アベル 「・・・イヴリンさん! 僕、ザカリアのサポートに回ります!」

イヴリン 「アベル!? そんなのは命令にないでしょッ! 戻りなさい!」


ザカリア 「落ちな」

空中で力をなくして落下するマシンが3体。落ちる先は、Kの1監房。

ザカリア 「あーばよ」

落下するマシンの一体が監房を直撃する寸前。それを貫くビームライフル。

ザカリア 「なに!?」

続いて落ちるもう一体が爆風に飛ばされ、もう一体を受け止めたのは、ソードケイン。

アベル 「間に合った!」

ザカリア 「おいっ!? アベルか!? 命令外行動だろ!」


ナレーション 「独立自治権を勝ち取った宇宙移民者群セツルメントは、ようやく得た平和の中に麻痺し、やがては特権主義社会を生み出し、結局は自らが小セツルメントへの圧政を強いるようになる。時に宇宙世紀255年。各地で起きたセツルメント内紛争は、体制側と、反体制側に別れてその共同戦線を張り、セツルメント間による強大な戦禍を巻き起こしつつあった」



タイトル

「疑惑の日」

− A suspicious day −



アベルを殴り飛ばすザカリア。

ザカリア 「てめえっ!? 何をやったかわかってるのか!?」

アベル 「く・・・。命令違反はしたよっ! だけど、結果的には全員助けられたじゃないか!」

AJ(回想) 「わかってるな、ザカリア」

ザカリア 「・・・ちっ! コレじゃあ、何のための軍規かわかりゃしねえぜ!」

イブレイ 「ふむ。立ちたまえ、アベル君。キミは何故、命令外の行動をしたのかね?」

アベル 「全員を、助け出したかったから、です」

ザカリア 「なんだァ!? てめえっ! 俺1人じゃ出来なかったとでも言いたいのか!?」

アベル 「そうじゃない」

イブレイ 「黙っていろ、ザカリア。今回の作戦は、ダグラス長官の部隊だけでなく、副官である私の部隊も動いている。命令外の行動がどんな影響を及ぼすか、考えたことはあるかね? 今回は結果こそ良かったものの、武装ナシで待機していたイヴリンが攻撃されていたらどうなっていた?」

アベル 「申し訳、ありませんでした」

イブレイ 「さきほど、ダグラス長官と話し合った結果、反省房に謹慎三日という事で処分は決定している。今回は作戦結果を重視しての話だ。だが、次にこのような事があれば厳罰だという事を忘れないように」

アベル 「はい」


ユーニス 「あっ、こら。ハリー」


ザカリア 「けっ、冗談じゃねえぜ。俺の手柄を潰された上に悪者扱いかよ。やってられねえぜ」

バーナバス 「はっはは、クルーは皆、お前が正しかった事を知ってる。気に病むな」

ザカリア 「それにしたって、アベルの野郎・・・」

バーナバス 「聞けば、命令違反は初めてじゃないらしいな、イヴリン」

イヴリン 「真っ直ぐなのよ、あの子。自分が悪い事をしたって思ってないもの・・・」

ザカリア 「俺だって思ってねえよ」

バーナバス 「軍規として、命令外行動だけならまだしも、作戦に支障をきたしたンじゃあな」


ユーニス 「っ!」


イヴリン 「・・・。待って。アベルは正しい事をし、全員を無事に救出したわ。その事実に異論はないわね」

ザカリア 「はァ!?」

バーナバス 「おいおい、イヴリン。それじゃザカリアの立場がないだろ」

イヴリン 「2人とも落ち着いてよ。【良き隣人の耳を持て】でしょう?」

ザカリア 「・・・あ? ああ」

バーナバス 「なるほど。確かに。・・・だが、アベル個人の行動や正義感だけで戦争が終わらせられる訳じゃない。任務を確実にこなす上で、個人の身勝手な行動は禁物だ」

イヴリン 「わかったわ。同じチームとして、アタシからもよく言っておく。ザカリアも、それで許して貰えるかしら」

ザカリア 「O.K. 言っとくけど、俺、イヴリンよりは、アベルとの付き合い長いんだぜ。マジで怒ってる訳じゃねーよ」

イヴリン 「ありがと。なら、それで今回の件は水に流してあげて」


ユーニス 「イヴリンさん・・・」


ギルバート 「自分が、でありますか」

サーナイア 「そうだ。軍では早々から貴様のタグの一枚を回収していた。死亡確認がなされていたという訳だ。死亡による2階級特進を今更取り消しはできんだろう」

ギルバート 「しっ、しかし、自分は中尉にもなったばかりであり、その、まして艦長と並ぶ少佐など・・・」

サーナイア 「ならば、階級に恥じぬように働け。どちらにせよ、駐在軍本隊との合流までは、私の命令で動いてもらう。この艦ではディザール隊の指揮を暫定しておく」

ギルバート 「はっ」

サーナイア 「それと、駐屯地からの補充兵士2名は貴様の直轄としておく」

エナ 「エナ・ルイス曹長です」

ミア 「ミア・ルイス曹長です」

ギルバート 「ぐっ・・・、よろしく、頼む」

エナ・ミア 「よろしくお願いします、少佐」

サーナイア 「随分と若いが、パイロットとしては優秀だそうだ。振り回されんようにな」

ギルバート 「は、はい」


2人を無視するようにして早歩きのギルバート。

ミア 「しょうさ〜」

ギルバート 「何だ」

エナ 「艦長から、押し付けられたって思ってらっしゃるでしょ」

ギルバート 「そんなことは、ない、ぞ。しかし、その、なんだ? その髪の色は?」

ミア 「ふふふ〜。あたしたち、双子だから、見分けが付くようにこうしてるんです」

エナ 「もともとは同じ銀髪なんです」

ギルバート 「そ、それはともかく、ここは軍だ。せめて、その気の抜けたしゃべり方は直せ」

ミア 「あー、ひどーい。命令されちゃった」

ギルバート 「当たり前だ!」

エナ 「あら、命令するのはあたし達ですよ」

ギルバート 「なに!?」

ミア 「お尻に爆弾でも埋め込めば、大人しくなるか〜」

ギルバート 「なっ!? お前らっ!?」

エナ 「ふふ。お尻のオモチャは無事に取り出せました?」

ギルバートの尻をなでるエナ。

ギルバート 「シャイロンのっ・・・!!」

ミア 「うふふ〜。だから、あたし達が命令するの」

エナ 「本来なら、少佐の手を煩わせる程ではなかったんですけど、上の階級でないと出来ない事も、色々あるじゃないですか」

ミア 「だから、ね? 少佐」

ギルバート 「なんて・・・コトだ」

エナ 「地球議会軍って、セグメントへの圧力を掛けるためとは言え、地球から離れすぎた所に駐在軍本部を設置したのは失策ですよね」


反省房のアベル。分厚い壁越しに、ユーニスが話しかける。

ユーニス 「お兄ちゃん、大丈夫?」

アベル 「大丈夫。ここにいるとあんまり良くないよ。部屋にお帰り」

ユーニス 「みんなが、ね、悪いのはお兄ちゃんだって、バーナバスさんや、ザカリアさんまで・・・。イヴリンさんだけが庇ってくれて・・・」

アベル 「命令違反をした事は事実だから。・・・僕の一存だけで戦争は終わらないんだ。みんなの言ってる事は正しい」

ユーニス 「でもっ・・・、ひどいよ。」

アベル 「仕方ないよ。イブレイさんの言うとおり、たまたま結果が良かったからで、イヴリンさんたちを危険な目に遭わせた事には違いないんだ・・・」

イヴリン 「ユーニス、駄目でしょう。ここに来ちゃ」

ユーニス 「イヴリンさん・・・」

イヴリン 「アベル、今更アタシが何か言うまでもなくわかってると思うけど・・・」

アベル 「はい」

イヴリン 「アタシ達パイロットの仕事は、与えられた任務を着実にこなす事よ。どうすれば戦争に勝てるかを考える事じゃないわ」

アベル 「・・・はい」

イヴリン 「あなたはおろか、アタシも、敵の軍隊の規模や作戦についての知識は皆無よ。そのために、グレイゾンの偉い人たちが知恵を出し合って作戦を考えてる。・・・時には、その作戦が間違いに思えたり、ホントに間違うことだってあるかも知れない。・・・でも、アタシ達パイロットが考え得るどんな作戦よりも、いい結果を出せる・・・」

アベル 「でも、僕は目の前で人が死ぬ様を・・・」

イヴリン 「わかってる。・・・わかってるわ、アベル」

ユーニス 「・・・イヴリンさん」


サーナイア 「この宙域が安全だと!? ふん、駐屯基地の人間どもはセグメントにおだてられた腑抜けばかりだ! 事態の深刻さを理解しておらん! コア12からの補給はまだか!?」

兵士 「あ、あの、先ほど艦長が席を外されている時に、補給部隊からの連絡が・・・」

サーナイア 「早く報告せんか!」

兵士 「は、はいっ。申し訳ありません! 補給部隊は明後日の早朝6:00時に到着の予定、との事です」

サーナイア 「明後日の朝だと!? どうして駐屯部隊は護衛を出さない!? コア10は落ちたんだ! 敵は傍に潜んでいるんだぞ! ココは安全だとでも思っているのか!」

兵士 「い、いえっ、それで、我が艦からの護衛は・・・」

サーナイア 「ギルバートを出させろ!」

兵士 「了解しましたっ! ・・・ふぅ、おっかない」


アイキャッチ
アイキャッチ「G−GUILTY」

シャヒーナ 「こんな所で寝たら、風邪をひくわ」

ユーニス 「大丈夫、です」

シャヒーナ 「アベル。食事、持ってきたわ。・・・アベル?」

ユーニス 「あたしが、食べさせます」

シャヒーナ 「そう。お願いするわ」


ケーラー 「サンプルA、アベルの直情型は計算通りだ。それをコントロールするために、ユーニスとシャヒーナを使ってる。こちらをコントロール出来ないと言うのは、私の管轄ではないよ」

キャロライン 「しかし、ザカリアは問題なく成長しています」

ケーラー 「クレイドル機関は、四種類の感情から戦闘のスペシャリストを生む事を考えた。ひとつが、愛情。もう一つは、破壊衝動」

キャロライン 「アベルとザカリア、ですね」

ケーラー 「あとのふたつは、ゲーム。つまり、全てを遊びだと考える。そして、盲信。正邪の倫理から植え付ける事だ」

キャロライン 「先の3人ですね」

ケーラー 「数値上での成績はアベルがトップ、ザカリアはドン尻だ。実戦では、それが逆転しつつある。実に興味のある話じゃないか」

キャロライン 「ドクターは、つまり、方針を変える予定はない、と」

ケーラー 「私の仕事は最強の戦士を造り上げる事だ。それを使いこなす事ではないよ」

AJ 「艦長、コア11に動きがあった。来てくれ」

キャロライン 「はい、ただいま。ドクター、それでは」

ケーラー 「ああ」


ギルバート 「いきなりの任務だが、着実にこなしていこう」

ミア 「りょうかい〜。補給艦を守ればいいんですよね」

ギルバート 「そうだ。近くで、バルバロイと海賊の艦が確認されてるからな。場合によっては戦闘もあり得る」

エナ 「大丈夫ですよ、少佐。あたし達が守ってあげますから」

ギルバート 「な、ルイス曹長!」

ミア 「だいじょうぶですよ。あたし達、優秀なんだから」

ギルバート 「くそっ、ギルバート・ゲノック! 出るぞ!」

エナ 「あら。エナ・ルイス、出ます」

ミア 「ミアも出まーす」


キャロライン 「コア12から、11への補給艦、ですね」

AJ 「いかにも」

イブレイ 「この宙域での戦闘は、派手なパフォーマンスになる。まして、非武装の補給船を叩いたとなれば」

AJ 「地球議会は、エクレシアに対して宣戦布告の大義名分を得る事となる」

キャロライン 「この距離ですと、明日の夜までには行動を開始したいですね」

AJ 「なら、ソードケインとヴォーテックスを使おう」

イブレイ 「アベルの謹慎を解くのはいただけないな」

AJ 「ここで挽回させるさ」


シャヒーナ 「結局、ここで寝たのね。大丈夫?」

ユーニス 「平気です」

シャヒーナ 「アベル、出てもいいそうよ」

アベル 「どうして? まだ早いよ」

シャヒーナ 「艦長命令。謹慎より大事な任務があるんじゃないの」

アベル 「よっ・・・と、ユーニス。駄目だろ。おはよう、シャヒーナ」

シャヒーナ 「思ったより、元気じゃない」

アベル 「うん。寝たら、何だかスッキリしたんだ」


キャロライン 「今回は機動性でソードケインとヴォーテックスが選ばれました。任務終了後の再謹慎が不満なら、是が非でも補給艦を叩いて」

アベル 「了解です」

キャロライン 「いいわね、アベル君。今回の敵は補給艦よ」

アベル 「はい」

イヴリン 「補給物資を断てば、敵の戦闘力そのものが低下するわ。これが作戦」

アベル 「はい」

イヴリン 「補給艦は、大した武装をしていないから、可能性としちゃ、一方的な戦闘になるかも知れないわ」

アベル 「承知してます」

イヴリン 「それを一方的な虐殺と思うんなら、ソードケインを降りて独房へ戻りなさい。そうじゃないのなら・・・」

アベル 「・・・ソードケイン、出ます!」


エナ 「反応有り、来ます」

ギルバート 「敵機か!?」

ミア 「来た来た来たぁー」

エナ 「6時の方角より、2機。データなし、ふふ、海賊か救世主様ですよ」

ギルバート 「ただちに戦闘配置!」

ミア 「少佐は見ててくださーい。たっぷり見せてあげますから」

ギルバート 「ふざけるな。これは演習じゃないんだぞ」

エナ 「いいじゃないですか。下手に混じると、少佐が怪我しますよ」

ミア 「いくよー」


イヴリン 「来るわ。敵機3。後方に艦1」

アベル 「一機が動いてません。個別撃破しますか」

イヴリン 「了解。残りの一機に気を付けて」

アベル 「はい!」


ギルバート 「あの、白い奴か! 艦には近付けさせるな!」

エナ 「少佐はそこでゴールキーパーしてて下さいな」

ミア 「はっやーい! ひょっとして、コイツってば」

エナ 「伝説の救世主様よ」

アベル 「こいつ! なんだ!?」

イヴリン 「拡散砲をかわすの!?」

ギルバート 「あいつら・・・互角だと!?」

アベル 「当たらない! この交わし方!?」

イヴリン 「まるでアベル君のコピーじゃないの!?」

ミア 「やっぱりね! そうだと思った」

アベル 「マシンの性能ならこっちが上のはず!」

エナ 「マシンの性能差に頼ってるようじゃ!」

イヴリン 「強い! こいつらっ」

ギルバート 「互角なら・・・、今なら・・・、俺がッッ!!」

ライフルを撃つギルバート。しかし、集中しているミアの妨げにしかならない。

ミア 「邪魔すんなっ! ギルバート!」

アベル 「チャンス!」

ミアのマシンの腕を切り落とすソードケイン。

ミア 「やった! やったな! やったなコイツ! くそおおぉぉ!」

エナ 「ミア、熱くならないで。撤退するわ」

ミア 「なんでさ!?」

アベル 「追います!」

イヴリン 「駄目よ、撤退して。タイムリミット・・・、作戦失敗よ」

アベル 「う、ほ、補給艦が・・・」

イヴリン 「マシンの撃破に気を取られたあたし達が馬鹿だったわ・・・。それにしても、今のパイロット・・・」

アベル 「今の、マシンの、腕・・・」

切り落としたマシンのパーツに、【æ】のロゴマークを見つけるアベル。

アベル 「え? このロゴマーク・・・?」

次回予告

ナレーション 「クブラカンの密命を負って、ハンはシャングリ・ラへと潜入する。そしてそれは、仕組まれた悪夢の始まりとなるのだった。だが、遠く離れた地球へ忍び寄る災厄に、アベルはなす術もなく、たた、歯噛みするしかなかった・・・。 次回、『開戦前夜』 Gの鼓動が、今、目覚める」

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