ルクレール 「将補・・・、お知り合いなのですか? あの、R商会第七後継者と・・・」

シャイロン 「連中のスポンサー・・・、今回、軍機マシンのトライアルでAEに競り負けた、B.a.dカンパニーです。圧力を掛けてみる必要はあるかと存じます」

ホセ 「・・・わかった。やってみよう」

アベル (敵との距離が、どんどんと縮まってる気がする・・・)


ナレーション 「体制勢力、議会・セグメント連合と、反体制勢力、エクレシアの戦いは、膠着状態に入っていた。それは、その陰に潜むユニオンの仕組んだ戦争に他ならない。アベルは、ユニオンの下位組織グレイゾンに利用され、戦い続けて来た」

「ユニオンと戦うことを決意したアベルの前に、新たなる敵がたちはだかる」



タイトル

「裏切る、くちびる」

− The lip to betray −



カーゴの中に、ソードケイン。アベルとシャヒーナ。

アベル 「・・・とは言え、ちょっと不安だな」

シャヒーナ 「アベルが1人で行くよりは安心してられるわ」

アベル 「それは・・・、そうなんだけど。そもそも、僕らが戦ってるはずの兵器産業が、僕たちに協力してくれてるのが気持ち悪くて・・・」

シャヒーナ 「B.a.dカンパニーにとって、AE社は目の上のたんこぶなのよ」

アベル 「だけど、2社は談合してるし、どっちの利益もユニオンに流れてるんだよ」

シャヒーナ 「独禁法でB.a.dカンパニーは守られて・・・、むしろ、守られてるのはAE社だけど。お金の動きも、ユニオンが株主である以上、仕方ないわね」

アベル 「でも、親玉であるユニオンに逆らうより、大人しくしてた方が利口じゃないか。なのに、危険を承知で僕らに協力を?」

シャヒーナ 「裏切られる可能性は高いでしょうね。でも、今現在味方である事に違いはないわ。・・・それに、アベルなら、大人しく飼われる事を選んだ?」

アベル 「え? あ・・・! そうか・・・。そうだね」

シャヒーナ 「それを信じるしかない。・・・でもいずれ、隠れ蓑として使える時間は尽きるわ・・・」


オデッセイアで交信するキャロラインとイブレイ。

キャロライン 「海賊のテロ行為を未然に防ぐことは、現実問題として難しいと言えます。しかし、廃すべき海賊はアンセスターのみ。彼らの行動範囲を予測する事は充分に可能です」

イブレイ(モニタ) 「では、聡明な女神殿にお訊ねする。今回でハッキリしたが、サイファーとソードケインは別行動を取ってる。しかし、距離は遠くない。はたして、彼らは合流するかね?」

キャロライン 「・・・いずれ合流します。彼らの目的がユニオンである以上、地球を目指して、間違いなく」

イブレイ(モニタ) 「地球・・・、いずれ・・・。今はまだその時ではないと?」

キャロライン 「彼らの出没するポイントの予測は、どんどんとその範囲を狭めています。現時点での合流は、逃げ道を少なくする・・・。違いますか?」

イブレイ(モニタ) 「結構。私は、連中の目的が地球であるならば、戦力を集めての一点突破だと思うが・・・、命令には従う」

キャロライン 「くっ・・・。では、配置に変更はなしでお願いいたします」

忌々しげに通信を切るキャロライン。

ダニエル 「大きなお世話だと思いますが、俺も一点突破だと思いますよ」

キャロライン 「理由は? ブラントン中尉」

ダニエル 「カーロ長官が、公権力を使っての海賊燻りを始めたでしょ。アレですよ。一ヶ所に留まれる時間が限られる以上、連中は強行策を取る」

キャロライン 「・・・あれは、カーロ長官の独断で・・・」

ダニエル 「嵌められたンすよ、長官に。警察はそれなりにテロリスト狩りの成績を上げてる。肝心のアンセスターには接触しつつも逃げられてる・・・、となれば、悪いのは誰です? 俺らっスよ」

キャロライン 「つまりカーロ長官は・・・」

ダニエル 「ダグラス長官を見限った、と。・・・ま。今に始まった事じゃないですけどね」


搬入用ドックに到着するマトリックス。

何人かの兵士たちに囲まれつつも、リラックスしたクルー、ハインツ、ケネス、ジーンらが降りてくる。

降ろされるヴォーテックスとサイファー。

その様子を眺めているボッシュと、もう1人の男。

ボッシュ 「この度の受け入れ、感謝します。ライリー所長」

ライリー 「なに、お互い協力しあう事が大事だ」

ボッシュ 「例によって、サイファーとヴォーテックス、好きなだけ調べてください」

ライリー 「私も、君たちを匿って補給と修理を請け負うだけで、AE社の最高機密に触れられる。安い買い物だよ。何しろ、擬似的とは言え、数世代先の技術だ。似たものを遙かに安いコストで作る参考になる」

ボッシュ 「安い買い物と言ってくれると助かりますよ」

ライリー 「我々B.a.dカンパニーがマシンの売り上げで天下を取れたのは100年も前の話だ。それも、その一瞬だけでね。事実上、AE社の独占市場には違いない・・・」

ボッシュ 「俺達は商売人じゃない。だが、良い商品を作れれば売れるってモンじゃないとは思いますがね」

ライリー 「はは。広告力でAE社に勝てない以上、技術力で戦う方がマシだよ。技術なら、AE社も買ってくれる」

ボッシュ 「AE社から盗んで、AE社に売り付ける訳か」

ライリー 「兵器産業において、AE社の力は絶対です。だから、私はAE社に逆らってでも、AE社に媚びへつらう。どんなに汚くてもね」

ボッシュ 「ま。俺たち海賊も、依頼内容と金払いさえよければ、ユニオンの仕事でも引き受けますがね」


競馬場。

アーサー 「かあっ、今日もスッちまった。誰だよ、7−2が鉄板だなんて言ったのは」

アン 「7−2なんて、セツルメントでも降らない限り、来ませんよ」

アーサー 「O.K.じゃあ、4−2はどうだい? お嬢さん」

アン 「初めまして。アン・スナンです。ボッシュから聞いてます。・・・馬と騎手はどちらに?」

アーサー 「予定通り待機してる。そっちのレースは?」

アン 「こちらも予定通りよ。まさか、自分たちの懐に敵がいるはずはないと思ってくれてるみたい」

アーサー 「はン、大穴だな」


先ほどのドックからうってかわって、小綺麗な社内。きょろきょろするハインツ。

ハインツ 「どうでもいいけど、広すぎるンだよ。こんな迷路みたいな建物・・・。どっこも似たような構造してるし・・・。IDが無いと通れない所だらけだし・・・おっ!?」

社員 「ん? なんだ? 工場の方から来たのか?」

ハインツ 「えっ? あ、ああ、はい」

社員 「小汚い格好してるから、海賊かと思ったよ。今、来てるンだろ、例の海賊」

ハインツ 「ああ、来てるけど」

社員 「どうよ? あのマシン、やっぱり凄いのか? 何しろAEの最高機密って話だけど。聞かせろよ」

ハインツ 「あー、ありゃ凄いね。あんなのに加えて天才パイロットが2人もいるんだからな。海賊狩りに手を焼くのは当然だろうぜ」

社員 「まあ、その御自慢のマシンを押さえられちゃ、連中だって何も出来やしないだろうけどな。今回でオダブツだろうぜ。可哀想にな」

ハインツ 「・・・それって」

社員 「ん? どうした?」

ハインツ 「いや、何でもない。それより、トイレ何処? 普段は工場しか行かないからさー」

社員 「右に行った突き当たりだ」

ハインツ 「サンキュー・・・」

ハインツ 「・・・って、ヤベえ! 売られたのかよ? 俺達」


ドック内の一室、集められたクルーたちを取り囲む、兵士。

ケネス 「で。この状況は・・・」

兵士 「動くな! 両手を上に上げて指示に従え!」

ジーン 「ま。売られたって事だァな」



アイキャッチ
アイキャッチ「G−GUILTY」


ケネス 「で。この状況は・・・」

兵士 「動くな! 両手を上に上げて指示に従え!」

ジーン 「ま。売られたって事だァな」

ケネス 「予測して然るべき状況ではあったけど」

ジーン 「まさか、こんなに早いとはねェ」

兵士 「何をゴチャゴチャ話してる」

ケネス 「はいはい・・・。まいったね。予測はしてたが、予定になかった」

ジーン 「まさか、対応策ナシなんて事ァ・・・」

ケネス 「実のところ皆無に近いんじゃァねぇの?」

兵士 「静かにしろと言っている!」

ジーン 「はいはい・・・。ひょっとして、ボッシュは馬鹿か?」

ケネス 「あのヒゲが、頭イイように見える?」

ジーン 「お前よりはな」

ケネス 「あら、そう」


社内の一室。同じく銃を持った兵士に囲まれるボッシュ。

ボッシュ 「何の真似です? ライリー所長」

ライリー 「言ったでしょう? 兵器産業において、AE社の力は絶対だと。だから、私はAE社に逆らってでも、AE社に媚びへつらう。どんなに汚くてもね」

ボッシュ 「こんな真似はしたくないが、マトリックスには大量の爆薬が仕掛けてある。こんな事態に備えてね。あなたも、1千500人の社員と心中したくはないでしょう」

ライリー 「何のために、君だけココに連れ出したと思ってる? 君が有線式のリモコンスイッチを持ってるか、あるいは強力なJAC能力者でない限り、命令は遮断される」

ボッシュ 「く・・・」

ライリー 「悪く思わないで頂きたい。私だって、AE社が好きな訳じゃないが、君らと我が社、どちらを守ると言われれば答は決まってくる」

ボッシュ 「は・・・」


カーゴの中。

アベル 「おかえりなさい、アーサーさん」

アーサー 「おう、ボッシュたちはB.a.dカンパニーから補給を受けてる。俺達もこれでようやく合流できるぞ」

アン 「はじめまして、あなたがアベル?」

アベル 「はい。マトリックスの方ですか?」

アン 「アン・スナンよ。よろしくね。・・・失礼」

アンの持つシーバーが鳴る。

ハインツ(声) 「スナン! 今何処だ!?」

アン 「ハインツ?」


ハインツ 「まずい! B.a.dカンパニーの連中が裏切った!」

アン(声) 「何ですって!?」

ハインツ 「言った通りだよ! ケネスたちが捕らえられたんだ! 売られたんだよ!」

アン(声) 「それでアンタは!?」

ハインツ 「俺はその、道に、その、偶然、逃げ出せて、とは言っても社内から抜け出せないんだけど、ようやく連絡できる場所に」


アン 「ケネスをほっといて何でアンタだけ抜け出してるのよこの卑怯モン!」

アーサー 「ひきょ・・・」


社内の一室に監禁されるクルーたち。

ケネス 「まあ、連中がいきなり俺達を殺さなかったのは、まだチャンスがあるって事だ」

クルー 「艦とマシンを奪い返すんですか?」

ジーン 「そいつァちょっと難しそうだな。なにしろ・・・」

兵士 「聞こえてるぞ! お前ら」

ケネス 「運が良かったのさ。B.a.dカンパニーの裏切りは予定より早かったが、早過ぎた」

ジーン 「どう言うこった?」

ケネス 「ひとつは、ユニオンの兵隊がいない。こいつらはカンパニーの私兵団だって事。連中が動いてれば、俺達はまず射殺されてる。・・・もうひとつは」


カーゴ。

アベル 「幸い、僕たちの合流が遅れたことですね」

アーサー 「だな。お嬢ちゃん、安心しな。アベルとソードケインがこっちにあれば、何とかなる」

アン 「はい、お願いします」

シャヒーナ 「大丈夫。その気ならその場で殺してるわ」

アベル 「それじゃ、行きます」

シャヒーナ 「気をつけて」

アベル 「うん。・・・アンさん、ちょっと派手に暴れますから、それでみんなが怪我しないように祈ってて下さい」

アン 「え・・・ええ」

アベル 「ソードケイン、出ます!」


所長室。電話で話すライリーとイブレイ。

ライリー 「はい、全て問題なく」

イブレイ(声) 「結構。我々の到着まで、そのまま維持してくれ。私の私兵が先に着くだろうが・・・」

所長室の窓から見える風景に、ソードケインが近付いてくる。

ライリー 「・・・何だと!?」

イブレイ(声) 「どうした? 何事だ?」


ドック。

兵士 「例のマシンだッ!」

兵士 「マシンを出せ! 応戦しろ!」


アベル 「悪いけど、今日は手加減しないからね」

兵士 「きゅっ、救世主がどれほどの・・・ッ」

アベル 「みんな、うまく脱出してよっ」


監禁されている一室。

兵士 「うわっ!?」

ケネス 「な? 言ったろ」

ジーン 「おめえよ、何だかやけにボウズのこと頼りにしてるじゃねえか」

話ながら、体当たりでドアごと監視員を吹っ飛ばす。

クルー 「じ、ジーンさん・・・」

ジーン 「俺は非戦闘員なんだからな。手荒な真似させるんじゃねェよ」

ケネス 「おー、やだやだ。荒っぽいヒトだこと。・・・行くぜ」

ケネス、兵士から銃とIDを奪う。


戦闘中のソードケイン。

アベル 「このぐらいの敵なら!」

アベル 「みんな、無事でいて・・・ッ」


ドックにて、奪回したサイファーとヴォーテックス。

ケネス 「よし、とりあえずマシンは確保っと。ジーン、ハインツの替わりにヴォーテックスを頼むぜ」

ジーン 「だから俺ァ非戦闘員だっつの!」

ケネス 「クルーガー、マトリックスを頼むぜ」

持っていた銃を渡す。

クルー 「了解です。ボスの留守は任されてますから」

ケネス 「・・・ところで何でハインツがいないワケ?」

ジーン 「さてね。・・・出るぞ!」


戦闘中のソードケイン。モニタに反応。

アベル 「まだ来るの!?」

アベル 「ヴォーテックス! ・・・サイファー!」

ジーン 「よう、半年振りだな。ボウズ」

ケネス 「今回は助かったぜ、少年。が、挨拶は後だ。油断するなよ、まだ来るぜ」

アベル 「はいッ!」

続々と出てくるマシンだが、G3機の前には、歯牙にも掛けられないまま落とされていく。

クルー(通信) 「ケネス! マトリックスは8割がた奪回した」

ケネス 「了解。こっちもボッシュ達を見つけたら合流する」


ドック。エンジンが回っているマトリックス。

クルー 「よぉし、艦内の敵は粗方片付けた。重要ポイントを死守しつつ、いつでも出られるように準備しておけ!」


ライリー 「ひいっ、なんて事だ! これじゃ私の・・・」

ボッシュ 「私の・・・何です?」

ライリー 「ひいいっ!?」

ボッシュ 「悪く思わんで下さいよ。何しろ俺達は海賊なンでね。ビジネスの事はよくわかりませんが、荒事は本業ですから」

ライリー 「ひしぃぃぃぃぃ!」

ハインツ 「うわっ!? なんだっ」

ボッシュ 「ハインツ?」


ヴォーテックスが、ボッシュとハインツの傍に着陸しようとする。

ボッシュは軽く手を、ハインツ、両手を振ってそれを迎える。


ソードケイン、カーゴ傍に着陸し、シャヒーナ、アン、アーサーに迎えられる。


イブレイ 「予想通りの一点突破・・・。やれやれ、お優しく・・・、何処までも手ぬるい女神様だ。・・・だが、まあ、これでダグラスを追い落とす材料は揃った・・・」

イブレイ 「あとは、カインがうまく連中を倒せるか・・・。手柄は多い方がいい」


次回予告

ナレーション 「ケネスと再会したアベルは、胸につかえた疑問を口にする。あっさりと答えるケネス。だが、ケネスとイヴリンの間には、決して浅からぬ溝があるのだった。次回、『ずうっと、にがいオレンジ』 Gの鼓動が、今目覚める」

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