ケネス 「はーい。いよいよ大詰めとなってまいりましたクォージィ・カップ。レースの途中経過を聞いてみましょう。実況のボッシュ・アーチャーさ〜ん」

ボッシュ 「ケネス、ふざけるな。お遊びじゃないんだぞ」

ケネス 「わかってるって。で、実際の所、順位はどうなってる?」

ボッシュ 「ふン。まだ正確なポイントまではわからんが、直線コースを取ってる連中は、先頭がセグメント、その尻尾にくっついてるのが議会軍だ。やや遅れてセグメントの残党。グレイゾンはその後ろにつけてる。斜めからの割り込みコースを取ってるのが俺たちだが、実質は3位だな。一切の交戦がなければ、先頭にも出られるだろう」

ケネス 「トップに立ったら、どうせ戦闘なんだけどな」

ボッシュ 「・・・それと、もうひとつ、最後尾だが、同じく割り込みしようって連中がいる。今の所、所属は不明だ」

ケネス 「どうやら、レースは混戦の様相を呈してまいりました。ボッシュさんは、誰が優勝するとお考えですか?」

ボッシュ 「いい加減にしろ、ケネス」

ケネス 「ノリ悪いな・・・。まぁいいや、ボッシュ! 祝杯と勝利者インタビューの用意しとけよ」

ボッシュ 「ふン・・・」


ナレーション 「独立自治権を勝ち取った宇宙移民者群セツルメントは、ようやく得た平和の中に麻痺し、やがては特権主義社会を生み出し、結局は自らが小セツルメントへの圧政を強いるようになる。時に宇宙世紀255年。各地で起きたセツルメント内紛争は、体制側と、反体制側に別れてその共同戦線を張り、セツルメント間による強大な戦禍を巻き起こしつつあった」



タイトル

「決死のラリー」

− Death rally −



キャロライン 「後退中のセグメント艦へは、距離を保って追跡、のままでよろしいですね」

AJ 「結構。交戦は時間の無駄だ。イブレイ隊との合流にだけは遅れられんからな」

キャロライン 「まさか、彼に負ける訳にはいきませんものね。・・・発案者としては」

AJ 「イブレイよりも先にゴールしないと、一生、ホセに舐められたままだな」

キャロライン 「大丈夫。全て、予定通りに動いてますわ」

AJ 「Gシリーズの投入、コア9、10の奪還、パーノッド派の蜂起。決戦場はコア11”クォージィ”・・・。順調に・・・、完璧過ぎるぐらいだ」

キャロライン 「不安材料があるとすれば、アンセスター・・・」

AJ 「例の海賊どもか。連中は必死で決戦を阻止しに来る。・・・間違いなく」

キャロライン 「彼らが先回りをするとすれば、周回軌道上のこのコースです。時間的に言えば、全員が鉢合わせしかねません」

AJ 「とんだランデブー・ポイントだな」

キャロライン 「ポイント到達まで、約4時間」

AJ 「4時間後が勝負、か」


ユーニス 「追い付けるんでしょ? なんでやっつけないの?」

アベル 「追い付きたいのは、そっちじゃないんだ」

イヴリン 「マラソンで言えば、あたしたちは4位。この3位の向こうに、1位と2位がいるのよ。3位争奪戦をしてたら、優勝できないわ」

ユーニス 「ふうん。でも、そしたら敵が増えちゃわない?」

アベル 「先にゴールされちゃった方が、もっと増えるんだよ」

イヴリン 「ゴールテープの向こうは、それこそセグメントの支配下だからね」

アベル 「敵の国・・・」


兵士 「このまま行けば6時間後、明朝6:00。予定通り”クォージィ”宙域へ到達致します」

シャイロン 「結構」

ルクレール 「・・・後続のレメッドが、追われています」

シャイロン 「さて。それが問題だな。彼らには、このまま合流コースを取らせて追跡者を迎え撃つか。わずかにコースアウトさせて足どめ。・・・我々だけ逃げ延びるか」

ルクレール 「・・・コースを、外させましょう」

シャイロン 「部下思いの君らしくない選択だな」

ルクレール 「断っておきますが、長官。追撃を掛けている艦は、例の救世主を語るゲリラだと目されています。武装も補給もままならない我が艦と、連絡もうまく行かない議会軍での勝利は容易ではありません」

シャイロン 「つまり、議会軍と仲良く全滅の可能性もある、と」

ルクレール 「ここで両軍が沈めば、パーノッド派は諸手を挙げて喜ぶでしょう。それを避けるためには、後続艦で足留めを掛ける方が安全です」

シャイロン 「賢明だな。・・・それほどに私が怪しいかね。ミロ副官」

ルクレール 「いえ。ですが、副官として、艦を危険に晒す訳には参りませんので」

シャイロン 「出来る事なら私は、部下全員を助けたい・・・。従って、後続艦には打電の必要なし。このまま航行する事を認める」

ルクレール 「ッ! よろしいのですかっ! これでもしもっ!」

シャイロン 「例えば私がパーノッドの回し者だとしても、艦を沈めて私だけが助かるなんて器用な真似は出来んよ。勿論、艦と運命を共にするつもりもない」

ルクレール 「・・・策がおありだと、信じます」


サーナイア 「後続艦の動きが怪しいな。よもや先行艦に回頭させて挟み撃ち・・・? いや、距離が近すぎる。それにまだ追撃が止んでいない状況でそれはないか。・・・本当にエスコートだけするつもりか?」

通信兵 「シャイロン一佐から、通信です」

サーナイア 「・・・来たな。繋げ!」

シャイロン 「夜分に怖れ入ります。足留めに残した艦が、どうにも危うい状況です。お約束を守れなくて申し訳ないのですが、貴艦には先に航路を進んでいただきたい」

サーナイア 「ふん、油断させて後ろからズドンと言うのではあるまいな。どうにも貴公は信用できん」

シャイロン 「まさか。コア12・・・議会駐在軍本拠が後ろに控えるこんな場所で、そんな馬鹿な真似など」

サーナイア 「よかろう。貴公は部下の救出に向かえ。我々は先に補給と合流をさせてもらう。間に合うようなら援護の要請もしておこう」

シャイロン 「感謝致します」

サーナイア 「本艦は、セグメント艦を追い越し、先に”クォージィ”に着艦する! 先方に連絡を取れ! 気を緩めるな! 4時間後にはセグメントの制空圏だ!」


シャイロン 「本艦は最大減速! 弐番艦は進路を反転させろ!」

ルクレール (本艦は、減速? 一艦だけ回頭だと!? 何を考えてる!?)

シャイロン 「あと2時間だ。・・・来い、ケネス。御膳立てはしてやったぞ」


アイキャッチ
アイキャッチ「G−GUILTY」


ボッシュ 「ケネス、どうやら優勝は遠退いたぜ」

ケネス 「あン? なんでよ?」

ボッシュ 「不測の事態だ。議会軍が前に出た。セグメント艦は回頭して、追跡を断つ迎撃体勢に入ったらしい」

ケネス 「好都合じゃねえか。グレイゾンとセグメントがバチバチやり合ってる間に、俺たちが議会軍を叩いてトップに踊り出る! ・・・だろ」

ボッシュ 「こいつを見ろ。先行した議会軍。・・・セグメントの連中は、ココと、・・・ココだ」

ケネス 「・・・やってくれる! 俺たちの動きなんざお見通しって訳かよ! シャイロンの野郎が!」

ボッシュ 「偶然じゃないとすれば、まんまと騙されて罠に嵌った訳だが、今更コースを反転もできん。せめて、挟み撃ちにならないよう祈るしかない」

ケネス 「前門の虎、後門の狼ってか。どっちを叩く?」

ボッシュ 「前門の虎、と言いたい所だが、敵が多過ぎる。後方へ逃げながら突っ切るしかないな。コースのゴミ掃除を頼む!」

ケネス 「ちっ、ここまで来てリタイヤかよ」

ボッシュ 「後方の艦はまだしも、その後ろにはグレイゾンが控えてる事を忘れるな」

ケネス 「わあってるよ。ケネス、サイファー出るぞ!」


シャイロン 「どうやら、出て来たな」

ルクレール 「な、何なんです!? あの所属不明艦は!」

シャイロン 「海賊のようだな。割り込みで優勝をさらうつもりでいたらしい」

ルクレール 「・・・回頭は、このためですか!」

シャイロン 「さあな。身体を振ったらコバンザメが出て来た。・・・結果オーライさ」

ルクレール 「・・・あの艦、挟み撃ちになさるのですか」

シャイロン 「いや、連中も馬鹿じゃない。挟み撃ちを掛ける真似だけでいい。真似だけでな・・・。弐番艦、後退させろ!」


ケネス 「糞ったれえぇぇ!」


キャロライン 「前方のセグメント艦が戦闘を開始しました。相手は例の海賊、アンセスターと思われます」

AJ 「予想範囲内だ。こちらもマシンを出せ」

キャロライン 「はっ。デッキ! ソードケインとヴォーテックスを出して! 眼前の敵を殲滅して!」

アベル・イヴリン 「了解!」


イヴリン 「ヴォーテックス、出ます!」

アベル 「ソードケイン、出ます!」


ユーニス 「始まっちゃったの!?」

ユーニス 「な・・・、なにアレ!?」


アベル 「・・・ぶつかる!?」


ボッシュ 「ギリギリのコースだな! 衝突だけは勘弁してくれよ!? 内角を取り終わったら、エンジン全開にしろ! いいな! 全 開 だ ぞ !」


ケネス 「進路のゴミは、粗方取り除いた! 頼むぜ、ボッシュ! まだまだ終わる訳にゃいかねえんだ!」

ボッシュ 「今だ! 全開だ!」

ケネス 「抜けろよ!」

ボッシュ 「南無三!」

ケネス 「よっしゃあ!」


イヴリン 「なに、あの艦は!?」

アベル 「無茶苦茶なコースだ! あんなんで・・・!」

イヴリン 「どうやら、あの艦・・・」

アベル 「あの時の・・・!」


キャロライン 「艦照合、間違いありません。アンセスター艦、マトリックスです。マシンは、G・・・サイファー・・・!」

AJ 「結構。今、もっとも障害となる存在は、彼ら・・・、いや、彼だ」

キャロライン 「攻撃目標の、変更命令を出します」

AJ 「ケネス・ハント、裏切りの罪は重いぞ」


ケネス 「あーらら。一難去って、また一難。・・・用意周到だな。アイツは根暗か? あー、根暗だな」


キャロライン 「聴こえる!? アベル君! 予定変更よ」

アベル 「え」

キャロライン 「その黒いマシンの破壊を最優先して」

アベル 「えっ!? 何でです!? 艦が最優先じゃ・・・」

キャロライン 「何でもへったくれもないわ! そのマシンが最大の障壁だからよ!」

アベル 「は、はい!」

キャロライン 「わかってるわね、イヴリン!」

イヴリン 「言われなくても!」

アベル 「イヴリンさん! 先行し過ぎです!」


ケネス 「・・・ちょっと形勢不利? Gが2機もいちゃあな。・・・来た!」

イヴリン 「はああぁぁっ!」

ケネス 「よう、イヴリン! ま〜た会えちゃったね」

イヴリン 「2度と会わなくて済むように、地獄へ送ったげるわ!」

ケネス 「ズッルいのー、自分だけ天国へいくつもりかぁ? 俺も天国に行くつもりなんだけど。そこで再会の約束しとく?」

イヴリン 「減らず口を! 調子に乗るな!」

ケネス 「調子に乗ってるのはそっちだろ。ヴォーテックスで接近戦は利口じゃないな」

イヴリン 「くっ!」

アベル 「イヴリンさんっ!!」

ケネス 「来たな! あン時の新顔か!?」

アベル 「・・・やっぱり! ・・・あの時の!」

ケネス 「いらっしゃい、正義を振りかざす戦争讃美者さんよ」

アベル 「誰が戦争の讃美なんか!」

ケネス 「だったら犬だよ! 戦争を餌にして尻尾を振る犬だ!」

アベル 「何なんですか! あなたは!?」

イヴリン 「アベル! ソードケインとサイファーの性能はほぼ互角よ! こっちの射撃に連係させて! もっと艦の方へ追い込んで!」

アベル 「は、はい! ・・・サイファー!?」

ケネス 「はーい、タイムオーバー! 俺の勝ち!」

アベル 「なんっ!? いつの間に・・・!? JACかっ!?」

イヴリン 「ッ!! セグメント艦が!」

ケネス 「悪いけど、追い込んでたのは俺なんだわ」

アベル 「くっ・・・! こんな・・・」

イヴリン 「やってくれるわ・・・!」

ケネス 「さすがにGが2機じゃ、勝ち目がないんでね。逃げさせてもらう。次に会う時は、いよいよ地獄かな、イヴリン」

イヴリン 「・・・腐ってもエース・・・か」


アベル 「何なんです!? あのマシン! それに、あの人は!?」

イヴリン 「知らないわよ」

アベル 「・・・っ! あの人はイヴリンさんの事を知ってたじゃないですか!」

イヴリン 「アベル、あたしは今、機嫌が悪いの。ぶっ飛ばされたくなかったら、ちょっと黙ってて」

アベル 「そんなの身勝手ですよ!」

イヴリン 「っ!!」

アベル 「くっ」

キャロライン 「アベル君」

キャロライン 「いいのよ。彼の事は黙っておくように、私が命令したんですから」

アベル 「命令?」

キャロライン 「そうよ。彼の名は、ケネス・ハント。私たちグレイゾンの・・・裏切り者よ」

アベル 「裏切り、者・・・」

キャロライン 「彼は、グレイゾンからGシリーズの一機、サイファーを奪って、私利私欲の為に海賊へと身を落とした・・・」

アベル 「・・・ほんと、なんですか?」

キャロライン 「それより、そろそろ”クォージィ”宙域に到達するわ。出ずっぱりで悪いけど、二人とも食事を採ったらすぐ準備して。メカマンも、頼むわよ」


兵士 「艦長。シャイロン一佐より、通信です」

サーナイア 「繋げ。・・・思ったより早かったな」

シャイロン 「行動が早い分、諦めも早いもので」

サーナイア 「寄港は2隻か」

シャイロン 「情けない話ですが、救出は時遅く、ゴールを目前にしながらも、バルバロイどもに沈められました」

サーナイア 「・・・バルバロイもまた、こちらへ到着すると言う事だな」

シャイロン 「これ以上は、逆賊どもをのさばらせはしませんよ。そのための本陣です」


ユーニス 「わあっ・・・!」

ユーニス 「見て見て、お兄ちゃん! 見えるよっ!」

アベル 「ん・・・」

ユーニス 「あれが、新しいセツルメント・・・!」

アベル (敵の、国・・・)

アベル (あれが、新しい戦場・・・)



次回予告

ナレーション 「新たなる戦場、コア11。アベルたちが身を隠した場所には、皮肉にも海賊たちもが身を寄せていた。知らずに錨を降ろした艦に、海賊たちが奇襲を掛けてくる。次回、『この広い宇宙の中で』 Gの鼓動が、今目覚める」

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