ジーン 「俺も、あンたがグレイゾンを抜けるとは思いませんでしたよ」

アベル 「・・・マシン、借ります」

AJ 「ああ。君なら乗りこなせる」

アベル 「操縦系統はソードケインとほとんど同じか・・・。これなら・・・何とか・・・」

アベル 「・・・DRESS発動!」

キャロライン 「・・・アレックス・・・。運に見放されたあなたは牙を剥いたわ・・・。だったら、あなたに見捨てられた私も牙を剥く・・・。それで帳尻合わせ・・・。よくある愛情の終わりなんて、こんなものかしら・・・」



タイトル

「狭き門」

− narrow gate −



マトリックス・ドック。機体の各部をバラされて、機械やフレームが露出しているソードケイン。

シャヒーナ 「少し気の毒ね」

アベル 「そうだね。でも・・・」

振り返ると、ソードケインのパーツや装甲で補強されたアサルト。

ジーン 「よーし、接合は丁寧にな。手ェ抜くんじゃあネエぞぉ! 一瞬で剥離するからなッ」

ジーン 「・・・ま。足りないパーツは月で補充してもらうとして、これで何とか動いてくれるか・・・ん? どうした?」

アベル 「あのっ、頼んでた出力調節の件なんですけど・・・」

シャヒーナ 「調節?」

ジーン 「ああ。ご注文通り、DRESSの出力は落とした。その分の出力は機動力に回してる。これでコイツはソードケイン以上に動けるはずだ」

アベル 「ありがとうございます」

ジーン 「活動限界時間も従来の3倍は延びてる。・・・それに、出力が落ちたとは言えDRESSは健在だ。下手な偏向領域よりは効果がある。・・・あとは、お前さんがどこまで直撃を避けられるかに掛かってる」

アベル 「はい。今度は、壊しませんから」

ジーン 「そう願うぜ。だが、忘れるな。今はまだ応急処置でしかない。前回みたいな体当たりは、もうよしてくれよ。ただでさえ金食いマシーンなんだ。修理費用で飢え死にしちまう」

ケネス 「その横ッ腹の肉の蓄えなら、しばらくは死にそうにないけどな・・・」

ジーン 「うっせえよ。こりゃ筋肉だ!・・・ん? どうした? 二人して」

ハインツ 「うえッぷ」

ケネス 「アサルトのデータをシュミレーターに放り込んで試運転。・・・10分でグロッキーだ」

ジーン 「ハインツはともかく、お前でもか」

ハインツ 「ともかくって何だよッ! 乗ってから言えよッ! 平気なアベルがフツーじゃないんだよッ」

ケネス 「ま。自称エースパイロットの2人が、10分足らずのシュミレートでこのザマだ・・・。こんなモンスター・マシンを乗りこなせるアベルはもとより、コレに乗って逃げた元長官殿にも感服するぜ。実のところ、あのおっさんも、普通じゃないな」

アベル 「・・・」

シャヒーナ 「確かに、突撃って名前には相応しいのかも・・・」

ジーン 「まァ、今のコイツは、アサルトと呼ぶにゃ、ちっとばかしDRESSの機能が失われすぎたがな」

アベル 「あの・・・、機体に、名前付けてイイですか?」

ジーン 「あ? ああ。まあ、うん。好きにしろ」

アベル 「はいっ」

シャヒーナ 「・・・名前?」


オデッセイア・ブリッヂ。

ダニエル 「で。艦長、どうします? ザカリアとエドガーの合流まで待てば、前方艦隊との挟み撃ちには間に合いません」

キャロライン 「戦力を整えて遅れるか、戦力不足で追いつくか・・・。有能な副官のご意見は?」

ダニエル 「地球圏到達阻止を第一目的にするなら、追いつくことが優先でしょう」

キャロライン 「それで、戦力的に、勝てる見込みは?」

ダニエル 「ここは、勝つ所じゃないと考えて下さい。連中の目的はまず、月セツルメントへの到達が目的でしょう。今、この位置からのコース変更は困難でょう。補給も然りです」

キャロライン 「つまり、持久戦へ持ち込め、と」

ダニエル 「いいスか? コレは概算ですが、連中が目指すのはラグランジュ2のコア3です。・・・ここ、交戦がわずかに長引くだけで、月とセツルメントは衛星軌道上を回ります。・・・てぇコトは、連中は、目的地に・・・」

キャロライン 「たどりつけない」

ダニエル 「戦力を整えるのは、それからでも遅くないでしょ」

キャロライン 「だとしても、この距離は埋められて?」

ダニエル 「海賊は前方の進路妨害を排除するだけで精一杯のはずです。我々はテイルトゥノーズで物理的に速度を稼げますからね。足止めだけなら充分に可能です」


セグメント艦。ドック。

ドックに佇む、二機の新型フォートレス。

Gブレイズと、サテュロス。

ウィリー 「補給は有り難いですがね。どれだけ兵器や兵士を投入しても、戦力不足ってヤツは解消されませんよ、マーヴィン」

マーヴィン 「人前でマーヴィンはよしてくれ。・・・老練兵である君ならではの意見だ・・・が、今回の助っ人は別だよ」

ウィリー 「何が別なんです? 最新機だからって、フォートレス2機で戦況が変えられるなんてのは幻想ですよ。第一、実績を上げていない最新機なんてのは・・・」

マーヴィン 「なら、救世主はどう説明する? それと同等の性能だとしてもか?」

ウィリー 「・・・同等?」

マーヴィン 「あくまで噂の域を出ないが、救世主はAE社が作っている実験機らしい。コイツが、それと同等の最新機だとしても?」

ウィリー 「ハ。誰が操縦するんです? パイロットが新しい機体に慣れるまで、どれほどの訓練機関を要すると?」

マーヴィン 「1機はオートマターを積んでる。問題ない」

ウィリー 「・・・そのうち、機械だけで戦争が出来るってな。結構です。何であれ、使える物は使わせてもらいますよ」

ウィリーがブレイズに近付いて品定めする。

ウィリー 「ふン。これがそのドローン機か」

オルダス 「俺の愛機に気安く触れないでもらいたいね。ウィリアム・トラヴィス二佐殿」

機内から声。

ウィリー 「こいつは失礼。ドローン機だと聞いていたのでね。パイロットごと届くとは思っていなかった」

オルダス 「は。違いねェや。俺も思ってなかった」

機内にいるパイロットは、肩よりも下が無く、機械のようにコックピットに据え付けられている。

オルダス 「自分自身が兵器に組み込まれるなんてな」


マトリックス

AJ 「行くも地獄。止まるも地獄。・・・さて。どうするね、艦長殿。せっかく君たちに賭けたんだ。底力を見せてくれ」

ボッシュ 「ふン。・・・元作戦長官としては、どう見る?」

AJ 「先を見越すなら、後方とやり合って、G同士を衝突させる事は避けたいな。・・・かと言って、コースアウトすればジリ貧。となれば・・・」

ボッシュ 「止まらず、振り返らず、前方の艦隊を、イチかバチかで強行突破。・・・それしかない訳だ」

AJ 「海賊船一隻 対 正規軍艦隊か。頼もしい話だ」

ボッシュ 「なにを今さら。こちとら、海賊船一隻でユニオンと戦争してンだ」

AJ 「他の戦力は? R商会の後ろ盾ぐらいは利用できないのかね」

ボッシュ 「あンた、実のところ、それを聞き出したいンだろ? 残念だが、俺らの戦力はこれっぽっちだ」

AJ 「まだ信用されていないと見えるな・・・」

ボッシュ 「まァな。・・・おッと、見えたぞ。前方、月セグメント艦隊!」

AJ 「私が君らに賭けたんだ。・・・ヘマはしてくれるなよ」

ボッシュ 「あンたが乗ってなくても、自分の命のために、ヘマはしたくないモンだ。・・・ケネス! 戦闘準備だ!」


マトリックス。

シャヒーナ 「見えたの?」

ケネス 「おぉ、いよいよ、お楽しみの時間だってか」

ジーン 「コイツはぶっつけ本番だ。整備には手を尽くしたが、何が起きても怨むなよ」

アベル 「信用してますよ」

シャヒーナ 「敵の数は最大級よ。気を付けて」

アベル 「うん。わかってる」

ケネス 「うしッ! 行くぜ。軍勢の土手っ腹に穴を開けて一点突破する!」

アベル 「はいッ」

ハインツ 「おうよッ」


マトリックス

AJ 「・・・追っ手も、距離を詰めてきたな」

ボッシュ 「一瞬でも立ち止まったら、後方からズドンだ。・・・あんたを引き渡しても事態は変わらんだろうからな」

AJ 「私がスパイだとしても、何の情報もなく、おめおめとは戻れんよ」

ボッシュ 「結構です。・・・お前ら、わかってるな! 今からのハードル走! ハードルを全部倒してでもゴールするぞ!」

クルー達 「了解!」

AJ 「やれやれ」


前方・セグメント艦隊。マシン部隊。

サテュロスに乗るウィリー。

ウィリー 「来るぞ! 戦力ならこっちが圧倒的に有利だ! 叩いて叩いて叩きまくれ!」


ブレイズのオルダス。

オルダス 「それで作戦のつもりかね・・・。ま。それ以上の作戦もない、か」


マトリックス。

ケネス 「ケネス、サイファー出る!」

ハインツ 「ハインツ! ヴォーテックス出るぜ!」

アベル 「アベル! ギルティ出ます!」


同ドック。

ジーン 「はん? ギルティ?」

シャヒーナ 「・・・あのマシンの名前?」

ジーン 「みたい、だな」

シャヒーナ 「罪・・・。アベルらしいわ」


ボッシュ 「射出終わったな!? 90秒後に全速前進! いいな! 進路上のゴミはマシンが片付けてくれる! とにかく突っ切れ!」

ボッシュ 「まともに交戦しようなんて考えるな! 蹴散らして進め!」

クルー達 「了解です!」


宇宙。

ケネス 「いいな! 一点突破だ。コース内の艦を真っ先に叩け!」

アベル 「はいッ」

ハインツ 「ゴミ掃除なら俺の出番だぜェッ」



アイキャッチ
アイキャッチ「G−GUILTY」


群がるように攻めてくるマシンを一掃するヴォーテックス。
アベル 「DRESS行きます!」

軍勢を貫くようにしてDRESSを発動するギルティ。

ケネス 「派手にやるね。・・・こっちも負けてられねえッ」


マトリックスを追うオデッセイア。ブリッヂ。

キャロライン 「見えたわね・・・。ヴァグラントはついてきてる!?」

ダニエル 「問題ありません。慌てないで下さいよ。・・・捕捉して足止めを掛けるなら、もっと近付いてからですッ」

キャロライン 「マシンはまだなの!?」

ダニエル 「落ち着いて! 今出したら、クロスボウとアーバレストは後ろに放り出されますよッ! 海賊艦の速度が落ちるまで食いつかなきゃ駄目です!」


混戦の中にあるアベルたち。

ケネス 「さすがは防衛ライン・・・!」

アベル 「大型戦艦3・・・!」

ハインツ 「中型艦6!!」

ケネス 「へへ。小型艦とマシンは数える気もしねぇな・・・。たかだか海賊艦一隻にとんだ大捕物・・・!」

ハインツ 「数がッ・・・!」

ケネス 「うじゃうじゃぞろぞろと・・・!」

ハインツ 「これじゃッ・・・さすがに、弾が・・・!」

アベル 「突破だけならッ」

アベル、DRESSで前に出る。

ケネス 「アベルッ前に出過ぎるなよッ!」


ギルティの光を捉えたブレイズが動き出す。

オルダス 「来なすった!」

アベル 「何だ!?」

最初の交差から、一瞬でターンして再び交差。

オルダス 「思ったより・・・」

アベル 「速い!」

混じり合う2つの軌跡を残して、高速で交戦する二機。

オルダス 「機体データなし。予測データ表示。オーライ。・・・アサルトをいじったのか? 道理でな」

アベル 「このスピードで交戦できるの!? データベース・・・Gブレイズ!? Gシリーズなの!?」

お互いのモニターが出すデータに驚く。

オルダス 「やるね。生身とは思えない」

アベル 「くっ! この一機に構ってられないのにッ」

ブレイズと交戦しつつも、周囲の敵を撃墜するギルティ。

オルダス 「周囲を撃墜して応戦するかよ! 人間の肉体が持つ限界値・・・このパイロット何者だ?」

アベル 「オートマターみたいにデタラメな動きなのに、こっちの行動を読むなんて!」

オルダス 「機体もすごいが、パイロットも・・・」


ケネスらがマシン部隊を殲滅するも、艦から新たなマシンが現れる。

ケネス 「わらわらと涌いてきやがるッ」

ハインツ 「これじゃ・・・ッ」

ケネス 「艦が抜けられねえッッ」


マトリックスが突き進むが、外部からの攻撃だけでなく、進路上のマシンや残骸が多く、被害は増える。

ボッシュ 「くッ、さすがの鉄壁か・・・」

AJ 「核を使うなり何なり、最後の秘策はないのかね?」

ボッシュ 「あるように見えるか? ・・・左舷! 弾幕薄いぞ! くっつかせるな! 前方! 小さいゴミには構うな!」

AJ 「やれやれ。このままじゃ墜ちるな」

呟いたAJが、近くにいたクルーの腰から拳銃を抜き取り、操舵手に銃口を向ける。

ボッシュ 「なッ!? おい! この期に及んでまだ逃げようなんて・・・」

AJ、うっすらと笑って銃口を動かさない。

AJ 「私も死にたくないのでね。舵を渡してもらおう」

ボッシュ 「本気か」

AJ 「本気だよ」

操舵手が、その場をどく。


左右両側から、ヴァグラントとオデッセイアが追い上げる。

オデッセイア

ダニエル 「完全補足まで、あと20秒って所です、19、18、17」

キャロライン 「・・・さあ、観念して。・・・アレックス」

ダニエル 「な、なにッ!? 19! 20!?」

キャロライン 「どう言うことッ!?」

ダニエル 「引き離されて・・・ます」


突き進むオデッセイアが、機体を左右に揺らして、ゴミを避けて突き進んでいる。前方のサイファー達との距離も詰まる。

一方、今までマトリックスが盾になっていたはずのオデッセイアとヴァグラントに、ゴミが衝突しはじめる。

ボッシュ 「どういう・・・コトだ?」

AJ 「話しかけないでくれ。気が散る。艦長は迎撃の指示だけしててくれ」

舵を握るAJの顔は汗に濡れている。

ボッシュ 「そいつはどーも。・・・ケネス、ハインツ、アベル! 艦にくっついて迎撃しろ!」


ケネス 「了解! ハインツ! アベル!」

ハインツ 「アベルが離れすぎちまってる!」

ケネス 「ちっ、あの馬鹿!」


アベル 「こんなッ!」

オルダス 「とことんッ!」

アベル 「周りに敵さえいなきゃ!」

オルダス 「いい腕だ! しかし、その小型機とブレイズじゃ、持久力に雲泥の差がある! いつまで・・・」

アベル 「くっ!」


次第に遠くなるマトリックス。

キャロライン 「・・・振り・・・切られる?」

ダニエル 「待って下さい! 前方に機影・・・7! 中型艦です!」

キャロライン 「ッ!? 識別信号は!?」

ダニエル 「粉が多くて不明ですが・・・、こ、これ・・・って・・・」


マトリックス・ブリッヂ。

ボッシュが見つめるレーダーマップに、新しい信号。ボッシュが唇を歪める。

ボッシュ 「・・・あんたの操舵技術には正直、感服するが、2つ知らせていいか?」

AJ 「良い知らせと悪い知らせか?」

ボッシュ 「どっちから聞きたい? ってな余裕はないな。良い知らせは、あんたのお陰で艦隊突破の目処が立った。追跡艦との距離も開いた」

AJ 「それで・・・悪い知らせは?」

ボッシュ 「さらにその前方から、機影が確認された。・・・艦隊と思われる」

AJ 「それが悪い知らせって事は・・・」

ボッシュ 「つまり・・・」

AJ 「万事休す、か」


アベル 「前方に機影!? まだ敵がいたの!? これじゃ・・・!」

オルダス 「機影!? 何だッてんだ? 識別信号・・・」


ダニエル 「ニュートラル・・・!!」

キャロライン 「どう言うこと!? 民間機!?」

ダニエル 「み、民間信号じゃありません。・・・公社・・・です」

キャロライン 「何ですって!?」


アベル 「民・・・間・・・シャトル・・・!?」

オルダス 「な!? 公社だと!? なんでこんな場所を!? どう言うことだ!? くそっ!」


マーヴィン 「ばっ、馬鹿な! 公社だと!? こんな場所でか!? 直ちに戦闘中止命令を出せ!」


AJ 「助かった・・・のか、な? これは」

ボッシュ 「どうやら、そのようだ」


ウィリー 「全軍戦闘中止だ! 何があっても公社のシャトルに危害を加えるな! 絶対命令だぞ!」


戦闘区域に進んでくるシャトルが4機。

放送 「周囲の軍艦に告ぐ。移動する公社のシャトル半径200km以内での戦闘行為は禁じられている。直ちに戦闘行為を中止しなさい。繰り返す。移動する公社のシャトル半径200km以内での戦闘行為は・・・」


ギルティの周囲からも、急速にマシンの光が消えていく。

アベル 「戦闘が・・・止まった?」


キャロライン 「あ、相手が公社じゃ・・・」

AJ 「手出し、・・・出来ませんね」


ケネス 「・・・命拾いしたな」


シャヒーナ 「どう言う・・・こと?」

ジーン 「引っ越し公社・・・。地球にある世界的な遺産を宇宙に運んで保存する完全中立公社だ。木星船団を襲う海賊でさえ手出ししない。・・・・セグメントだろうと議会軍だろうと公社の御前で戦闘は御法度だ・・・」

シャヒーナ 「その・・・シャトルが・・・」


AJ 「・・・偶然、シャトルの航行路で戦闘があった・・・なんてコトは言わないでくれよ」

ボッシュ 「偶然だと言って、信用するかい?」

AJ 「まさか」

ボッシュ 「だろうな」


戦闘の光が消え行くのを確認する男の足が見える。

影 「・・・」


次回予告

ナレーション 「マトリックスを執拗に追うキャロラインは、核ミサイルでの陽動を強行。アベルはその核を阻止し、その後ろに待つ出資者と会うことは出来るのか? 次回、『糸ひくもの』 Gの鼓動が、今目覚める」

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