ナレーション 「独立自治権を勝ち取った宇宙移民者群セツルメントは、ようやく得た平和の中に麻痺し、やがては特権主義社会を生み出し、結局は自らが小セツルメントへの圧政を強いるようになる。時に宇宙世紀255年。各地で起きたセツルメント内紛争は、体制側と、反体制側に別れてその共同戦線を張り、セツルメント間による強大な戦禍を巻き起こしつつあった」



タイトル

「核動力を奪回せよ」

− RAIDERS −



ケネス 「くそっ! やられたっ! 完全にっ! くそっ、なんてザマだ!」

ボッシュ 「過ぎた事を嘆いても始まらん。落ちつけ。ケネス」

ケネス 「そんな訳にいくか! ボッシュ! コレで俺たちは・・・」

ボッシュ 「完全に後手・・・だな」

ケネス 「くそっ! セグメントのマシンの中に、シャイロンがいた・・・」

ボッシュ 「お前が話してたアイツか・・・」

ケネス 「間違いなく、動きだしてる・・・!」

ボッシュ 「ここを切り崩された以上、次は譲れんな」

ケネス 「次のポイントは? 今度こそ奴らの先を行く」

ボッシュ 「・・・おそらく、ココだ」

ケネス 「”クォージィ”・・・コア11か」

ボッシュ 「奴らの事だ。そのすぐ後方、コア12”タイタン”を拠点にして持久戦に持ち込む」

ケネス 「けっ、連中の考えそうな事だな」

ボッシュ 「・・・次は、連中の味方かも知れんな」


アベル 「や、やあ」

シャヒーナ 「とりあえず、お礼だけは言っておくわ」

アベル 「あっ、いいんだよ、そんなの」

シャヒーナ 「私を助けた事で、少なからず迷惑を掛けたはずよ。あなたにも、ここのクルーにも」

アベル 「いやっ、そのっ、違うんだ。そんなんじゃなくて・・・」


イヴリン 「ユーニス? 何してんのこんな・・・」

イヴリン 「ユーニス・・・?」

イヴリン 「ふぅん。小姑としちゃ、お兄ちゃんの恋人が気になるってか」

イヴリン 「はぁい」

アベル 「イヴリンさん」

イヴリン 「いいムードの所を悪いんだけど、休む間もなく次の作戦よ。艦長が呼んでるわ」

アベル 「っ・・・。はい、すぐに行きます。・・・じゃあ、シャヒーナ。また後で・・・」

シャヒーナ 「・・・気をつけなさいよ」

アベル 「うん」

イヴリン 「あたしにも言ってくれる?」

シャヒーナ 「・・・気をつけて」

イヴリン 「うふん。・・・悪くないかもね」


兵士 「どうなってんだ? この艦」

兵士 「どうにも、演習じゃなさそうだぜ?」

兵士 「集められたクルーにパーノッド派の連中がいないってのは、どうにもキナ臭いよな」

兵士 「基地を放棄するって話、本当かもな」

兵士 「基地どころか、このセツルメントを・・・っと、いけねえ」

シャイロン 「ミロ副官、どうなってる?」

ルクレール 「・・・手筈通りです」

シャイロン 「御苦労。優秀な副官を持った私は幸運だよ。残されたカザニスとデュバルの顔が目に浮かぶ」

ルクレール 「しかし、これではまるで・・・、敵前逃亡です。それも、パーノッド派メンバーの動きまで知っていながら・・・」

シャイロン 「上層部の命令だよ。パーノッド派とバルバロイが手を結べば、我々リカード派は敗北する」

ルクレール 「我々リカード派が負けるなんて! あまりにも早計です!」

シャイロン 「私もそう思うよ。だが、上層部がそう判断した。・・・被害の少ない今の内に退去させる事は逃亡ではない」

ルクレール 「でっ・・・ですがっ、基地を放棄する事はないのではないでしょうか!? 基地施設や積み切れなかったマシンまでがバルバロイに利用される可能性があります!」

シャイロン 「かと言って、パーノッド派の連中ごと、基地を爆破する訳にも行くまい? 一〇分後に決起し、敵に回る事が確実だとしても、今現在、彼らはまだ我々の仲間だ。疑わしきは罰せず、だよ」

ルクレール 「・・・くっ」

シャイロン 「納得が行ったのなら、艦を発進させてくれ」

ルクレール 「・・・全クルーに通達! 我が艦レメッドは只今をもってベースとセツルメントを放棄。セツルメント”クォージィ”に向けて発進する。・・・メイン・エンジン点火!」

兵士 「め、メイン・エンジン点火」

兵士 「ホントに、セツルメントを放棄するのか・・・」

ルクレール 「ハッチ・オープン! 浮上せよ!」

シャイロン 「それでいい。私だって着任したばかりで敗軍の将と呼ばれるのは遺憾だよ。だが、軍人に最も必要な要素は、上層部の決定に逆らわない忠誠心だよ」

ルクレール 「ひとつだけ、お聞かせ下さい。・・・これは、一佐の就任前からの決定事項でしょうか?」

シャイロン 「・・・決まっていたよ」

シャイロン (あの、Gというマシンが作られた時にはな)


兵士 「な、なんでレメッドが発進してるんだ!?」

兵士 「聞いてないぞ! 何だってこんな時期に!? 外には議会の艦隊が来てるんだろ!?」

ボワイエ 「はやく長官に問い合わせろ!」

兵士 「は・・・はい!」

ボワイエ 「早くしろ! ・・・どうした!?」

兵士 「・・・繋がりません。・・・こ、・・・これ」

ボワイエ 「どう言う事だ?」

兵士 「ほ、ほとんどの回線が切断されてます」

ボワイエ 「切断!? どう言う事だ!? 何処かに繋がらんのか!?」


兵士 「やられました。リカード派の士官は全て退去しています」

カザニス 「・・・読まれていたとはな」

デュバル 「シャイロンめ、パーノッド派一掃の為の辞令かと思えば・・・。何を考えている・・・!」

カザニス 「だが、状況は好転した。作戦は予定通りに行なう。異存はないな」

デュバル 「エクレシアに連絡を取れ! 基地は我々が占拠する!」

兵士 「はっ!」


ボワイエ 「・・・報告しろ」

兵士 「リカード派の士官・・・、誰一人としていません!」

ボワイエ 「何・・・だと、糞ったれめ!」

兵士 「ボワイエ一佐・・・。こ、この基地は・・・、いや、このセツルメントは放棄されたのでありましょうか・・・!?」

兵士 「ほ、報告します。パーノッド派が蜂起。各管制塔の掌握を始めています・・・」

ボワイエ 「パーノッド派が決起!? シャイロンの野郎はそれで逃げ出したのか!?」

兵士 「中立派だっているんですよ!? まさかそんな筈は!」

兵士 「・・・脱出したのは、リカード派の連中だけらしいぞ」

兵士 「お、終わった・・・」

ボワイエ 「・・・まだ終わらん! 我々は卑しくもセグメント・フォースの軍人であるぞ! 叛乱軍と手を結ぶようなパーノッド派には屈さん! 内紛の予測をしていながらも尻尾を巻いたリカード派にもだ!」

兵士 「では・・・!」

ボワイエ 「この軍施設は機密である! 敵に渡す訳には行かん!」


キャロライン 「議会軍艦隊は、進路を変えました。おそらく、コア11”クォージィ”へ行くものと思われます」

イヴリン 「コア11か。セグメント領域ね」

キャロライン 「議会駐在軍の勢力下でもあるわ」

アベル 「僕たちは、そこへ?」

キャロライン 「ええ。間もなく、イブレイ隊がコア9”サグリュイレス”での任務を完了します。我々は、ここ”レヴィック”を反体制派に占拠させたのを確認次第、イブレイ隊と合流します」

アベル 「そんなすぐには無理でしょ? 議会軍が一時撤退してくれたとしても、セグメント・フォースは・・・」

キャロライン 「それがどうやら、手を下さずに済みそうなのね」

アベル 「え?」

イヴリン 「へえ。パーノッド派決起のウワサはホントだったのね」

アベル 「その、パーノッド・・・派って?」

キャロライン 「ヘンリー・パーノッド宙将。セグメント・フォースのお偉いさんの一人ね。セグメントの内部は大きく、このパーノッド宙将と、大将のパウル・リカードの派閥に分かれるわ。パーノッド派は、階級社会を嫌い、我々スペースノイドの団結を訴えてるわ」

アベル 「・・・それじゃ、僕たちの味方って事ですか?」

キャロライン 「単純にそうとも言えないんだけど。・・・リカード派は議会から与えられる特権に満足していたい。パーノッド派は、民衆を利用してでも、議会の特権を奪いたい。・・・そんな所かしら」

イヴリン 「それで、パーノッド派は?」

キャロライン 「どうやら、クーデターは九分九厘まで成功のようよ。これを見て」

イヴリン 「あーらまあ」

キャロライン 「エクレシアが赤。緑がリカード派。黄色がパーノッド派。中立は青のまま」

アベル 「これ、ほとんど黄色じゃないですか」

キャロライン 「ここ、我々のいるロー・ナンバーはエクレシア勢力下。中央ポートのミドル・ナンバーから、セグメント基地のあるハイ・ナンバー付近まではパーノッド派が抑えたわ」

イヴリン 「クーデターが成功したにしても、腑に落ちないわね」

キャロライン 「一部情報によると、リカード派がセツルメントを放棄したらしいけど・・・」

ダニエル 「艦長〜、ヤバいっすよ〜。最悪の事態ですよ」

キャロライン 「何なの? ブラントン中尉」

ダニエル 「中立派が、最悪の行動に出ちまいました」

キャロライン 「どう言う事!?」

ダニエル 「セグメントの推力施設に立て篭もったんですよ」

イヴリン 「あ〜らら。思わぬ伏兵、ね」

ダニエル 「連中、どうにも核を使うつもりですね」

アベル 「そ、そんな・・・!」



アイキャッチ
アイキャッチ「G−GUILTY」

ダニエル 「連中、どうにも核を使うつもりですね」

アベル 「そ、そんな・・・! 爆発や汚染被害を考えたら核なんて!」

イヴリン 「中立派は、腐っても軍人だったって事ね」

アベル 「軍人なら核を使ってもいいんですか!?」

キャロライン 「そうじゃないわ。」

イヴリン 「クーデターなんかを起こしたパーノッド派に、基地を明渡す訳には行かないってか」

キャロライン 「死なば諸共。・・・そう言う事ね」

アベル 「とめます! 核なんか使われたら死ぬのは軍人だけじゃないんですよ!」

キャロライン 「アベル君、慌てないで。下手に動いて彼らを刺激する訳には行かないわ。・・・ブラントン中尉、立て篭もっている施設の場所と見取り図を」

ダニエル 「今やってますよ!」

アベル 「出撃準備、しておきます!」


兵士 「第7ハッチ解除、あと3つです」

ボワイエ 「核動力の心臓さえ握れば、今からでもクーデターを止められる! それが無理なら全てを消すんだ! 進め!」

兵士 「はっ!」

ボワイエ 「いいか! 最優先事項は核動力の奪取にある!」


イヴリン 「来たわ」

キャロライン 「連中の立て篭もった施設は、セツルメント推力制御塔よ。そこの核エンジンを盾にしてるわ。データは、今送った通りよ」

アベル 「制御塔・・・。侵入経路は!?」

ダニエル 「ルートは3つ用意した。Aが最短だがココではドンパチするなよ。Bは、立て篭もった連中が侵入してる。Cは安全だが遠回りだ。・・・状況を見て推力部に侵入してくれ」

アベル 「了解です」

イヴリン 「どのルートにしろ、ヴォーテックスじゃ進入出来ないわね」

キャロライン 「ヴォーテックスは、表で派手にやって連中の注意を引き付けて」

イヴリン 「了解。・・・万一、核動力への攻撃があった場合には?」

ダニエル 「・・・ない事を祈る」

キャロライン 「大丈夫よ。核動力の安全システムは厳重だから、単純に攻撃しただけなら停止するわ」

イヴリン 「だとイイけど」

アベル 「アベル! ソードケイン、出ます!」

イヴリン 「ヴォーテックス! 出ます!」

イヴリン 「アベル! 表は派手にやらせてもらうわ。しっかり頼むわよ!」

アベル 「はいっ!」


兵士 「一佐、表に例の救世主が現れたそうです」

ボワイエ 「なに!?」

兵士 「今の兵力では突破されます!」

ボワイエ 「制御塔を奪回されたらセキュリティが起動させられるぞ! スザク2機を残して表に回れ!」

兵士 「バリラとアシェットを残して、他はUターンだ!」

兵士 「はっ!」

ボワイエ 「時間がない! やむをえんがルートを変更する!」

兵士 「はっ・・・!」


イヴリン 「やれやれ、ノってきたじゃない! こっちもやらせてもらうわよ」

イヴリン 「アベル・・・! しくじらないでよ」


アベル 「このルートなら、敵よりも先に回りこめるはずだ・・・っうわっ!?」

ボワイエ 「なんだと!?」

アベル 「ルートを変えたのか!」

ボワイエ 「もう1機いたのか!」

アベル 「・・・どうする!? ここじゃ下手な攻撃は出来ないぞ」

ボワイエ 「残る隔壁は2枚だ! 私の勝ちだな!」

アベル 「掛かってきた!? 正気なの!? こんな所で爆発したら!!」

ボワイエ 「クーデターさえ止められれば、セツルメントの一つや二つ!」

アベル 「絶対にさせない!」

ボワイエ 「ならば防いでみろ! 攻撃も出来ないこの場所で、何が出来る!」

アベル 「撃って来ない!? それぐらいの分別はあるのか!? だったら・・・!」

ボワイエ 「3対1の格闘戦で、爆発もさせずに勝てるとでも思ってるのか!?」

アベル 「くっ、あなた達はそうやって! いつも隠れみのを用意する!」

ボワイエ 「貴様のようなテロリストに死ぬ覚悟などあるものか!」

アベル 「ありませんよ! あなたにだって生き抜く覚悟がないじゃないですか! はああっ!!」

ボワイエ 「シールドを破っただと!?」

アベル 「投降してください! 僕はコックピットを狙って焼くなんて真似はしたくないんです!」

ボワイエ 「テロリスト風情が道徳を語るな!」

アベル 「なんでわからないんです!」

ボワイエ 「くっ・・・! 叛逆者どもが・・・」

アベル 「残った一機・・・。誘爆しないように、残骸を外に出します。手伝ってください。お願いですから・・・」


ダニエル 「ふぃ〜。どうやら制御塔も隔壁も無事です」

キャロライン 「流石に今回は冷や汗が出たわ」

ダニエル 「何にしろ、無事に終わりましたね。あとは、パーノッド派とエクレシアが上手に折り合いをつけてくれればイイんですけど」

キャロライン 「・・・そうね。そう願うわ」


イヴリン 「アベル! くっ!?」

アベル 「イヴリンさん、こっちの人は投降してます。撃たないで下さい」

イヴリン 「了解したわ。ご苦労様、アベル」

アベル 「・・・いえ、イヴリンさんこそ」

イヴリン 「なぁに? また、おセンチ?」

アベル 「そんなんじゃ、ないですよ」



次回予告

ナレーション 「戦場はこの地から彼の地へ。体勢を立て直すために逃走するサーナイアとシャイロン。そして、それを追うアベルたち。だが、暗躍するシャイロンの罠が、アベルたちを待ち受けているのだった。次回、『仮面の男』 Gの鼓動が、今目覚める」

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