12番ブロック。

負傷したもの、ゲリラが集まる広場。
シャヒーナが、ぼんやりとモニターの演説を聞いている。

ナディア 「傷ついた者、傷つけられた者、セグメントの横暴と圧制を、我々は断固として跳ね除けなければなりません。敵に対し、恐れを抱くものもいるでしょう。ですが、彼らはそういう心の闇を利用して、我々を支配下に置くのです。案ずることはありません。我々は集められた民です。予言は、救世主の到来を告げています」

少女シャヒーナが、つまらなそうに空を見上げる。
空に、小さな光が見えた。
空がクローズアップして、宇宙を映す。
カメラが回転してセツルメントが映る。


ナレーション 「独立自治権を勝ち取った宇宙移民者群セツルメントは、ようやく得た平和の中に麻痺し、やがては特権主義社会を生み出し、結局は自らが小セツルメントへの圧政を強いるようになる。時に宇宙世紀255年。各地で起きたセツルメント内紛争は、体制側と、反体制側に別れてその共同戦線を張り、セツルメント間による強大な戦禍を巻き起こしつつあった」



タイトル

「伝説のマシン」

− A Legendary Machine −



AJ 「アベル君、先程はご苦労だった。だが、次からはこんなに簡単に行くとは限らん。議会軍もこちらに向かっている」

アベル 「はい」

AJ 「とりあえず、君に上陸を許可しよう」

キャロライン 「ダグラス長官!?」

AJ 「ああ、言い方が悪かったな。君に上陸を命令する」

アベル 「命令、ですか?」

AJ 「そうだ。君はこれからの戦いを続けていくにあたって、我々の使命を肝に銘じなければならない。まずは、その目で見るんだ。この争いの悲惨さと無益さをね」

アベル 「わかり、ました・・・」

AJ 「上陸制限は4時間だ。時間がなくならないうちに、早く行きたまえ」

アベル 「はい、失礼します」

退出するアベル。

キャロライン 「よろしかったのですか? 上陸なんて」

AJ 「問題ないさ。彼は虐げられる人々を見る必要がある。・・・我々は弱者の味方だよ。それに、艦の中で腐っているよりは、外の方が気晴らしにもなる」

キャロライン 「せめて、イヴリンでも監視に付けておいた方が・・・」

AJ 「君は心配性だな。あの子は逃げ出したりしないよ」

キャロライン 「ですが、先の戦闘で敵の兵士を撃った感覚に悩まされてます」

AJ 「至極まともだと言う証拠じゃないか」

キャロライン 「長官・・・」

AJ 「2人の時はアレックスでいいと言ってるだろう」


廊下

ユーニス 「お兄ちゃん!」

アベル 「ユーニス」

ユーニス 「降りるの?」

アベル 「ん、ああ。攻撃された12番ブロックを見て来いってさ」

ユーニス 「危ない所?」

アベル 「非武装地帯だったらしいから、被害は小さいらしいけど」

ユーニス 「気をつけてね」

アベル 「大丈夫だよ」


デッキ

ドックから、歩行で出るアベルのソードケイン。

見送るイヴリン。

ジーン 「SK装備じゃ、お前さんの出番はナシだな」

イヴリン 「まぁた、お留守番」

ジーン 「文句言うなって・・・。危ない目に遭わなくてイイじゃねえか。しっかし、ひでえ事しやがるな。いくらゲリラの燻り出しとは言え、非武装地帯を攻撃するかね」

イヴリン 「これでゲリラの占拠地区が限られるわね。近い内に本格攻撃が始まるわよ」

ジーン 「これでボウズが戻る前に始まりゃ、あんたも出撃できるぜ」

イヴリン 「さっきと言ってる事が逆じゃない」

ジーン 「戦いたいんだろ?」

イヴリン 「時間を持て余すよりは、スリルを味わってたいだけよ」


ルクレール 「報告します。シャイロン一佐。被害はスザク6機です。今度はオートマターじゃありません」

シャイロン 「皮肉のつもりかね、ミロ副官。・・・まぁいい。あんな化け物と戦って勝てる訳がないからな」

ルクレール 「・・・ご存知、なのですか?」

シャイロン 「知ってるさ」

ルクレール 「何者なのですか?」

シャイロン 「これまでに何度も地球を劣勢から救った伝説のマシンだよ。みんな知ってる」

ルクレール 「そういう意味ではありません。それとも、まさか議会軍がバルバロイに手を貸しているとでも言うんですか?」

シャイロン 「議会は宇宙から難民を減らす事に賛成している。厄介なのは、宇宙へ出てから金を持った成り上がり連中だよ。我々がいなければもっと稼げるからな」

ルクレール 「セグメントは、権力保持のために議会軍へと尻尾を振ってますから」

シャイロン 「問題発言だぞ、副官。それはそうと、出せるマシンはあるか?」

ルクレール 「帰還したスザクは出せますが・・・。・・・どちらへ?」

シャイロン 「まだ12番ブロックの強制退去命令は解除していないだろう?」

ルクレール 「な、いや、しかし! それでは住民の虐殺です!」

シャイロン 「誰も制圧するとは言っていない。目的はバルバロイへの威嚇と警告だ」

ルクレール 「それに、あの敵機の正体も不明なんですよ」

シャイロン 「だから、拝見しに行くのさ。敵の戦力が圧倒的だと言う事になれば、マシンを1ダースも失ったいい訳になる・・・。来るか?」

ルクレール 「は。・・・お供させて頂きます」


街の側の森林地帯。ソードケインを留め、コックピットから降りるアベル。
ハーフミラーシートを打ち上げて展開させ、ソードケインを隠す。円
振り返って、12番ブロックを目指す。


街の中。
かなり破壊されているが、人々は普通に暮らしている様に見える。
しかし、中には明らかな負傷者もおり、広場では、反体制を唱える集会らしきものまで。
青空市場をうろつくアベル。もとから青空市場だったと言うよりは、破壊されて青空市場になった雰囲気だ。
リンゴが売られている棚を見る。

店員 「うまいよ、農業プラント直送だぜ」

手をのばすと、別の手が触れた。

シャヒーナ 「あっ」

アベル 「あっ、ごめん」

シャヒーナ 「どうぞ」

アベル 「あ・・・いいんだ。買うつもりじゃなかったから」

店員 「兄ちゃん、冷やかしかい。それともまさか、くすねようってんじゃないだろうな」

アベル 「まさか」

シャヒーナ 「・・・育ち、良さそうだもんね」

アベル 「え?」

シャヒーナ 「要らないんなら、あたしが買うわ」

アベル 「あ。う、うん」


前回の戦闘のあった場所。

アベル 「ここ、あの時の・・・」

前回の戦闘のプレイバック。

周りに散らばるゲリラのマシンを見て首を振る。

アベル 「勝てる訳ないじゃないか、こんな旧式の武器で・・・」

アベルの胸元でタイマーが鳴る。
アベル 「そろそろ戻らなきゃ」

物陰から、アベルを見ていた人影が、アベルの背中を視線で追う。


森林地帯。ソードケインの前。
ハーフミラーシートを引き摺り下ろすアベルに声が掛けられる。

シャヒーナ 「動かないで」

アベル 「えっ!?」


アイキャッチ


シャヒーナ 「動かないで」

アベル 「えっ!?」

シャヒーナ 「ゆっくり両手を上げて、後ろを向いて」

アベル 「待ってよ」

シャヒーナ 「大人しく従って。そうよ」

アベル 「・・・わかった」

シャヒーナ 「セグメントの人間ね」

アベル 「ち、違うよ」

シャヒーナ 「セグメントは、こんな子供までスパイに遣うの?」

アベル 「君だって子供じゃないか!」

シャヒーナ 「戦わなきゃ、もっと沢山の人が苦しめられるわ。あんた達と違って」

アベル 「僕はセグメントじゃない。君は、エクレシアの人?」

シャヒーナ 「あんた達と違って、エクレシアは、マシンも人手も足りないのよ」

アベル 「違うってば」

シャヒーナ 「じゃあ、その後ろのマシンはなに?」

アベル 「いや、あっ、これは・・・」

シャヒーナ 「違うって事は、地球議会軍?」

アベル 「議会軍でもない」

シャヒーナ 「嘘なら、もっと上手につきなさい」

アベル 「本当に違うんだったら」

シャヒーナ 「あんたみたいな、お坊ちゃんがこんなスラムにいる訳がないでしょ。何の目的?」

アベル 「・・・君は、さっきの戦闘を見た?」

シャヒーナ 「質問してるのはこっちよ」

アベル 「だから、答えるために質問してるんだよ」

シャヒーナ 「見たわ。あんた達が無抵抗な市民まで攻撃するのをね」

アベル 「・・・あの時に、白いマシンが来たよね。紫のと」

シャヒーナ 「ええ」

アベル 「それが、コイツなんだ」

シャヒーナ 「・・・嘘よ」

アベル 「本当は、喋っちゃいけないんだけど。撃たれるのはイヤだから」

シャヒーナ 「あんたみたいなのが、あれのパイロットだって誰が信じるのよ」

アベル 「あのマシンを見てるなら、このシートだけ剥がさせて」

シャヒーナ 「ダメよ」

アベル 「もし、あのマシンじゃなかったら撃っていい」

シャヒーナ 「動かないで! っあ」

アベル 「ね?」

シャヒーナ 「・・・救世主・・・!? まさか」

アベル 「詳しくは言えないんだけど、僕たちはエクレシアの手助けをするために、ここへ来たんだ」

シャヒーナ 「・・・味方、なの?」


イヴリン 「またセグメントが来たって?」

ダニエル 「いや、今度は制圧目的じゃない。戦闘意志はないようだな。12番ブロックの入り口で放送を続けてる」

イヴリン 「はん。伝説の救世主様ご登場に、士気が上がって決起されないかと心配なのね」

キャロライン 「そんな所ね。下手したら住民との小競り合いも有りうるわ。戦闘配備までは発令しないけど、警戒だけしておいて」

イヴリン 「了解。アベルはまだ戻らないの?」

キャロライン 「そろそろ戻る時間なんだけど」

ダニエル 「あの年じゃ、安い遊びもしないだろうし、すぐ戻るだろうよ」

キャロライン 「ブラントン中尉じゃないんですよ」


兵士 「現在、この12番ブロックは許可なく立ち入りを禁止されている区域である。直ちに退去しなさい」

シャイロン 「したたかだな、連中は。昨日の今日で、もうはや商売まで始めている」

ルクレール 「仕方ありませんよ。連中も行く所がないんです。地球を追われて250年。今度はセグメントからも圧制を強いられている」

シャイロン 「リカード派閥の割に、感傷的だな、君は。それで、記録によると正体不明機の確認と消失は13番ブロック方面なんだな」

ルクレール 「間違いありません」

シャイロン 「警備船を沈めた連中と考えて良さそうだな」


シャヒーナ 「味方だっての、信じていいのね」

アベル 「うん。僕の他にも沢山いる。作戦の都合上、あんまり表立って行動できないんだけど」

シャヒーナ 「だけど、エクレシアじゃあないのね?」

アベル 「うん。僕らはグレイゾンって名前を持ってる。エクレシアとは別の組織だよ」

シャヒーナ 「エクレシアの生い立ちは知ってる?」

アベル 「大雑把には・・・。地球が宇宙民の反乱を恐れて、一部に特権を与えた。その一部の人間が宇宙にまで階級社会を作った事がこの戦争の発端で・・・」

シャヒーナ 「そうね。その中で、下層階級でも成功した金持ちが、邪魔な階級社会を崩そうと蜂起したわ。それが、あたし達エクレシアのスポンサーよ」

アベル 「スポンサー?」

シャヒーナ 「だけど、現実はボロい装備とマシンしか回ってこない状況で、なのに、何処の酔狂な金持ちがこんな、セグメントより強力なマシンを!?」

アベル 「そ、それは・・・」

シャヒーナ 「こんなマシンで敵を蹴散らせるなら、どうしてもっと早く来てくれないのよ!? 沢山人が死んだわ! お父さんもお母さんも!」

アベル 「それは・・・あっ」

シャヒーナ 「セグメント!?」


ルクレール 「あ、あれ!! 例の、・・・あのマシンです!」

シャイロン 「おやおや、とんだ所で見つけてしまったな。スザクたった3機で勝てるとも思えんが・・・」

ルクレール 「どうします!?」

シャイロン 「電波は生きてるな!? ゲートまで後退しろ! オートマターを使う! ここなら少々派手な戦闘でも被害は知れている」


シャヒーナ 「どうするの!?」

アベル 「見つかったみたいだ。変な動きをしてた! はやくココから離れて!」

シャヒーナ 「どうするのよ!?」

アベル 「増援を呼んだかもしれない! 逃げて!」

アベル 「くそっ」


シャイロン 「よし。繋いだな。行くぞ」

ルクレール 「マシンの動きを感じないと、まるでゲームですね」

シャイロン 「ゲームさ」

ルクレール 「マシンの腕前は噂に聞いてます。見せてもらいますよ」

シャイロン 「撃墜されるまでの時間をはかっておけ!」


アベル 「一機だけ!? 罠か!?」

シャイロン 「ちぃ、ヤツは空まで飛ぶのか」

アベル 「こ・・・、こいつっ! 無機質なのに気配があるっ!」

シャイロン 「反動も感覚もないと、こうも鈍るものか!」

アベル 「当たらないっ」

シャイロン 「だが、遠隔操作ならではの無茶も出来る!」

ルクレール 「・・・遠隔操作だってのに、手足のように・・・!」

シャイロン 「癖があるな! オートマターを相手にしすぎだ!」

アベル 「オートマターじゃないのか!? なんで!? 人間!? 乗ってるの!?」

シャイロン 「怖れているのか!? 敵を! テクノロジーの結晶とは言え、パイロットがこのザマではな!」

ルクレール 「一佐の、エースパイロットって話は、本当だったんだ・・・」

アベル 「くっ」

シャイロン 「ご自慢のピアシング・レーザーも! ゆっくり狙えなければ無意味だな!」

アベル 「接近する!?」

シャイロン 「獲れるか!?」

アベル 「C−JACなら!」

C−JACをまっすぐ放つソードケイン。

シャイロン 「アンカーなど!」

あっさり回避するシャイロン。が、C−JACではなくアンカーだと思ったらしい。ソードケインとスザクが接近。ハルバードが襲う。

アベル 「うあっ」

シャイロン 「よし!・・・なにっ!?」

背後からC−JACの攻撃を受けて体勢を崩す。

シャイロン 「ぬっ、C−JACか!」

アベル 「わあああっ」

サーベルでスザクを仕留めるソードケイン。スザク沈黙。

アベル 「はあっ、はあっ、はあああっ」

シャイロン 「・・・遊びが過ぎたな。腐ってもグレイゾンか」

ルクレール 「何者です・・・? あのマシンは」

シャイロン 「伝説の救世主様だな。私などが倒すのはおこがましいぐらいのな。言い訳の材料にはなった。撤退するぞ」

ルクレール 「はっ」

アベル 「に、逃げてく・・・」


オデッセイア。

いきなり殴り飛ばされるアベル。倒れてほっぺたを押さえる。
駆け寄るユーニス。

ユーニス 「お兄ちゃん!?」

AJ 「殴られた理由はわかってるな?」

アベル 「命令外の勝手な戦闘です」

AJ 「わかってるならいい。許可が下りるまで自室で謹慎しろ」

アベル 「はい」

ユーニス 「戦って敵を倒したのに、なんで!?」

キャロライン 「あなたとアベル君は特待よ。だけど、命令違反は特待だからって許されるモノじゃないのよ」

イヴリン 「アタシから説明しときます。さ、ユニ」

ユーニス 「でもっ! お兄ちゃんは・・・!」

イヴリン 「ユニ。困らせないで」

ユーニス 「うっ・・・、はい」

イヴリン 「さ。・・・いい子ね」

キャロライン 「頼むわ」

ウィンクで答えるイヴリン。


アベルの自室。

ベッドで膝を抱えて座るアベル。


宇宙の闇を見上げているシャヒーナ。



次回予告

ナレーション 「ゲリラ掃討作戦に、ようやく重い腰を上げる議会軍は、宇宙に駐在するミラマン大尉を派遣する。アベルは己の英雄を示すため、敵の英雄と対峙する事となる。次回『英雄の証明』 Gの鼓動が、今目覚める」

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