ナレーション 「独立自治権を勝ち取った宇宙移民者群セツルメントは、ようやく得た平和の中に麻痺し、やがては特権主義社会を生み出し、結局は自らが小セツルメントへの圧政を強いるようになる。時に宇宙世紀255年。各地で起きたセツルメント内紛争は、体制側と、反体制側に別れてその共同戦線を張り、大戦へと突入した」

ナレーション 「だがそれは、その陰に潜むユニオンの仕組んだ戦争に他ならない。アベルは、組織に利用されていた真実を知り離反、ユニオンと戦う決意をする。そしてアベル達は、地球最大の守護神、ヘパイストスとアリスタリウスに迫りつつあった」



タイトル

「生存闘争」

− Teach Us To Survive −




船内の窓から、移動するゲリラの艦隊を眺めている。

シャヒーナ 「すごい・・・、数ね」

ハインツ 「これで、全体の1/3だってよ」

ケネス 「月周辺は地球への不満が少ないからなァ。反政府勢力の数は多くない」

シャヒーナ 「? ・・・多くないのに、これだけの数が?」

ケネス 「人口の違いや、財力の違いもあるが、この戦争をリアルに感じてない連中も多い。言い方は悪いが、煽れば集まる連中は多いって事さ」

アベル 「それでも、これだけの数が集まってくれるって、頼もしいですよ」

ケネス 「質より量とは言わんが、数は武器になるからな。問題は、その数を圧倒するGの性能だ・・・」

アベル 「僕たちの目的がわかってる以上、必ず待ち伏せてますよね」

シャヒーナ 「せめて、目的地までは無事だといいわね」

ハインツ 「ったくだ。せっかく月についたと思ったのに、護衛だなんだで一息つく暇もねえのかよ」

ケネス 「文句言うな。次のターゲットは大捕物。俺らだけの力でどうにか出来るシロモノじゃない」

アベル 「ヘパイストスとアリスタリウス・・・。オケアノス以上の脅威なんですか?」

ケネス 「ま。似たようなモンだ。ただ、アレがエクレシア最大の武器を封印しちまってる」

アベル 「セツルメント降下・・・ですか」

ケネス 「そ。アレがなくなれば、人工的に隕石をどんどん落として、地球はあっという間にオダブツって手段が使えるようになる。あくまで抑止力だと信じたいがな」

アベル 「それが、抑止力にとどまらなかったら?」

ハインツ 「良かねえさ。・・・だけど、そうでもしないと、宇宙と地球は同じテーブルに座って話が出来ない」

ケネス 「それでもし、ホントにセツルメントを落っことそうとするなら、今度は俺達がエクレシアやハワードのおっさんと戦う羽目になるかもな」


執務室

ルーシアス 「あの、先生」

ハワード 「・・・なんだ?」

ルーシアス 「予定表・・・、問題なく消化してますけれど」

ハワード 「問題あるのか?」

ルーシアス 「いいえ。ただ、そのシュルツ元議長との面談だけが先送りになってます。それも・・・」

ハワード 「シュルツ元議長か。・・・鬼門だな」

ルーシアス 「それほど厄介な人物なのですか」

ハワード 「今は完全に隠居の身だが、根回しもなしに、一声で300からの政治家が動く。ヴァンスタイン理事長など足元にも及ばんよ」

ルーシアス 「それは・・・」

ハワード 「会えばお前にもわかる。どうせ次には必ず、会わねばならん」

ルーシアス 「は、はい」

ハワード 「それより今は、ヘパイストスとアリスタリウスだ。ゲリラとあの海賊どもがうまくやってくれればいいがな」

ルーシアス 「きっと、うまく行きますよ。そのために沢山のエクレシアを動かしたんです」

ハワード 「確かに、月と地球では、金次第で思想だろうと兵隊だろうと正義だろうと、簡単に買える。火星と違ってな」


再び船内。

ハインツ 「へへ。悪くないんじゃない? 正義のために戦うってよ」

アベル 「・・・つまり、僕たちが正義を決めてるって事ですか?」

シャヒーナ 「その危険性はあるわね。・・・ハワードって人が善人にも思えないし」

ケネス 「善かどうかを戦争の状態で示すなら、そうやって、ミリタリー・バランスをコントロールしてきたのがユニオンそのものだからな。ユニオンに正義がないとは言えない」

アベル 「・・・そんな」

ケネス 「ハワードのおっさんがユニオンをぶっ潰した後、宇宙は大恐慌に見舞われるかも知れない。戦争をしてた方がマシだって時代は実在する。事実、だから戦争なんてモノが起きる」

シャヒーナ 「死なない程度に、ひもじい生活を強いるのが良い政治だと言うならね」

ケネス 「それが良い政治じゃないと思うから、俺達は今ここにいる。例えば今回、俺達はエクレシアと共同作戦に入る。俺達だけじゃ、ヘパイストスを落とせないからな」

ハインツ 「その結果、まず間違いなく戦死者は増えるだろうな」

シャヒーナ 「でもそれが、圧政で苦しむ人々の救済になる、・・・かも知れない」

アベル 「割り切れ・・・ませんね」

ケネス 「・・・アベル、お前は20年後、殺人鬼になるとわかってる赤ん坊を殺せるか?」

アベル 「そんなのッ、必ず殺人鬼になるなんて事はありませんよ」

ケネス 「そうだな。だけど、その赤ん坊を殺すのが政治だ。そいつが殺人を犯してから困らないようにな」

アベル 「殺人犯にならないように育てれば・・・!」

ケネス 「ま。被害はないに越した事ァないがな。ゼロってのは現実的に無理だ。だから、極力ゼロに近付ける」

アベル 「・・・ゼロに、近付ける・・・」


再び執務室。

ルーシアス 「こちらがそれと目されている人物です」

ハワード 「ギルバート・ゲノック・・・、ふン。あのミラマンの後輩か」

ルーシアス 「フォルビシュ中将を擁立し、エクレシアのナディア・デイビスを立役者に、パーノッド派と手を結びました」

ハワード 「この、クブラカンを名乗る男・・・、離反行為はユニオンの意志に無関係だと?」

ルーシアス 「はい。まだ情報が少ないので断定は出来ませんが、ほぼ間違いなく」

ハワード 「手際はまず悪くない上に、まだ危険視はされていないな・・・。ブライレントを接触させろ。手駒として使えないようならユニオンを使って潰させるんだ。名目はナディア嬢の奪回でいい」

ルーシアス 「はい。通達します」

ハワード 「うむ。それと・・・、」

ルーシアス 「はい」

ハワード 「セグメントでリカード派にいるこの男に接触してくれ」

手渡された書類の写真にクローズアップ。その写真のまま次のシーンへ。


ルクレール 「ひとつ、お訊ねしてよろしいでしょうか」

シャイロン 「何だね、改まって」

ルクレール 「将補と私は、一体、何の組織に属しているのですか」

シャイロン 「ふ。ふはは。面白いことを聞く。質問が不明瞭だな。君らしくもない」

ルクレール 「では、ハッキリと聞きます。我々は、セグメント・フォースですか? それとも、ユニオンなのですか!?」

シャイロン 「セグメントだよ。そして、セグメントはユニオンの下位組織だ。こう聞けば満足かね」

ルクレール 「ですが、セグメントの意志とユニオンの意志は同一ではありません」

シャイロン 「エリートコースを歩んだ君にはわかるまいが・・・。組織というものは一丸であるべきだが、時として、組織内組織を争わせたり、潰したりする事もある。それだけの事だよ」

ルクレール 「軍は、民を守る存在であり、民を脅かす存在ではありません」

シャイロン 「無知厚顔な愚民には、我々に守られているという意識もない。だから叛乱など起こす。わかっていないのだよ。愚衆の乗る船の舵取りが、いかに大変かと言う事さえね・・・」

ルクレール 「しかしッ」

シャイロン 「それに、ユニオンとセグメントの意志が同一でないように、組織と私の意志も共通ではない。・・・わかるな?」

シャイロン、書類を手渡す。

ルクレール 「ッ! ・・・これは・・・本気なのですか!?」

シャイロン 「無論だよ。そのために、わざわざ地球へ来た」

ルクレールの持つ書類の写真にクローズアップ。



アイキャッチ
アイキャッチ「G−GUILTY」

オデッセイアへの合流を急ぐ小型艦。
モニターに話しかけるエドガー。

エドガー 「小僧・・・。何のつもりだ?」

モニターの向こう、ビハインドのコックピットに入っているザカリア。

ザカリア 「戦況は刻一刻と変化してる。そう教えてくれたのはおっさんだぜ」

エドガー 「最優先任務は、合流の筈だ」

ザカリア 「その合流先に向かうエクレシアを見つけたんだ。黙って見過ごすのは利口じゃねーだろ」

モニターに、ゲリラ艦隊。

エドガー 「利口じゃないお前は、ただ暴れたいだけだろうが」

ザカリア 「へへっ、ブースターと推進剤は借りてくからさ。おっさん! 半日遅れぐらいは誤魔化してくれよっ」

ビハインド、出撃。

エドガー 「ふン。血の気の多いガキだ」


ザカリア 「へっへ、のんびり、おっさんと2人で船旅なんてな、俺の性に合わねェんだよ!」

ビハインド、エクレシア艦隊へと突入していく。

ザカリア 「ヴィジョネイトはオフにしてやるから、俺に暴れさせろ!」

突然の爆発に、艦隊が動揺する。

兵士 「うわっ! てっ敵! 敵襲だ!!」

兵士 「お、応戦しろ! これは演習じゃないぞォ!」


窓の遠くで、閃光。

ハインツ 「なんだ!? あの光!? まさか、敵襲!?」

ケネス 「隠密で動いてるってのにあの光はそう言うコトだろ!」

既に出撃準備を始めるケネス。

ハインツ 「ちっ、遠いッ! 来るなら前かと思ってたら最後尾かよッ」

アベル 「行きます! ギルティなら最速ですから!」

ヘルメットを抱えて部屋を出るアベル。


ザカリア 「へっへっへっ、もっともっと抵抗してくれないと、船より退屈であくびが出るぜェ」

何台かのマシンが出撃するが、待っていたかのように囲ませた所を一蹴するビハインド。

ザカリア 「はっは! 悪いけど・・・、性能も才能も、こっちの方が上なんでね!」


アベルのギルティが戦闘区域に到達。
破壊行為を楽しむザカリアがレーダーの反応に気付いて回避。

ザカリア 「へっ! 来やがったかい!」

アベル 「ビハインド! ザカリア!」

ザカリア 「アサルト!? 違う!? アベルか!」

アベル 「ザカリア!! ザカリアは知ってたはずだ! グレイゾンが何をしようとしてるか! なのにどうして!」

ザカリア 「へっ、へへ。何を寝惚けてンだ? お前。だから成績ばっかり良くて馬鹿なんだよ」

交戦しながら会話する2人。

アベル 「馬鹿でも、人を苦しめてまで生きていきたくはない!」

ザカリア 「だったら死ね! オレが殺してやるよ! そうやって正義を振りかざして人を苦しめてるのはお前の方だろうが!」

アベル 「苦しめる!? 苦しめてるのはユニオンの方じゃないか!」

攻めているのはビハインドだが、概ね、余裕を持って防ぎきるアサルト。
ザカリア 「ば〜か! 小賢しい正義で救えないより、絶対的な権力に庇護される方が利口なんだよッ」

アベル 「そんなことッ! 庇護から出してみないとわからないじゃないか!」

ザカリア 「そうやって失敗してからじゃァ、遅いンだよ!」

アベル 「失敗なんかさせない!」

ザカリア 「けっ! お前と議論するために来たんじゃネエよ! 墜ちやがれ!」

攻撃を激しくするが、あっさり防がれるビハインド。

アベル 「僕はザカリアを墜としたくないんだ! なんでわかってくれない!」

ザカリア 「てっめェ! 舐めたクチきくじゃネエか! 墜とせる前提で話してンじゃねえぞコラ!」

ビハインド、ヴィジョネイト装甲を発動して宇宙の闇に溶ける。

アベル 「消えても・・・!」

アベル、消えたビハインドの位置を的確に攻撃する。

ザカリア 「コイツ!? 見えてやがるのか! なら、ダミーで!」

ホログラムを打ち出すが、アベルはそれを一切無視して、消えたビハインドのみを攻撃する。

アベル 「ザカリアが何処にいても・・・!」

ザカリア 「新型のセンサーでも付いてるのか!? 何で見える!?」

ザカリアの表情に焦燥。

アベル 「くッ! ごめんザカリア!」

アベルの攻撃が、ビハインドの四肢を破壊する。

ザカリア 「ご、・・・てめえっ、ごめんって! てっ、てめえっ! ご・・・」

アサルトのレーダーにヴォーテックスとサイファーが確認される。
仕留めの一撃を構えた状態で、アベルが叫ぶ。

アベル 「撤退して!」

ザカリア 「・・・な・・・っ」

アベル 「僕はザカリアを殺したくない! ザカリアは僕の友達なんだ! 戦線から離脱して! もうこの戦争には関わらないで!」

ザカリア 「く、くそぉッ! 俺が! 俺があしらわれた!? この俺がか!? 俺がかよッ!」

ザカリア、破壊されたビハインドを器用に動かして撤退。

アベル 「・・・お願いだ、ザカリア。もう・・・」


戻ったマトリックス艦内。
ハインツがアベルを殴り飛ばす。

ハインツ 「アベルっ! てめえッ、敵を仕留められるって時に何で逃した!?」

アベル 「敵でも! ザカリアは僕の友達なんだ!」

ハインツ 「友達でも敵なんだよ! それも厄介なGとそのパイロットだ! なんて墜とさなかった!?」

アベル 「だけど! Gシリーズには脱出機構がないんだ!」

ハインツ 「だからどうした!」

シャヒーナ 「ハインツが正しいわ、アベル」

アベル 「だけど!」

ハインツ 「それ見ろ!」

ケネス 「落ち着け、ハインツ。少なくともしばらくの間、ビハインドが戦線に出られない。それだけでも大きな拾いモノだろ」

ハインツ 「アベルの肩もつのかよっ」

ケネス 「落ち着け。俺も、アベルが正しかったとは思ってないが、損害が出た訳じゃない。むしろ利益だって話だ」

ハインツ 「そりゃ・・・、そうだけどよ。見損なったぜ、アベル」

アベル 「だって! 敵でも! 僕には友達なんだ!」

ハインツ 「けっ、俺だってお前の友達でいたつもりだったけどな。そう思うのはココまでにしとくよ」

吐き捨ててきびすを返すハインツ。

アベル 「あ・・・。あ・・・そうじゃ・・・」


小型艦内。

エドガー 「随分と早い凱旋だな、小僧。・・・それに、随分とイイ面だ」

ザカリアが泣きそうな、悔しそうな顔。

ザカリア 「俺は・・・」

エドガー 「わざわざ噛み付きに行って、噛まれて帰ってきました、か」

ザカリア 「くッ・・・、お・・・、俺は、弱いのか?」

エドガー 「くっく」

ザカリア 「教えろよ、オッサン! 俺は弱いのかよッ!?」

エドガー 「・・・脆いな」

ザカリア 「くッ!」

エドガー 「お前、悔しいか?」

ザカリア 「当た、当たり前だろ! 俺が、あんな坊ちゃんにまける訳が!」

エドガー 「違うな。お前は、喜んだんだよ」

エドガーが愉しそうに言う。

ザカリア 「ハァ!? 何言ってんだ?」

ザカリアがいつもの調子で怒鳴る。

エドガー 「認められないのか? お前は、自分より強い相手に叩きのめされ、死の恐怖を味わってブルブル震え上がり、命を助けて貰って喜んでるのさ」

ザカリア 「ばっ・・・馬鹿言えッ・・・お、俺は・・・」

エドガー 「小僧」

ザカリア 「・・・っあ」

エドガー 「生き死にを支配され、生かされて喜んだ。・・・お前には2つの道がある。生を支配する側に立つか、支配される側に立つか」

ザカリア 「・・・おっさんっ、俺は・・・」

エドガー 「死にたくないだけなら、媚びへつらうって道もあるぜ」

ザカリア 「・・・俺は・・・ッ!!」


セグメント・フォース

リカード 「・・・何の、真似だ?」

兵士 「閣下への、逮捕状が降りています」

リカード 「どう言うことだ。説明しろ」

兵士 「主な容疑は、先のセツルメント降下での、エクレシアへの指示です」

リカード 「私が・・・、切られるとはな。油断した。誰の差し金だ?」

兵士 「モレストン陸将です」

リカード 「あの腑抜けに、そんな大それた真似をする訳がない・・・。シャイロン・チェイ・・・、奴か」

兵士 「ご同行・・・願います」


執務室。

ハワード 「リカードが逮捕だと?」

ルーシアス 「まだニュースにはなっていませんが、確実です。憶測では、後任はモレストン陸将だと」

ハワード 「ふン。セインの仕掛けだな」

ルーシアス 「モレストンがセインの子飼いだとなると、セインの権力は・・・。それに、リカード大将の牽制を失えば、戦火はますます・・・」

ハワード 「解せんな。セインがどれほど好戦的な低脳であれ、ここまでの全面戦争を望むはずはない・・・」


ルクレール 「長官は・・・、一体・・・」

シャイロン 「ちょっとした反動だよ」

ルクレール 「は・・・」

シャイロン 「与えられなければ、奪われなかった。奪われなければ、奪い返そうなどと思わなかった・・・。それだけの事だ」

ルクレール (この男は・・・)

シャイロン 「私は生殺与奪を他人に委ねられ、それでも生き延びた。ならば、今度は私の番だよ。連中の・・・、人類そのものの生殺与奪を私が握る・・・!」



次回予告

ナレーション 「ついに決行されるヘパイストス攻略。だが、思ったよりも脆い、その防衛網にアベル達は戸惑いを隠せない。果たしてこれは罠なのか、それとも・・・。次回、『ぬぐえぬ犠牲』 Gの鼓動が、今目覚める」

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