演説台に立つセイン将軍

セイン 「この度、我々がバルバロイ掃討の為に乗り出すのは、平和を望む善良な宇宙移民者の為、ひいては地球に住む我々の為である!」

オーディエンスの中に、冷ややかな目の男。

ハワード 「・・・・・・」

セイン 「かつて宇宙移民者は独立を願い、我々はそれを許可した! それは言うまでもなく、幾度となく地球への侵攻や帰還を繰り返そうとする野蛮な宇宙移民者を、宇宙移民者自身の手で管理させる事が解決の方法だと思われたからだ!」

セイン 「だが諸君、現実はどうだ!? セグメントは管理不足にとどまらず、バルバロイの蛮行をはびこらせ、難民に自治を許すまでとなった!」

ゲスト席の政治家たち

ロイド 「・・・・・・」

セイン 「更に統率力を失ったセグメントの取った手段は何だ!? そう、とうとう我々への援助を求めてきたのだ。しかも、我々が送り出した援軍を危険に晒し、自らは背を向けて逃げ出したと聞く!」

セイン 「我々は今こそ、不穏な反乱分子を排除し、絶対なる力を持って、再び宇宙移民者を管理管轄下におかねばならぬのだ!」

再び、オーディエンスへ。

ハワード 「ふン。・・・茶番だな。軍人に芝居は似合わんよ」


ナレーション 「独立自治権を勝ち取った宇宙移民者群セツルメントは、ようやく得た平和の中に麻痺し、やがては特権主義社会を生み出し、結局は自らが小セツルメントへの圧政を強いるようになる。時に宇宙世紀255年。各地で起きたセツルメント内紛争は、体制側と、反体制側に別れてその共同戦線を張り、セツルメント間による強大な戦禍を巻き起こしつつあった」



タイトル

「この広い宇宙の中で」

− In this universe −



演説を終え、舞台裏へ下がるセイン。それを迎えるロイド。

ロイド 「見事な演説でしたな、ランデル・セイン将軍。まるで舞台を見ているようだった」

セイン 「これは・・・。ロイド副議長」

ロイド 「軍人に活力があるのは結構ですな、セイン将軍。・・・が、近頃、あなたが政治的な事にまで興味をもっていると言う、良からぬ噂を聞く。噂であると、わかってはいるがね」

セイン 「私は骨の髄まで軍人です。まつりごとの出来る人間ではありません」

ロイド 「そう。軍人はコマであって、軍部は戦略を考えるにとどまればいい。政治は軍部に敗北さえも要求する。その意味も飲み込めぬ軍人は、政治の舞台に上がるべきじゃない。私の言いたい事はわかるね?」

セイン 「我々は、用意された戦場で勝つ事だけが使命だと思っております。政治に色気など・・・」

ロイド 「結構。最近はマグワイア議長が忙しくされていて、大変に疲れていらっしゃる。甘いデザートには目がないようだ」

セイン 「マグワイア議長は忙しいのは存じております。近頃はTVでしか拝見しておりませんから」

ロイド 「わかっているとは思うが、議長は私の傀儡だ。客を集めるためアイドルに過ぎん。君が軍人のアイドルであるようにな。くれぐれも妙な気は起こすなよ。充分に甘い汁は吸わせてやる」

セイン 「は・・・」

セイン 「・・・くそっ、ロイドめ」


ロイド 「・・・ふぅ」

ハワード 「いい演技でしたよ、ロイド副議長。あなたは最高の役者だ」

ロイド 「よしてくれ、ハワード」

ハワード 「わかっているとは思いますが、あなたは私の傀儡です。矢面に立たせるカカシに過ぎません。愚か者のマグワイアを議長に仕立てているようにね」

ロイド 「わかっているよ。我々は役者で、脚本家は君だ」

ハワード 「くれぐれも妙な気は起こさないで下さい。充分に甘い汁は吸わせてあげますから」


リポーター 「ご覧下さい! 今、バルバロイと通じ、クーデターを画策したとされる首謀者、ヘンリー・パーノッド宙将が逮捕・連行される瞬間です!」

リポーター 「これまで、政府転覆を企てたとして、反逆罪の容疑で逮捕されたのは4人。容疑者は全てクーデターそのものを否定していました。しかし、今回逮捕されたのは、パウル・リカード大将以下に2名しかいない宙将です」

リポーター 「しかも、パーノッド宙将は容疑を認めているとの事です。さらに、これを機にこれまでの逮捕者も容疑を認め始めているとの情報までが入ってきています」


シャイロン 「これで容疑は晴れたかな? ルクレール・ミロ副官」

ルクレール 「いえ、私は・・・」

シャイロン 「ちなみに、君への辞令が、リカード大将から届いたよ。昇格だ。私もだが」

ルクレール 「我々が・・・、敗残兵が昇格ですか!?」

シャイロン 「それを言われると耳が痛いな」

ルクレール 「まさか、パーノッド宙将を失墜させる為だけに、クーデターを成功させ、セツルメントを2つも放棄したのですかっ・・・!?」

シャイロン 「さあな。私は軍人だ。政治や派閥の事はわからんよ。我々は政治という戦場では、指揮される側でしかない」

ルクレール 「そう・・・、ですが」

ルクレール (だとすれば、あのクブラカンという男は何者だ? 一体、何がどうなっている?)


ダニエル 「よーし、とりあえずはココでいいだろう。今はこの屑鉄で身を隠す。既にセグメント・フォースの警戒宙域だ。くれぐれも電波発信や熱源、光を出さないように気を付けてくれよ」

キャロライン 「ブラントン中尉、この程度のカモフラージュで大丈夫なの?」

ダニエル 「レーダーの反応レベルからすれば充分ですよ。艦長どの」

キャロライン 「目視レベルでは丸見えだわ」

ダニエル 「丸見えとは言っても、この広い宇宙ですから、目視できる距離も範囲も限られます」

キャロライン 「だとイイけど」

ダニエル 「コレだけ隠したから100%安全なんて虫のイイ話はありませんよ。それに、万一戦闘になっても、この鉄屑が物理的なバリアになります」


ニュース。

アベル 「どう言う事なんです? このニュース」

AJ 「セグメント・フォースが真っ二つに割れた。そういう事だな」

シャヒーナ 「つまり、セグメント・フォースの一派閥が、私たちと同じ、反乱分子とみなされた・・・」

AJ 「そうだ。これからはセグメントの内部でも、パーノッド派狩りが行なわれるだろう」

アベル 「それじゃ、その部下の人達はどうなるんです? 見殺しですか?」

AJ 「違うな。彼の逮捕が火種になり、新たなる反発を生み出す」

アベル 「新たなる反発・・・、彼らの仲間が増えるって事ですか?」

AJ 「アベル。君は優秀なパイロットだが、一人では補給も修理も受けられない。勝ち目はないんだ。だが、自分を犠牲にさえすれば仲間や、もっと優秀なパイロットが増えるならどうする? パーノッド宙将は今がその時期だと判断した。だから、クーデター首謀者の名を請けるんだ」

シャヒーナ 「ヘンリー・パーノッド・・・。彼が、この船のスポンサーなの?」

AJ 「シャヒーナ、君は利口だな。戦い続けるためには、仲間が必要だ。そして、仲間を全員食べさせていく台所も必要になる」

シャヒーナ 「政治の話は苦手です。明日食べるパン1枚のために、政治なんて必要ありませんから」

AJ 「それでも1年先、パンを食べ続けていくために政治は必要なんだよ、シャヒーナ」


ジーン 「よーし、コレでようやっと、UN−JACアタッチメントが起動できるぞぉ。コイツさえありゃ、いちいち装備を変えて出なくても、射出一発で完了!」

イヴリン 「ったく、冗談じゃないわよ。アタシが余計にサポート役じゃない」

ジーン 「お前さん、議会軍出身だろ。役人はサボるのが得意じゃないのか?」

イヴリン 「はん、何でも自分を基準にモノを考えないで頂きたいコトですわね」

ジーン 「んだよ、オレぁサボってねえぞッ」


ケネス 「あーらら。こりゃまた、運がいいのか悪いのか」

ボッシュ 「まさか、同じ事を考えて、同じ場所に身を隠すとはな」

ケネス 「この広い宇宙だってのに、世の中狭いねぇ」

ボッシュ 「・・・どうする? やり過ごすか、逃げるか、それとも」

ケネス 「叩くか、だな。こんな所で逃げるのは得策じゃない。やるか、見過ごすか」

ボッシュ 「戦力的には不利だが、もし叩けるなら、後々は楽になるな」

ケネス 「そう言うと思ったぜ。サイファーで出る」

ボッシュ 「俺もそう言うと思った。勘違いするなよ、今回は奇襲だ。連中の足並みが揃うまでに叩けなけりゃ、勝ち目はない」

ケネス 「わぁってるよ。そもそも、沈められるとは思っちゃいないし、沈めちまったら大事だ」

ボッシュ 「あくまで、親玉を引きずり出す餌だからな」

ケネス 「随分と凶暴な餌だけどな」

ボッシュ 「目的は艦へのダメージと、・・・あわよくば、Gの破壊」

ケネス 「後方支援は2分でいい。後は、全速で逃げてくれ。任務の完遂未遂を問わず、ランデブー・ポイントは18バンチでいいな」

ボッシュ 「ああ。奇襲を掛けるったって、相手はグレイゾンだ。生き延びる事を最優先しろよ」

ケネス 「俺ぁ、いつでもそうしてるぜ。チキン・ハートなんでね」

ボッシュ 「ふン。Gを仕留められたら、ターキーをご馳走してやるよ」

ケネス 「ソースは、赤ワインにしてくれ。オレンジ・ソースは苦手なんだ」

ボッシュ 「コックに言え。作るのは俺じゃない」


アイキャッチ
アイキャッチ「G−GUILTY」

ケネス 「ボッシュ、派手に頼むぜ。一発目は撹乱でいい」


ボッシュ 「行くぞ野郎ども! ブチかましたら撃てるだけ撃って、すぐにケツをまくれ!」

クルー 「ラジャー!」

ボッシュ 「撃てえっ!」


ダニエル 「後方より熱源!? 艦長! 緊急事態です!」

キャロライン 「冗談でしょ!? 直ちに第一戦闘配備! マシン、対空砲座砲手ともに急いで! ・・・まったく、広い宇宙だわ」


アベル 「まさか敵が潜んでたなんて!」

イヴリン 「・・・多分、海賊ね」

アベル 「先に行きます! カタパルト借りますよ!」

ジーン 「ぶっつけ本番だが、装備の着装は宇宙でやる! ヴォーテックスの後に出すからな!」

アベル 「はい! アベル、ソードケイン、出ます! うわっ」


ケネス 「チッ、コイツの火力じゃカタパルトごとは破壊できねえか!! それでも・・・」

ケネス 「待ってましたぁ! ・・・くっ、ゴミが邪魔だよッ」


アベル 「なっ! 何で!? もう入り込んでるの!?」

ケネス 「ちっ、よけるかッ!」


ジーン 「ブリッヂ! 射出口が大火事だ。消化班回してくれッ」

イヴリン 「やってくれるわよ! 変形させて出るわ」

ジーン 「無茶言うな! デッキで変形できるか! せめてドックまで戻れ!」

イヴリン 「そんな余裕ないわよ! 言っとくけど、あたしだってエリートパイロットなんだから! これぐらいっ・・? きゃあああっ!?」

ジーン 「かー・・・。言わんこっちゃない。腕前の前に、物理の問題だよ」

ダニエル 「イヴリン、遊んでる場合じゃないぞ!」

イヴリン 「・・・」


アベル 「やらせない!」

ケネス 「意気込みは買ってやるよ!」


ジーン 「ちっ、カタパルトがこれじゃ、UN−JACアタッチメントも鉄クズ同然だぞ」

ダニエル 「早くイヴリンの馬鹿をどけさせろッ! 敵機はサイファーだ! アベル一人じゃ食い止めるのが精一杯だ!」

イヴリン 「ケネスっ! 動いてよッ! この馬鹿マシンッ!」

キャロライン 「漫才やってる場合じゃないでしょッ! 急いで!!」


ボッシュ 「・・・よし。敵艦は混乱してる!」

ボッシュ 「このまま撃ち続けて、全速で後退しろ!」

ボッシュ 「・・・うまくやれよ、ケネス」


ケネス 「へっへっ、どうやら宇宙用装備を艦に忘れてきたらしいな。動きが鈍いぜぇ」

アベル 「くっ、追い付かないッ! Gシリーズが敵だなんてっ」

ケネス 「イヴリンが出てこないって事は、出られないって事だ! 悪いが、やれる所までやらせてもらう!」

アベル 「装備が無くたってぇっ!」

ケネス 「どうやら、基本性能はこっちが上らしいな。新米さんよっ」

アベル 「沈めるもんかっ」


クルー 「か、艦長ッ! 高速接近する艦が一隻っ!」

ボッシュ 「なにっ!? なんで気付かなかったぁッ!?」

クルー 「無理ですよッ こっちも戦闘中なんですよッ!」

ボッシュ 「軌道は!?」

クルー 「両艦のコース・・・ッ! 接触の可能性有り!!」

ボッシュ 「計算してないで、全速で回避!!」


イブレイ 「はは、ネズミを相手に、ちょっと脅かせ過ぎたかな」

クルー 「艦長のおっしゃるとおり、戦闘の光でしたね。今の艦へは?」

イブレイ 「放っておけ。奴らのまともな戦力はG一機だけに過ぎん。もっとも、それが驚異とも言えるが・・・」

クルー 「・・・確認しました。ソードケインとサイファーです」

「よし。パーチ、バーナバス、色男のA・J・ダグラス殿に恩を売るには良い機会だ。ギリギリまで待って出ろ」

パーチ・バーナバス 「了解」


ボッシュ 「脅しか・・・? だが、あの艦はさっきのと同型・・・。グレイゾンか」

クルー 「そう、でしょうね」

ボッシュ 「ケネスがヤバいな・・・」

クルー 「助けに、戻ります?」

ボッシュ 「戻ったら、間違いなく全滅、だな」

クルー 「・・・ですよね」


ケネス 「しつこいっ!」

アベル 「機体差があるなら、操縦でカバーすればっ」

ケネス 「コイツっ・・・! だけど、コレならどうだ!?」

アベル 「UN−JACッ! 何度も何度もやられませんよっ」

ケネス 「ジャックされたかッ! さすがだよっ! しかし、そいつァ一機じゃないぜっ」

アベル 「くっ・・・、数が多過ぎるっ」

ケネス 「その頑張りが、いつまで続くかッ」

アベル 「まだっ! これぐらいでっ」

ケネス 「なにッ!?」


パーチ 「あれ? 避けられた」

バーナバス 「しっかり狙えよ? パーチ」

パーチ 「狙いは正確だったよ。ケネスが避けたんだ」

バーナバス 「ふン!」


アベル 「スレッジ!? バーナバスさん!? それに、クロスボウも!!」

ケネス 「ぉぃぉぃぉぃぉぃぉぃぉぃ、聞いてないぞぉ、ボッシュ!」


イヴリン 「援軍!?」

ジーン 「ぃヨシッ! イブレイ隊か! 助かったぞッ」


AJ 「やれやれ、皮肉な相手に助けられたな・・・」


バーナバス 「ケネス! どうした! 逃げるのか!?」

ケネス 「G3機を相手に戦う馬鹿が・・・」

バーナバス 「ちっ、スレッジの推力じゃ・・・。パーチっ、撃ち落とせ!」


パーチ 「せっかく形勢逆転したのに。・・・ちぇ、また避けた」


ケネス 「ナシナシっ! 今の奇襲、無かったことにするから、撤退させてくれよッ」

パーチ 「逃がさない、と」

ケネス 「冗談ッ! ターキーを食い損ねたじゃねえかッ」

パーチ 「・・・は。」


イブレイ 「裏切り者を始末できるって時に、最速のヴォーテックスが出ていないとはな・・・。ダグラスめ」

クルー 「は?」

イブレイ 「パーチとバーナバスに追撃中止の信号弾を。スレッジならまだしも、クロスボウのスピードではサイファーに勝てん」

クルー 「はっ。了解しましたっ。信号弾用意、方角は・・・」


バーナバス 「ちっ、落とせそうなモンだがな・・・。ん?」

アベル 「バーナバスさん、助かりました」

バーナバス 「久しぶりだな。ボウズ。随分と苦戦してたじゃねえか」

アベル 「すみません」

バーナバス 「イイって事よ。俺らが合流したからには、お前さんを楽させてやれるぜ。子供を働かせるのは性分じゃねえ」

アベル 「じゃあ、バーナバスさんの退役後は僕が面倒見ますよ」

バーナバス 「言うようになったな、ボウズ! その調子なら心配は必要ねえや」


シャヒーナ 「助かった、の?」

AJ 「そのようだな。少々、嫌味な男に、ではあるがね」

キャロライン 「長官、イブレイ補佐官から通信です。繋ぎましょうか」

AJ 「繋がなくていい。どうせ会わなきゃならん。接舷準備を」

キャロライン 「了解しました」



次回予告

ナレーション 「新たなる力。新たなる仲間。そして、新たなる任務を帯び、プリズンを目指すアベルたち。しかし、何の因果か、アベルはまたしても海賊・ケネスと相まみえる事になるのだった。 次回、『それぞれの思惑』 Gの鼓動が、今目覚める」

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