・」

イブレイ 「ふン。我が艦は特命を受け、アリスタリウス守護のため、移動を開始する。ヘパイストス司令部に連通達しろ。”ご武運を”とな」

兵士 「ちょっ、長官・・・!?」

イブレイ 「貴様は、こんな所で沈みたいか?」

兵士 「い、いいえ。そ、それは勿論・・・」

イブレイ 「だったら、黙って命令に従え。ダグラスの脱走に比べれば可愛い罪で済むぞ?」


ヴァグラントから出発した小型艇

バーナバス 「おーお、始まったな。イブレイ長官も可哀想に」

パーチ 「運がなかったんだ」

バーナバス 「あの美人艦長サマに関わったのが悪かったのかもな」

パーチ 「だったら、オレらも危ないな」

バーナバス 「違ぇねえ。・・・どうした?」

パーチ 「・・・いや」

パーチ、ヴァグラントが離脱した可能性に気付く。


戦闘区域のアベルたち。
ハインツ 「さすがにウジャウジャわいて来やがるッ」

ケネス 「の割に・・・、やたらと警備が薄いじゃねえか」

テリー 「地球の守護神様がこうもあっけないと・・・」

アベル 「罠、ですか?」

ケネス 「かも知れねーな。・・・けど、だからって」

アベル 「止まる訳には行きません! ですよね」

ケネス 「そう言うこと。テリー、遅れてるぞ!」

テリー 「ちっ、機体の能力差を考慮しろってえの」

ハインツ 「パイロットの能力差でカバーしろってぇの」


ヴァグラント・ブリッヂ

兵士 「よ、よろしいのですか・・・、参戦・・・しなくて」

イブレイ 「したいのか? 犬死にしたければ1人で行け」

兵士 「い、いえ。・・・ですが」

イブレイ 「貴様も私に歯向かうのか? あ?」

兵士 「め、滅相もない」


マトリックス

ボッシュ 「やけに・・・、ぬるいな。・・・罠、か?」


ヘパイストスの内部へと突入する4機。

アベル 「でも、罠にしちゃ・・・」

ケネス 「動かす兵の数が多い!」

ハインツ 「俺達が強すぎるンじゃないの?」

テリー 「・・・コイツがブービー・トラップでなきゃ・・・」

アベル 「なければ、何なんです?」

テリー 「ヘパイストスは破棄された」

ハインツ 「なッ!?」

ケネス 「衛星兵器一基を捨てて、防衛ラインを固めた?」

テリー 「へへっ、バケモノみたいなマシンが出てないのは、そう言う事だろ?」

アベル 「なら! 一気に突っ込んでコントロールを叩きます!」

ケネス 「まだ罠の可能性は捨て切れねえッ! 突っ走るな!」

テリー 「調子に乗って大爆発させンなよ? 一歩間違えば地球に落ちるんだぜ?」

アベル 「大丈夫です!」


アベル 「ココさえ叩けば!」


ヴァグラント・ブリッヂ

兵士 「へ、ヘパイストスが・・・」

イブレイ 「沈む、な」



ヴァグラントから出発した小型艇

パーチ 「陥落だ」

バーナバス 「おーお、綺麗な花火だぜ。見事に構造がバレてるね。弱点をピンポイントだ」

パーチ 「・・・ああ」


エクレシア艦内。

ベッペ 「やった、か」


暗闇の中

カイン 「やったねぇ」

オルダス 「出番だってか」

カイン 「ヘパイストスの心臓が破壊されるのは必然だろ。だったら、あいつらが背を向けた瞬間がチャンス・・・」

オルダス 「ま。俺は戦えるなら文句は言わねえさ。上司命令だ」


ヘパイストス内部

ハインツ 「やったぜ!」

テリー 「へへっ。まぁ、ここがぬるい分だけ、次でしっぺ返しが待ってる訳だが・・・」

ケネス 「アベル! 応答しろ! 撤退するぞ!」


アベル 「はい! 了解です! ・・・え?」

アベルの表情が曇る。


ハインツ 「え?」

驚くハインツ。

ヴォーテックスのコックピットを有線のJAC兵器が握りつぶしていた。

ケネス 「ハイン・・・っ!!」

ハインツ 「お、・・・あれ、俺・・・」

ゆっくりと現れるサテュロス。

カイン 「あは。・・・まずは、一機」

ケネス 「ハインツ! この赤いヤツ!」

テリー 「あのモンスターマシン!」


アベル 「お前かぁっ!」

カイン 「ここでまとめて! キレイにそそいでやる! 宇宙なら鈍足のハンディキャップはないッ!」

ケネス 「デカブツっ!」

割り込んでくるブレイズ。

オルダス 「おーっと、お前の相手は俺だぜ?」

ケネス 「オルダスか!」

オルダス 「ウチの上司がね、次の決戦まで待ってられないってよ」

ケネス 「知った、ことか!」

テリー 「援護する!」


アベル 「こいつ! ハインツさんを!」

カイン 「な、なんだよ。こんなの・・・、」

偏光領域とJACを発して防衛するサテュロスを、ことごとく切り崩していくアベル。

アベル 「もしも! もしもハインツさんが無事じゃなかったら!!」

カイン 「うそ、だろ・・・。こんな、僕は、天才なんだぞ?」

防戦一方どころか、後退を余儀なくされるサテュロス。

アベル 「絶対に! 許さない」

カイン 「くっ、くそ! オルダス! ヴォーテックスを回収して撤退するぞ!」

オルダス 「ちっ。またしくじったのかよ、ボーヤ」

カイン 「はやくしろ! オルダス!」

アベル 「逃がすもんか!」

ケネス 「何処に行こうってんだ!?」

オルダス 「上司命令なんだよ」

ブレイズ、動かないヴォーテックスをつかんで逃げ去ろうとする。

ケネス 「っ! アベル! ヴォーテックスを回収しろ! 機体を奪われる訳にゃ・・・!」

アベル 「ハインツさんは渡しません!」

ギルティですぐに追いつく。

オルダス 「ちいっ! 荷物付きでコイツが相手じゃ・・・」

ヴォーテックスを奪い返すが、今度はギルティの動きが鈍る。

ケネス 「アベル! やり合うな! 回収を最優先しろ!」

アベル 「う! は・・・、はい」

テリー 「ふう・・・。撤退、してくれたか・・・」


マトリックス・ドック
コックピットが潰されたヴォーテックスを呆然と見ているアン。

アン 「なによ、コレ・・・」

ボッシュ 「見るんじゃない」

アン 「ちょっと、どういう・・・」

ボッシュ 「コックピットを直撃されてる」

アン 「直撃ってナニよ? あの馬鹿・・・直げ・・・」

ボッシュ 「行くんじゃない」

ボッシュ、アンの腕をつかんで止める。

アン 「ウソだ。だって、ほら、ハイン・・・」

ジーン達がコックピットから担ぎ出してくるハインツの肉体。

アン 「あ、・・・ああ、あっああああ・あ・あ・あ・あっ、あ」

その場にうずくまるアン。

アン 「・・・だってアンタ、・・・自称エースパイロットなんでしょ?」

ハインツ (あ、当ッたり前だッ)

アン 「マシンの性能じゃないんなら・・・、替わって・・・あげたら?」

アン 「・・・あ、あ・ああ・あ・ああぁ」


テリー 「コックピットの被害は何とかなりそうなんだな? 次にゃ、俺が乗るんだ。整備と修理はキッチリ頼むぜ」

ボッシュ 「重要な話なのはわかってるが、今は口を慎め」

テリー 「へ、了解。俺が死んでも泣いてくれよ」


ケネス 「・・・・・・」

黙ったまま、ハインツの遺体にシーツを掛ける。


ギルティの足元でうずくまるアベル。シャヒーナが傍にいる。

アベル 「・・・・・・」



次回予告

ナレーション 「死んでいった者の怨念が呼ぶのか、それとも、生き残っていくための執念が呼ぶのか。カインとザカリアはアベルの幻影を見、アベルはハインツの亡霊を見る。それぞれの思いを断ち切って、人は幻影を振り切ることが出来るのか。次回、『幻影に踊る』 Gの鼓動が、今目覚める」

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