影 「つまり、マグワイアが、よからぬ事を企んでいると?」

ハワード 「正確には、セイン将軍です。マグワイアは乗せられているに過ぎません。セインも、現時点では、ユニオンに利益を運びますが、放っておけば・・・」

影 「しかし、彼の功績で理想的なミリタリー・バランスが構築された事は事実だ」

ハワード 「確かに、現在のミリタリー・バランスは絶妙ですが、セインには何のヴィジョンもなく、己の欲望のままに動いた結果、そうなったに過ぎません。まだ力を欲しがっています。そして、いずれユニオンに牙を剥きます」

影 「ユニオンに楯突くなどと、馬鹿げた事をするかね?」

ハワード 「お言葉ですが、セインは馬鹿ですから。・・・早めに手を打ちませんと」

影 「わかった。君がそこまで言うなら、調査はさせよう」

ハワード 「ありがとうございます、ヴァンスタイン理事長」


ナレーション 「体制勢力、議会・セグメント連合と、反体制勢力、エクレシアの戦いは、膠着状態に入っていた。それは、その陰に潜むユニオンの仕組んだ戦争に他ならない。アベルは、ユニオンに利用されていた真実を知り、ユニオンと戦う決意をする」

「だが、アベルたちを追うユニオンの魔手は、次第にその距離を狭めてくるのだった・・・」



タイトル

「追撃のカイン」

− Kaine's pursuit −



ボッシュ 「さて、明日が見えたのはイイが、明日の方角はどっちだ?」

ハインツ 「そりゃ、地球圏じゃないの? この場所がいつまでも見つからない訳ァないし」

ケネス 「そう行きたいが、B.a.dカンパニーのお陰でこっちの所在はモロバレだからな」

アベル 「何処かに、抜け道はないんですか?」

ボッシュ 「まあ、この広い宇宙だ。逃げ道なら何処にだってある・・・が」

ケネス 「ただ、逃げた先に燃料も食料もありゃしねえがな」

ハインツ 「それも、B.a.dの裏切りで、補給は中途半端だし・・・」

ボッシュ 「地球への降下を半年遅らせるなら、後退って手もあるが、連中の事だ。そう易々と退かせちゃくれないだろう。隠れる場所も限られる」

ケネス 「月・地球圏に入れば、セツルメントの基数が増すだけ、身を隠すにゃ楽だ」

アベル 「つまり、強行突破しかない、と」

ボッシュ 「ま。戻る・隠れる・進むの三つなら、進むしかないって事だな」


シャヒーナ 「会議、どうだった?」

アベル 「地球圏へ強行突破。コースは予測されてるだろうから、ちょっと厳しい戦いになるかも」

シャヒーナ 「そうね」

アベル 「でも、それさえ抜ければ、地球だよ」

シャヒーナ 「セツルメントとは違うのかしら」

アベル 「わからないけど・・・。でも、地球を離れたがらない人が多いんだから、きっと、いい所だよ」

シャヒーナ 「地球圏・・・か」


ロイド 「ち、地球圏を離れる!? は、ハワード、それでは私は・・・」

ハワード 「安心してください。・・・言っているでしょう。甘い汁は吸わせてやると。・・・あなたは私が与えた仕事だけをしてればいい」

ロイド 「し、しかしな、ハワード・・・」

ハワード 「心配しなくても、すぐに戻りますから。・・・それに、あなたが演技以外、何一つ出来ない無能である事は熟知しています。予定表に書かれたスケジュールを、順番にこなすだけで良いんです。・・・出来るでしょう?」

ロイド 「そうは言うが、この予定通りにマグワイアが失墜すれば私は・・・」

ハワード 「ロイド副議長。此度の開戦でセイン将軍が身の程知らずにも政界への進出を謀っている。マグワイアはあなたを嫌ってそれに加担した。彼らをのさばらせる方が、あなたの地位を危うくする」

ロイド 「あ、ああ。そ、そうだな。・・・だが私は・・・」

ハワード 「わかっています。次期議長には、ハト派のヒース連邦法務官を就任させる。あなたはその陰の功労者として、理事会へ推薦される・・・」

ロイド 「り、理事会に? 私が理事会に?」

ハワード 「2年待ちなさい。私はこうやって、あなたをこの地位にまでのし上げてきた。今までと同じように、私の言う通りしていれば、理事長の肩書きも夢ではない。もともとあなたは舞台役者じゃない。・・・議長の椅子よりも理事の椅子。違いますか?」

ロイド 「に・・・2年だな。わかった。留守の間の、マグワイアの件は承知しよう」

ハワード 「結構です」


ルーシアス 「相変わらずですね、副議長も」

ハワード 「俗物はモノなど考えずにいてくれた方が助かるのだがな」

ルーシアス 「でも、セイン将軍の狙いは何です? この戦争でパワー・バランスは均衡に近付いたはずなのに・・・」

ハワード 「セインは日和見の議会軍を参戦させた事を自分の功労だと勘違いしている。そのまま調子づいて、セグメントを完全にスレイヴ化させたいらしいな」

ルーシアス 「でも、内政だけで経済をコントロールするのは難しいはずですよね」

ハワード 「だからセインは馬鹿なのだ。敵がいなくなれば軍も経済も争わなくなる事さえわかっていない」

ルーシアス 「なまじっか、将軍の過激な発言に人気があるのは厄介ですね」

ハワード 「極端な事でも言わなければ、愚衆には理解されんからな。・・・ルーシアス、宇宙へ出る準備は整ってるな?」

ルーシアス 「はい」


イブレイ 「フォルビシュ・・・、予定通りに事は進んでるな?」

フォルビシュ 「勿論です。ただ・・・」

イブレイ 「ただ、何だ?」

フォルビシュ 「ね、ネルガル中将に勘付かれていた可能性が」

イブレイ 「フォルビシュ・・・、それは予定通りとは言わん」

フォルビシュ 「も、申し訳ありません」

イブレイ 「細かい事は言わなくてもわかるな? くれぐれも、君の口から私の名前が出ることのないように」

フォルビシュ 「も、勿論です」

通信を切るイブレイ。

イブレイ 「無能が・・・!」

イブレイ 「まあ、邪魔な女神殿の足止めは出来る。問題はこの先の包囲網だな。カインがうまくやってくれれば、何も問題はないが・・・」


キャロライン 「何ですって!? 議会駐在軍が造反・・・?」


エドガー 「ん?」


ダニエル 「まんまとやられましたね」

キャロライン 「どう言うことなの・・・?」

ダニエル 「あくまで俺の推測ですがね。聞きます?」

キャロライン 「・・・ええ」

ダニエル 「議会駐在軍のフォルビシュって男が、議会に対して造反。それも、ユニオンと直接の繋がりを持たない末端のエクレシアと共謀してる。偶然のクーデターと言えなくはないんですけど・・・」

キャロライン 「そうね」

ダニエル 「確かに、フォルビシュも、表向きはユニオンとは繋がりを持ってませんが、オケアノスの破壊失敗後 、イブレイが接触してます」

キャロライン 「先の読める話ね」

ダニエル 「そのフォルビシュが、無理をおしての謀反でパワー・バランスを崩そうとしている・・・」

キャロライン 「それも、私たちの目と鼻の先で・・・、私たちは、この造反を止める義務がある・・・」

ダニエル 「つまり、この造反の絵図は、俺らの足止めのために」

キャロライン 「それだけのために、そこまでやるの? ・・・イブレイは!」

ダニエル 「あの人、根が暗そうですからねぇ。・・・で、どうします? 海賊の包囲に遅れて失脚か、駐在軍の造反を許して失脚か・・・」

キャロライン 「どちらを選んでも・・・」

エドガー 「くっくっ」

キャロライン 「エドガー・パウエル!?」

エドガー 「面白そうな話だったんでな。・・・が、俺のいる艦が遊ばれるのは面白くない」

キャロライン 「何か策がお有りのようね」

エドガー 「俺と、もう1人兵隊を貸せ。造反組は黙らせてやる。あんた方は包囲へ向かえばいい」

キャロライン 「そんな無茶苦茶な・・・!」

エドガー 「俺はどっちでもイイぜ。片方を選んで失脚するか、両方を選んで助かるか」

ダニエル 「兵隊はどっちがいい? イヴリンか、ザカリアか」

キャロライン 「ブラントン中尉!?」

エドガー 「選べるなら、姉ちゃんじゃない方が助かるな」

ダニエル 「許可する。直ちに造反組を殲滅して、可能な限り素早く包囲網に合流しろ」

エドガー 「了解した」

キャロライン 「ブラントン中尉・・・!」

ダニエル 「ま。処罰ぐらい受けますよ、人手不足で有能な副官に困らないならね」



アイキャッチ
アイキャッチ「G−GUILTY」


カイン 「ようやく目標補足」

カイン 「スクラップに隠れてたいのはわかるけど・・・、まだこんなセツルメント傍をウロウロしてたのは失策だね」

カイン 「前回の借りは返させて貰うよ」


ケネス 「どうした?」

アベル 「いえ、今、随分と近くに流星みたいな光が・・・」

ケネス 「はン・・・、流星ね。りゅうせ・・・ッ!」

アベル 「どうしたんですか?」

ケネス 「アベル! デッキへ急げ! 敵襲だ!」

アベル 「え、ええっ!?」

ケネス 「ハインツ! 例のピカピカ野郎だ! 出るぞ!」

ハインツ 「んなッ!?」


ボッシュ 「第一戦闘体勢! 各員、可能な限り火器へ回れ! 繰り返す! 各員、可能な限り火器へ回れ!」

アベル 「何なんです!?」

ケネス 「どうやら、やっこさんは最新型のGだ。この前、俺とハインツがいいように遊ばれた。今度は遊んじゃくれない!」

アベル 「最新型の・・・、G!」

ハインツ 「ヴォーテックス! 出るぞ!」

ケネス 「続いて、サイファー! 出る!」

アベル 「ソードケイン、出ます!」


ボッシュ 「頼むぜ・・・、ご褒美を目前にして沈みたくはないからな・・・」


カイン 「こっちは長旅で疲れてるんだ・・・。ご褒美ぐらいは貰わないとね・・・」

カイン 「あッは! 素早い対応だね・・・。ま。ご褒美とは言え、艦ごと沈めるなんて無粋な真似はしたくなかったし・・・ちょうどイイや!」


ケネス 「アベル! コイツは生半可な攻撃は全部無力化する! ビームも実弾もだ! とにかく足止めしてエネルギーを消費させろ!」

アベル 「はい! 了解です!」

ケネス 「ハインツ! お前は前に出るな! ひたすら旋回して援護射撃に徹せ!」

ハインツ 「了解! ・・・地味な役でも、正直、今回は助かるぜ」


カイン 「3対1なら勝てると思ってるの? その思い上がりを砕いてあげるよ!」

ハインツ 「うわっ! やっぱ速いよコイツ!」

ケネス 「気ィ抜くな! 相手は動くビームだと思え!」

アベル 「この・・・!」

カイン 「何だよ、コイツ・・・」


カイン 「チョロチョロと小賢しいな!」

ケネス 「ハインツ!」

ハインツ 「うわッ!! かわせた・・・?」

アベル 「ハインツさん!」

ハインツ 「生きてる・・・けど」

ケネス 「変形してシールド張って後退しろ! 機動力ナシじゃ的にされるだけだ!」

ハインツ 「しゃあねえッ! 悪いけど・・・!」


カイン 「これで2対1・・・」

ケネス 「・・・まずいね。無駄弾が多すぎる・・・! このままじゃ、先にこっちのエネルギーが切れる・・・」

アベル 「ケネスさん! エネルギーを温存して、後から付いてきてください!」

ケネス 「あ? どうする気だ!? 無茶すんな!」

アベル 「大丈夫です! 僕に考えが!」

ケネス 「アベル! 艦に近付くな! 敵をマトリックスに近付けるんじゃない!」


カイン 「あは。なにコイツ? 尻尾巻いて逃げ出すの?」

アベル 「ついて来てよ・・・!」

カイン 「逃がさないよ・・・! そんなゴミに隠れたって・・・」

アベル 「ここなら!」

カイン 「こんなゴミぐらいで、DRESSが・・・くっ!」

アベル 「動きさえ鈍れば・・・!」

カイン 「くっ! こんな・・・!」

ケネス 「・・・なるほどね。いくら弾丸だろうと、貫けるモノと貫けないモノがあるってか」

カイン 「糞ッ! DRESS解除!」

ケネス 「いただきぃ」

カイン 「させるか!」

ケネス 「止めるか!」

カイン 「アサルトの武器がDRESSだけだと思うなよ」


アベル 「ライフルじゃない!? 剣なの!?」

カイン 「アサルトの装備にはディバイダーしかないけど、それが何でかわかる? これが万能なんだよ!」

アベル 「くっ!」

カイン 「うざったいね! お前!」

アベル 「こいつ・・・! 強い!」

ケネス 「易々と撃たせちゃくれないってか!」

カイン 「こっちは単独行動で、物資の補給まで間があるんだ! とっとと沈めよ!」

カイン 「くッ・・・。このままじゃエネルギーが持たない・・・か。燃料切れのアサルトは鉄屑以下だし・・・」

カイン 「ちっ、撤退するしかないじゃないか!」

カイン 「こんな事なら、1機でも木っ端微塵にすべきだったよッ」


アベル 「逃げる!?」

ケネス 「待てアベル! 追いたいのは山々だが・・・」

アベル 「エネルギー残量が・・・。向こうも弾切れのハズなのに・・・ッッ」


カイン 「2度も・・・! 2度も僕を虚仮にして・・・! イブレイさんに怒られるじゃないか! 絶対に泣かしてやるからな! 泣くまで追い詰めてやるからな!」


デッキから発進する小型艇。

それを見送るダニエルとキャロライン。

エドガー 「海賊とやらを、上手に追い詰めておけ。始末は俺がつけてやる。・・・パウエル、出るぞ!」

ダニエル 「了解した。武運を祈る」

キャロライン 「・・・ブラントン中尉」

ダニエル 「何です? 艦長」

キャロライン 「あの、エドガーという男、信用できて?」

ダニエル 「任務には忠実らしいですよ」

キャロライン 「では、包囲網を狭めるにあたって、クロスボウのイヴリンだけで対処できると思う?」

ダニエル 「まあ、間に合わなくて面子が立たないよりはマシです。それに、包囲網は複数です。アベルたちがこっちに来るとは限りませんよ」

キャロライン 「そう・・・、そうね」


シャヒーナ 「どうしたの?」

アベル 「さっきの敵・・・、何か妙だったんだ」

シャヒーナ 「妙?」

アベル 「エナやミア、ザカリアでもない・・・、でも、気配はすごく似てて・・・」

シャヒーナ 「・・・他にも、造られた兵士が?」

アベル 「そうかも知れない」

シャヒーナ 「大丈夫よ」

アベル 「え?」

シャヒーナ 「アベルには、意志があるでしょう?」

アベル 「あ・・・、うん。そうだね。うん」

シャヒーナ 「なら、大丈夫よ」



次回予告

ナレーション 「追撃に備え、訓練するアベルたち。だが、アベルたちの知らないその一方で、フォルビシュの謀反を叩くべく、ユニオンの兵たちが暗躍する・・・。次回、『混戦の果てに』 Gの鼓動が、今目覚める」

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