ナレーション 「独立自治権を勝ち取った宇宙移民者群セツルメントは、ようやく得た平和の中に麻痺し、やがては特権主義社会を生み出し、結局は自らが小セツルメントへの圧政を強いるようになる。時に宇宙世紀255年。各地で起きたセツルメント内紛争は、体制側と、反体制側に別れてその共同戦線を張り、セツルメント間による強大な戦禍を巻き起こしつつあった」



タイトル

「ポート攻防戦」

− Port scramble −



ブリーフィングルーム。

キャロライン 「今回の作戦の説明をします」

キャロライン 「間もなく、駐在軍ではなく地球本部からの議会軍が到着します。それも、その規模は一個中隊」

イヴリン 「一気に片を付けるつもりかしら」

アベル 「中隊って、どれぐらいなんです?」

イヴリン 「最低でも400人、って所ね。艦が五隻、Mマシンは少なく見積もって40機」

アベル 「40機も・・・」

キャロライン 「そうね。加えて、駐在軍の小隊と、セグメント・フォース。まともに攻められたらエクレシアどころか私達でさえ、一溜まりもないわ」

アベル 「・・・じゃあどうすれば」

キャロライン 「そうなる前に叩きます」

イヴリン 「無茶ね。それとも無謀って言うのかしら?」

キャロライン 「そうでもないわ、足元さえ潰せばね」

イヴリン 「足元?」


シャイロン 「ヤツらは足元を狙って来るな」

ルクレール 「足元、ですか」

シャイロン 「議会の連中の目的は何だ? 我々に恩を着せたいのだ。そのためにわざわざ中隊を寄越してきた。駐在軍と違って、本腰を入れて戦う気などない」

ルクレール 「ですが・・・」

シャイロン 「そんな連中を叩くには、入港させない事が一番の方法だとは思わないかね」

ルクレール 「宙港・・・ですか」

シャイロン 「中隊もの大所帯が入港するには、中央ポートしかない。そこを叩けば、気の緩んだ議会軍の出鼻を挫ける」

ルクレール 「・・・それで、長官はどうなさるお積もりですか?」

シャイロン 「我々は議会の駒じゃない。独立自治権を持っているからな。一つ、傍観といこうじゃないか」

ルクレール 「し、しかし、中央ポートは我々にとっても重要な物資の搬入港です。それを・・・」

シャイロン 「ルクレール・ミロ副官。君に重大な任務を伝える」

ルクレール 「・・・任務?」

シャイロン 「そう、重大な任務だ」

シャイロン (ようやくケネスのお出ましだ。遊んで貰うぞ)


アッサム 「よぉーし、吉報だ!」

ハン 「何が吉報だよ、議会軍の本隊が近付いてるって時によ」

アッサム 「それを撃退出来るかも知れん」

シャヒーナ 「どうやって!?」

アッサム 「クブラカンから連絡が入った。あの救世主ってマシンが、中央ポートを叩くらしい」

ハン 「中央ポート? それに何の意味が?」

アッサム 「一度に、戦艦が何隻も入港出来るのは中央ポートだけだ。その中央が無くなったら、やつらは散り散りに別の宙港へ進駐することになる」

シャヒーナ 「一隻ずつ、それも混乱に乗じれば、勝機はあるって事ね」

ハン 「だが、救世主が来なかったら?」

アッサム 「保証はないが、来る。これまでにクブラカンの情報に誤りがあったか?」

シャヒーナ 「今の所、ないわね」

ハン 「だが、これが初めての間違いになるかも知れん」

アッサム 「ナディアの予言も、救世主の到来を告げてる。反対か?」

シャヒーナ 「情報も予言も信じた訳じゃないけど、賛成するわ。どの道、議会軍が到着すれば一掃されるわ。抵抗するにしてもジリ貧はごめんよ」

ハン 「いいぜ。俺も乗る」

アッサム 「よし。全員に指示を出せ。中央ポート付近の宙港をいつでも制圧できる準備だ!」

ハン 「よーし、各アジトに通達しろ! 全面戦争だ!」

ハン 「・・・どうした、シャヒーナ。まだ何かあるのか?」

シャヒーナ 「救世主・・・。あのマシンは何者なの?」

ハン 「わからん。だが、とりあえず信用するしかあるまい。少なくとも今までは敵じゃなかった」

シャヒーナ 「次は、敵かも知れない?」

ハン 「わからん。救世主様の目的も、正体もな」

シャヒーナ 「アレの、パイロットを知ってるわ」

ハン 「なに!?」

シャヒーナ 「偶然だけど、あの子と会ったわ。それも二度」

ハン 「シャヒーナ・・・! そいつは、信用できるのか?」

シャヒーナ 「・・・わからない」


ダグ 「やはりな。あのシャイロンって野郎はとんでもない食わせ者だぜ」

ギルバート 「先輩?」

ダグ 「もうすぐ本隊の到着だってのに、迎えどころか警備さえ動かす気配がない。ヤツの目的は、バルバロイの殲滅じゃない。この紛争に、地球議会軍を本格介入させるつもりだ」

ギルバート 「そ・・・、そんなっ」

ダグ 「おそらく、情報はダダ漏れしてる。バルバロイどもは中央ポートを襲撃するだろうな」

ギルバート 「それが・・・、死守線ですね」

ダグ 「何の命令書もないが、ポートを守らにゃあならんな」

ギルバート 「やりましょう、先輩。バルバロイにもセグメントにも一泡吹かてやりましょう」

ダグ 「待て。お前には別任務で動いてもらう」

ギルバート 「別の・・・任務?」

ダグ 「ああ。ヤツの事だからな。粉でも散布して本隊との通信を遮断して来るだろう。お前は本隊へ急いで、事態を知らせろ」

ギルバート 「しっ、しかし」

ダグ 「目先の敵に惑わされるな。行け」

ギルバート 「は、はいっ」

ダグ 「いいか、本隊に必ず届けろ」

ギルバート 「はいっ」


アイキャッチ
アイキャッチ「G−GUILTY」

ギルバート 「Gフェンサー、出るぞ」

ギルバート 「本隊までの距離と時間の・・・」

ギルバート 「ん? 識別信号・・・、セグメント・フォース!」

ギルバート 「まさか、こっちの行動に気付いたのか!?」

シャイロン 「そこの議会軍機。直ちに停止しろ」

ギルバート 「ちぃっ」

シャイロン 「どちらへ? ギルバート・ゲノック中尉」

ギルバート 「ぐっ、シャイロン・チェイか!」

シャイロン 「悪いのだが、貴公を本隊に合流させる訳にはいかないのでね」

ギルバート 「ど、どういう事だ!?」

シャイロン 「中央ポートはバルバロイに奪取させる。まぁ、要するに、本隊には沈んでもらうと言う事だ」

ギルバート 「本気か!? 中央ポートは貴様らの台所でもあるんだぞ!?」

シャイロン 「このセツルメントの台所ではあるが、我々の台所じゃない」

ギルバート 「まさか・・・!」

シャイロン 「そのまさかです。ですから、貴公を行かせる訳には行かないのでね。・・・ご投降願います。ギルバート・ゲノック中尉」

ギルバート 「誰が投降など!」

シャイロン 「他人の好意は受け取ったほうがいい」

ギルバート 「貴様の好意など!」

シャイロン 「ならば、銃弾を受け取れ」

ギルバート 「なに!? 速い!」

シャイロン 「こちらにも色々と準備があるのでね。貴公と遊んでいる時間はない」

ギルバート 「馬鹿な! くそおぉぉっ!」


アベル 「ソードケイン、出ます」

イヴリン 「ヴォーテックス、出ます」

アベル 「イヴリンさん、あの黒い機体、出てきますかね?」

イヴリン 「さあね。そんな事より、奇襲とは言え、敵の防衛は甘くないわよ。集中して」

アベル 「わかってます」

イヴリン 「それと、わかってるとは思うけど、中央ポートはセグメントと議会だけじゃなく、民間でも使用されてる公共施設よ。敵機と港の機能の破壊だけに集中して!」

アベル 「わかってますよ」

イヴリン 「わかってるならいいわ。見えるわよ」

アベル 「見えた!」


警備員 「未確認機影が侵入しました!」

警備員 「警報を出せ! バルバロイだっ!」


ダグ 「来たな。Gモドキ!」

ダグ 「作戦展開しろ! 遮蔽物を利用するんだ!」

ダグ 「さぁ、これで手は出せまい」


アベル 「なっ! シャトルを・・・!」

イヴリン 「盾にした!?」

アベル 「・・・それがっ、警備の! 軍人のやる事ですか!?」

イヴリン 「どうやら、奇襲は読まれてたわね。圧倒的に不利だけど、やるわよ」

アベル 「どうするんです!?」

イヴリン 「民間施設やシャトルは傷付けずに、Mマシンのみを破壊! 出来るわね!?」

アベル 「やりますよっ!」

イヴリン 「遠距離攻撃は避けて! 接近して爆破と誘獏に要注意!」

アベル 「わかってますっ」


シャヒーナ 「は、始まったの・・・!?」

シャヒーナ 「アベル・・・。居るのね」


ダグ 「よぉーし、悪く思うなよ。ポートをやらせるわけにはいかんのだ!」

アベル 「そんな事までして!」

ダグ 「貴様らだって、テロ行為だろうが!」

アベル 「民間人を盾に取るような軍人だからっ!」

兵士 「よし、後ろを取った!」

イヴリン 「アベルっ! 熱くならないで!」

兵士 「わああっ」

アベル 「なってませんよっ」

ダグ 「来い! Gモドキ!」

アベル 「軍人は民間人を守るための組織でしょう!?」

ダグ 「被害は最小限に食い止めねばならんのだ!」

アベル 「だったらあなた達が引っ込めばいいんですよ!」

ダグ 「こ、コイツっ・・・くっ、・・・ぐあっ」

イヴリン 「やるじゃない。目視ではあと四機いるわ、気を抜かないで!」

アベル 「イヴリンさんこそ」

撃つ。

イヴリン 「言うじゃない、ったく」


シャヒーナ 「アベル、私を見つけなさい」


回想

ハン 「俺は、あの救世主ってヤツを信じてる訳じゃねえ」

シャヒーナ 「そうね。信じてみたい部分はあるけど」

ハン 「シャヒーナ。俺はアッサムに従うが、クブラカンも、ナディアも、救世主もどうだっていい。俺達は俺達の勝利を勝ち取れればいいだけだ」

シャヒーナ 「・・・どうすればいいの? ハン」

ハン 「救世主が現れたなら、何としても、接触して正体を確かめろ」

シャヒーナ 「・・・どうやって接触を?」

ハン 「そいつがお前を認識出来るんだとしたら、方法はある」

シャヒーナ 「どうするの?」

ハン 「危険だからな。強制はしない」

シャヒーナ 「やるわ」


シャヒーナ 「私を、見つけなさい! アベル」

自分に向かって、銃を撃つ。
うずくまって倒れ、手を延ばして照明弾を撃つ。


アベル 「照明弾!? 何で地上に!?」

イヴリン 「アベル、何処行くの!? まだ敵はいるのよ!」

アベル 「あの光を見てきます!」

イヴリン 「ちょっとっ、アベル!?」


アベル 「今の照明弾・・・」

アベル 「誰か・・・」

アベル 「・・・シャヒーナ!?」

傍に着地して、コックピットから降りる。


イヴリン 「アベル!? 何考えてるの!? 戦闘中よ!?」


アベル 「シャヒーナ!? 何でこんな所に!?」

シャヒーナ 「・・・あ、アベル。見つけてくれると思った」

アベル 「シャヒーナ! 怪我してるの!? 撃たれたの!?」

シャヒーナ 「・・・ありがと。みつけてくれて」

アベル 「つかまって!」

シャヒーナを抱えてコックピットへ。

イヴリン 「アベル!? どういうつもり!?」

アベル 「イヴリンさんが言ってくれたんです! 助けられなかった人の事より、今助けられる人を助けろって!」

イヴリン 「・・・っ馬鹿!」

アベル 「ごめんよ、シャヒーナ。戦闘が終わるまで少しだけ狭いけど我慢して」

イヴリン 「アベル、わかってるの? Gのコックピットは最重要機密よ」

アベル 「機密より人の命の方が大事です!」

イヴリン 「・・・・ったく! 来るわよ!」

アベル 「わかってます! ・・・シャヒーナ、少し揺れるけど・・・!」

兵士 「うわ、うわあああっ」


アッサム 「中央ポートは救世主が占拠した! 各自、入航路を押さえろ! 残った人員は警察施設に回れ!」

アッサム 「ここを勝ちぬけば、俺たちの勝利だぞ!!」

ハン 「シャヒーナ・・・、うまくやれよ」

アッサム 「よし、行ける! ハン! ポートに侵入してくる警備を黙らせろ!」

ハン 「わかってる! ぬかりはない!」


オデッセイア

キャロライン 「・・・作戦は概ね成功よ。勢い付いたエクレシアが、各ブロックを制圧してるわ。ミドル・ナンバーは篭絡寸前よ」

キャロライン 「・・・それで。・・・どういうつもりなの? アベル君」

アベル 「処罰でも何でも受けます。それよりも、彼女の治療を」

キャロライン 「それについては責任を持って対処します」

アベル 「お願いします」

キャロライン 「彼女をドクター・ケーラーの所へ」

担架で運ばれるシャヒーナ。

副長ダニエルに連行されるアベル。

イヴリン 「どうにかならないモンですかね。あの性格」

キャロライン 「人の事をとやかく言えるほど、アナタが出来た人格だとも思わないけど。・・・軍人としては致命的かも知れないわ」

イヴリン 「で、アベルの処分は?」

キャロライン 「アベル君に関する全てはダグラス長官の管轄になります」

イヴリン 「あんまり、オトコを甘やかさない方がイイわよ。艦長」

キャロライン 「どういう、意味かしら?」

イヴリン 「あらぁ。アベルの事よ。女って女には厳しくても男には甘いじゃない? 可愛い男のコだと、特にね」

キャロライン 「生憎だけど」

イヴリン 「ああそっかー、艦長は中年がお好みでしたっけ?」

キャロライン 「・・・そうね。少なくとも、ケネス・ハントみたいなチャラチャラしたお子様よりはね」

イヴリン 「っ」

キャロライン 「議会軍本隊との戦闘、敵であれ味方であれ、ケネスは絡んでくるわ。・・・くれぐれも」

イヴリン 「心配しなくても、任務だけはキッチリやりますよ」

キャロライン 「そう願うわ」




次回予告

ナレーション 「張り詰めた一本の死線を、今超えんとする議会軍本隊。暗躍する宇宙海賊とシャイロン。待ち受けるアベルたち。本隊がそのラインを超えた時、時代は大きく揺らぐ事となる。次回、『死線上のアリア』 Gの鼓動が、今目覚める」

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