アベル 「・・・戦争?」

ケネス 「そうだ。・・・奴らは、兵器を売るために戦争を起こしてる。政治のバランスをコントロールして、な」

アベル 「・・・そんなっ!」

ケネス 「わかるか? お前は戦争を終わらせるつもりで、戦争を大きくしたんだ」

アベル 「僕が・・・!? 僕がですか!?」



タイトル

「正義の在処」

− Whereabouts of heroism −



ナレーション 「宇宙移民者と地球の間に作られた和平は、そう、長くは続かなかった。時は宇宙世紀255年、11月。セツルメント降下という忌まわしい事件を期に、体制派連合軍と反体制派バルバロイは全面戦争へと突入する。だが、多くの犠牲者を出したこの大戦の真相を知る者は、あまりにも少なかった」

ナレーション 「敵だと教えられていた海賊ケネスから告げられた言葉は、アベルたちこそが戦争を悪化へと誘う諸悪の根元であるという。アベルはその言葉を確かめるためにも、戻らなければならなかった」



ボッシュ 「もう、24時間経過するってのに、まだ連中の抵抗が終わらないのは滅入るな」

ケネス 「そりゃ、気持ちはわからんでもないな。このオケアノスのブリッヂが乗っ取られたから明け渡せって言ったって、納得は出来ないだろ」

ボッシュ 「まだそれを信じてない連中もいるし、システムが破壊されたから抵抗すれば奪い返せると思ってる連中もいる」

ケネス 「兵士に戦局が見えないのは致し方ないとは言え、それなら逃げ出してくれればいいモノを・・・。つくづく人間ってのは馬鹿だぜ」

ボッシュ 「オケアノスは居住エリアじゃないにしろ、6000もの軍人が住んでたんだ。それを突然奪われたら、抵抗もするさ」

ケネス 「人の生活を脅かした・・・か。これじゃ、俺達も戦争が大好きなあの連中と大差ないな」

ボッシュ 「そうでもないさ。俺達に制圧に足りる戦力がないのも事実だが、避難勧告も降伏勧告も出したし、伝家の宝刀は抜いてない」

ケネス 「まぁ、俺達はそれでもいいけど・・・ね」

ボッシュ 「・・・R商会、か」


ホセ 「ようやく、合流か。・・・長かったな。概ね、Gレジェンド計画もアフラマズダ計画も成功しつつある。最後の最後で、誤算は入ったようだが」

イブレイ 「は。ダグラスめをのさばらせた私の失態です」

ホセ 「・・・イブレイよ。私は言葉を額面通りに受け取る。謙遜などせず素直に、ダグラスでなく自分に任せろと言え」

イブレイ 「は・・・。失礼いたしました」

ホセ 「私とて、ダグラスを好いている訳ではない。あいつを失脚させるには、材料がいる」

イブレイ 「は、申し訳ありません」

ホセ 「いい。下がれ」

イブレイ 「は、失礼いたします」


ホセ 「それで、アサルトの仕上げはどうなってる。合流までには完成するのだろうな」

部下 「問題なく進んでいます」

ホセ 「期待しているぞ。・・・新型のGの活躍にはな」


アベル 「ここなら・・・誰も」

アベル 「いない・・・な」

アベル 「ダニエルさん、ごめんなさい! コンピュータとIDを借ります!」

アベル 「データ閲覧」

アベル 「機密レベルB」

アベル 「フィルタリング解除」

アベル 「パスワード・・・これだ!」

アベル 「パスワードは・・・ハル・メギド・・・」

パスワードエラー。

アベル 「駄目か・・・。パスワードが変わっちゃってるのかな・・・。はあ・・・」


サーナイア 「むざむざオケアノスを敵の手に渡したなどと・・・!」

ギルバート 「駐在軍フォルビシュ中将より、・・・オケアノス奪回部隊を編成せよ・・・、との事です」

サーナイア 「敗軍の将が! 自分はおめおめと逃げ延びておいて、奪回部隊の編成をしろだと!?」

ギルバート 「自分も、この命令には納得行きません。部隊編成の際には、せめて自分も加えていただきたく・・・」

サーナイア 「要らん」

ギルバート 「し、しかし、フォルビシュ中将の尻拭いをサーナイア少佐が・・・」

サーナイア 「言うな。敗軍の将は私とて同じだ。それに、左遷組のフォルビシュとしては、地球組の私が邪魔なのだよ。失敗して殉職するもよし。万一、奪回に成功すれば自分の手柄。・・・事実上、フォルビシュには私を動かすだけの権限があるのだからな」

ギルバート 「ですが! これでは!」

サーナイア 「私に与えられたのはローネトーナ3隻か。奇策で落とされた以上、奇策では取り戻せない。・・・フォルビシュは私に、死ねと言っているのだよ」

ギルバート 「なら! 私がもう一隻でも・・・」

サーナイア 「ゲノック少佐。ローネトーナは空っぽのまま出撃することになる。残した兵は全て、貴様にくれてやる。お前は、平和ボケした駐在軍軍人にしては、骨があるようだからな」

ギルバート 「なッ」

サーナイア 「フォルビシュは馬鹿じゃない。そして、私もな。貴様ももう少し利口になれ」

サーナイア 「行くぞ」

兵士 「は、はい」

サーナイア 「ローネトーナ3隻を動かすのに必要な最低人員は?」

兵士 「艦長と私を含め、32名、です」

サーナイア 「ふン。・・・悪いな」

兵士 「いえ」


ケネス 「んぉ?」

ルオ 「こちらに居られましたか」

ボッシュ 「若様自ら、わざわざ、何の御用です?」

ルオ 「意見をね、伺いに来た」

ボッシュ 「どうぞ」

ルオ 「依然、抵抗を続ける兵士がいる」

ボッシュ 「ええ」

ルオ 「無論。君たちの希望として、可能な限りの非殺と降伏勧告をやった結果だ。その点は目を瞑ろう」

ボッシュ 「そいつァ、どうも」

ルオ 「だが、議会軍が奪回部隊を動かしつつある。・・・抵抗しなければ、このオケアノスは落ちるだろう」

ボッシュ 「・・・他に、手はありませんか?」

ルオ 「ないから、君の意見を伺いに来た」

ボッシュ 「・・・やはりアナタは怪物だ」

ルオ 「使えるモノは、親でも使う流儀でね。それで粗方は片付くが、逆上して抵抗する連中も出てくるだろう」

ケネス 「その、後始末をしろってか」

ルオ 「ご名答。よろしく頼むよ」


ジーン 「さて、データの吸い出しは終わったが・・・」

ジーン 「どの程度再生できるかね」

ケネス 「この要塞、破壊しちまうよりは、エクレシアに使わせた方が今後のためだろ」

アベル 「そ、それは・・・」

ジーン 「・・ッと! この声・・・。ケネスじゃねえか」

ケネス 「今、オレの仲間が要塞内部に侵入してる。要塞のシステムをジャックするためにな」

アベル 「でもシステムは厳重で、ハッキングは無理だって・・・」

ケネス 「・・・ま。オレを信用しなくてもイイが、あと10分だけ、動力部の破壊は待ってくれ。主砲は、エクレシアが使えば強力な防壁になる。オレを信用しなくていい。あと10分待ってシステムがジャック出来なきゃ、オレの仲間も失敗したってコトだ。その時は破壊しかない。アベル! 力を貸せ!」

ジーン 「・・・ぉぃぉぃ。こいつァ・・・」


アベル 「これじゃ・・・何のために・・・」

イヴリン 「アベル?」

アベル 「っぅわッ! は、はは、はいっ」

イヴリン 「アベル、あんた、コール聞いてないの? 艦長に呼ばれてるわよ」

アベル 「は、はい、スミマセン・・・」


キャロライン 「アベル君、ちょっとこれを見て」

アベル 「は、はい」

キャロライン 「オケアノスがエクレシアの手に渡った事が、幸いだったと言う発言をしたらしいわね」

アベル 「はい」

キャロライン 「オケアノス奪回のために、議会軍が動いたわ」

アベル 「・・・え!?」

キャロライン 「私たちの目的は、エクレシアの解放であって、エクレシアの武装強化じゃないわ」

アベル 「そんな・・・! 戦艦三隻だけでオケアノスに・・・!!」


サーナイア 「そろそろ、敵の射程範囲内か」

兵士 「は、はい。・・・撃ってきますかね」

サーナイア 「撃つ。撃てなければ連中は無能だ。武器は使うことに意味がある。デモンストレーションには最高の花火だよ」

兵士 「艦長・・・」

サーナイア 「さあ、他の乗組員に退官命令を出して、お前も艦を降りろ。ゲノック少佐の補佐でもしてやるがいい」

兵士 「ですが・・・ッ」

サーナイア 「宇宙空間では、何もしなくても艦は進んでくれる。平和ボケした駐在軍の尻に火を付けるには、これぐらいの花火が必要なのだよ」

兵士 「ですが! 何も艦長が!」

サーナイア 「降りろ。艦長命令だ」

兵士 「は・・・、はいッ」

サーナイア 「料理長は、フライパンを握れなくても良いという・・・。艦長は、舵を握れなくても良いという・・・。出世コースまっしぐらで操舵方法を知らないのは運がいいな・・・。逃げ出さなくて済む」


ギルバート 「サーナイア少佐・・・!」


ルオ 「・・・撃て」


アベル 「駄目だ!」


兵士 「艦長・・・!」


光が全てを包む。

サーナイア 「くそったれがあああぁぁぁぁぁ!!!」

やがて、真っ白になる。


アイキャッチ
アイキャッチ「G−GUILTY」

アベル 「無茶だ・・・こんな・・・」

キャロライン 「あの3隻の戦艦で、一体何人の人間が死んだのか・・・。確かに、議会軍は敵です。でも、敵だからと言って殺したくないのはアベル君も私たちも同じはずよ」

アベル 「・・・そんな」

キャロライン 「アベル君、あなたの甘い考えでは、人死にが増える一方よ。浅はかな考えで世界が救えるなんて思わないで」

アベル 「・・・はい・・・」


ギルバート 「・・・そうか。少佐は・・・」

兵士 「はい・・・」

ギルバート 「くそッ・・・! こんな!!」


ケネス 「一掃、か」

ボッシュ 「苦しまずに死ねただろうよ。せめてもの救いだ」

ケネス 「いい子はみんな、天国に行ける」

ボッシュ 「俺達は落第だな」

ケネス 「いい加減、イヤになるし、迷いも出てくる・・・。俺達はホントに、正しいことをしてるのか?」

ボッシュ 「さあな。やり方はともかく、連中はこうやって何百年もの間、秩序を守り続けたんだ・・・。連中は迷いもせず、自分たちが思う、正しい事をしてる」

ケネス 「いい子はみんな、天国に行ける、か・・・。行って来るぜ、地獄に」


アベル (ああなる事を知ってて、ケネスさんは・・・)

アベル (ケネスさんも、信用しちゃいけないのか?)

アベル 「・・・あ」

シャヒーナ 「見た? まるで、メギドの火ね」

アベル 「うん」

シャヒーナ 「あんな火力が常用化されたら、それこそアルマゲドンね・・・」

アベル 「え?」

シャヒーナ 「なに?」

アベル 「え、いや、何でも・・・」


ルオ 「さすがに、これほどの威力となると、肝が縮むな」

ルオ 「衛星レーザー並の超兵器か・・・」

ケネス 「まだ抵抗してる残存兵の位置を知らせてくれ」

ルオ 「了解した。まずはG7エリアに向かってくれ」

ケネス 「・・・サイファー、出るぜ!」


アベル 「ハル・メギド・・・。メギドの丘」

アベル 「ハルメギド・・・アルマゲドン」

アベル 「フィルタリング解除・・・機密B・・・パスワード」

アベル 「・・・アル・・・マゲドン」

パス解除。

アベル 「・・・やった!」


イヴリン 「あら? どしたの? 珍しくドックを離れてこんなトコまで・・・」

ジーン 「たまには、男と油のニオイから離れないとな。艦長、ブリッヂにいるのかい?」

イヴリン 「多分ね。珍しく艦長に直談判?」

ジーン 「ああ。さっき、面白いネタを仕入れたんだ。・・・聞きたいか?」

イヴリン 「メカマンの言う面白いネタには興味ないわ。悪いけど」

ジーン 「そりゃ悪かったな。お前さんにも関係のある話だったが、黙っとくよ」

イヴリン 「あら、そ。後で艦長から聞くわ」

ジーン 「おーぅ、楽しみにしとけ」


アベル 「あ・・・? 手が、震えてる・・・」

アベル 「怖いの・・・? 本当のことを知るのが」

アベル 「駄目だ。僕は・・・、知らなきゃいけない」

キーワード入力。

AE社

アベル 「A・エレクトロニクス社。ユニオンJグループ傘下最大の兵器会社。設立・・・違う、欲しい情報は・・・」

アベル 「キーワード・グレイゾン」

アベル 「AEグレイゾン。A・エレクトロニクス社アフラマズダ機関の特務機関。実践においての最新兵器実験を・・・担う・・・。やっぱり、ホントなのか・・・!」

アベル 「関連・・・アフラマズダ」

アベル 「アフラマズダ。ゾロアスター教における【全てを知る者】 全知全能の神だが、この完全性は最初から備わっているものではなく、現在進行形の善神と悪神との戦いの過程において次第に獲得されて行く。アフラマズダは修行中の神であり、最終的に悪に打ち勝った時に名前の通り全てを知る存在となり、最後の審判の審判者となる・・・?」

アベル 「このアフラマズダの名にちなんで、戦争における、ミリタリー・バランスを保ち、世界の秩序をもたらす機関として、アフラマズダ機関が設立され・・・!? 何・・・なの!? これは・・・?」


ケネス 「もう、戦いは終わったんだよ! 抵抗なんかして命を捨てる意味はあるのかよッ!?」

ケネス 「お前らはッ! そんなに住む場所ってのが大切か! 自分や仲間の命より大切なのか!?」

ケネス 「天国に行ったって、マイホームは待っちゃぃねえんだよッ!!」


ケネス操るサイファーの戦闘をバックに、オーバーラップしてアベルの操るコンピュータ。

戦闘の音が半分消え、アベルがコンピュータの文章を読み上げる独白が流れる。

アベル 「グレイゾンはこの下位組織であり・・・」

アベル 「国家が議会という名の下に集結している現在、抗争は体制勢力と、反体制勢力とに別れる事と予測される」

アベル 「その際、反体制派は概ね劣勢に立たされるため、このサポートをし、反体制派の士気を高める目的を・・・」

アベル 「この命名は、どちらにも属さないGRAY=ZONEから」

アベル 「どちらにも属さないグレイ・ゾーン・・・。グレイゾン」

アベル 「また、この一環としてGレジェンド計画が推し進められ・・・」

アベル 「・・・Gレジェンド計画」

アベル 「かつて、権力に抵抗するシンボルとして崇められた機体Gの名を利用し、反体制組織の士気を高める・・・」

アベル 「そんな・・・」


ジーン 「ぃよう。艦長どの」

キャロライン 「なんです? ブリッヂまで」

ジーン 「ちょっとね、お話ししたい事が」

キャロライン 「・・・わかりました。5分だけ待ってください」

ジーン 「了解です」


アベル 「みんなが・・・、みんなは・・・、僕は・・・、戦争を・・・、戦争に加担して・・・」

アベル 「僕は・・・、一体、誰のために・・・、何をして・・・」


次回予告

ナレーション 「閉ざされていたアベルの過去が紐解かれる。過酷な死の訓練を勝ち抜いたアベルは、生ける兵器の道を選ぶのか、それとも・・・ 次回、『甦る、記憶』 Gの鼓動が、今、目覚める」

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